宮澤崇史「良いトレーニング」

Posted on: 2021.02.21

ブリヂストンアンカーに入った頃2002~2003年は本当に走れなかった。

トレーニングはしているが、ただメニューをこなしているだけのトレーニングになっていたことに自分が気づいてなかった。

そんな自分に声をかけてくれた恩師がいた。

マッサージャーの山崎さんだった。歯に衣着せぬ彼女の口から出た言葉は

「宮澤さんは自分で考えてトレーニングをするのではなく、誰か強い人と練習してみたら良いと思いますよ。」

と言う言葉だった。

なるほど、自分で考えなくていいならその方が楽だし良いな〜と思い、福島晋一選手の家で一緒に暮らす事になった。

しかし、トレーニングは天気次第だし気分次第、メニューは決まっていなく、登り坂がきたら「じゃ〜、レースペースで」といった感じだ。

ある時は、休みだから軽く流しに行ったつもりが、天気がいいから150km乗ることも普通にあった。

そしてそこにも理由があった。

ステージレース走るんだったら、疲れてても走らなければならないでしょ?じゃぁ、今日はちょうどそんな感じでいいじゃん!

物は言い方ってことか?

と思って一緒に走っていると、だんだん自分の走りがよくなっていく事に気づいてきた。

そして、自分がやってたトレーニングで一番足りなかった事にも気づいた。

それが「レースで勝つためには、レースで勝てるトレーニングをしなければ意味がない」

と言う事だった。

「レースペースで!」と言うトレーニングも、レースのどこかを自分で考えて、今の足ならレース中のこの場面でこの坂を登ったらこのくらいのペース配分だな。

と自分自身で考え始めたのだ。無茶苦茶簡単な事なのに!

なんでこんな事に気づかなかったんだろう?

それからはレースで着に絡むことが多くなり、新しい目標ができてはトレーニングの内容も変えて、それが結果に繋がってと良いスパイラルが生まれ始めた。

レオン最終日2位


写真はレオンレースサイトより

自分が求めていたことがようやくできるようになった瞬間だった。

それからは、チームで目標にするレースに合わせて、みんなのトレーニングを考える様になった。エキップアサダ時代は本当に好きなように全体のトレーニングを組ませてもらった。

トレーニングの内容がレースに合ってくると、みんなの長所や苦手部分が見えてくる。そして、レースでは何を指示したらいいかがレース前からわかってくるのだ。

レース前ミーティングでも、浅田監督の目標とエースが勝てる展開に持っていくための割り振りにも応えられる様になった。


チームバン レオンみやたか優勝

昔から周りの人に、どんなトレーニングをやったら強くなれますか?

と聞かれることが多いけど、大体決まって「レースで勝ちたかったら、レースで勝てるトレーニングをすればいいよ!」と応えている。

その人は、トレーニングメニューを知りたいのはわかるのだけど、それではレースに勝てないことも知っているのだから仕方がない。

☆レースで勝てるトレーニングしてますか?☆

自分を変えた一言だった。

AUTHOR PROFILE

宮澤 崇史 みやざわ たかし/1978年生まれ。イタリア在住自転車プロロードレーサー。高校生でシクロクロス世界選手権に出場、卒業後イタリアのチームに所属。しかし2001年、母に肝臓の一部を生体移植で提供し手術のハンディもあり戦力外通告を受ける。再びアマチュア選手としてフランスで活動し実績を重ね 2007年アジアチャンピオン、2008年北京オリンピック出場、2010年全日本チャンピオンになる。2012・2013年はカテゴリの最も高いUCIプロチームに所属。2014年のジャパンカップで現役を引退。 筆者の公式ブログはこちら

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