宮澤崇史「ヨーロッパへの切符はチャンス」
これは僕が以前から言ってることだけど、親に大学まで面倒を見てもらったとして、「卒業後は相変わらず無収入だけれどヨーロッパへ行って挑戦したい」と言ったら、おそらく普通の親ならNOと言う確率の方が高い。
実際に僕がそうだった。
YESと言わせるためには、高校を卒業する時に「大学に行く代わりにヨーロッパへ自転車選手として留学したい」と思いきって言ってみるのも、方法の一つだと思っている。
なぜなら、まだその年齢なら親も子どもに夢を追いかけさせてあげたい、とギリギリ思えるから。
また、結果が納得を生むこともある。
大学を卒業するくらいの歳に、プロコンチ以上のカテゴリーで一度でもトレーニーとして参加させてもらえるチャンスがあったら、再来年にはプロになれるはず!そう思えるだろう。
例えば、日本でトップレベルになり、運良く海外チームで走れるチャンスを得たとして、相手は一体どのくらいこちらの実力を知っているだろう。これは自分の選手時代と重ねて思うこと。
海外のチームで走るということは、即ちチームが自分の生活の面倒ををみてくれるということだ。例え年収が200万円だったとしても、自分にかかるコストが300万円/年だったら500万円の年収を得たと同じことだ。
プロチームの選手として生きていくなら、誰の助けも得ず自力で生活しなければならない。
ということも踏まえた上で、海外で走れるチャンスを得たとしても、そのチームで、その土地で、自分の走りを認めてもらえなかったら、次のステップは永遠に手に入れることができない。
日本でお金をもらいながら走っていて、いきなりヨーロッパへ行けるというのは、ものすごく大きなチャンスかもしれない。また、お金がもらえると言われて行ったのに、もらえないことも中にはあるかもしれない。
それは、最初に書いたように「相手はどれだけ自分の事を知っているか」という問題があるからだろう。
しかし、チャンスはどんなものであれ、次につながるチャンスでもある。成長には時間がかかるし、一朝一夕には強くなっていかない。経験の中で結果を出し、周りに認められていく時間は必要だ。
海外へ行けば、理不尽な目に遭うことも多い。それも自転車に乗る上の事でないことが、本当に多い。
けれども、そんな理不尽さえも乗り越えて、日本人の若い選手たちが海外で生きていくための力をしっかりと身につけて活躍する事を祈っている。