宮澤崇史「バランスよく筋肉を使う」

Posted on: 2019.08.16

「バランスよく筋肉を使う」

というと、身体全体の筋肉をバランスよく使おう

という意味に聞こえる

それは間違ってはいないのだけど筋肉を使っている頻度やその人の能力にもよる

選手時代、春先のレースで、まだ身体にレースの準備ができてないとき

マッサージャーに「筋肉にまだレースの準備ができていない!」と言われたことがある

レースの準備ができていない筋肉とは?

なかなか想像がつかない人の方が多いと思うが経験のある選手ならばこの意味がわかるだろう

準備のできていない筋肉の特徴として次のことが挙げられる

1、張りの強い筋肉と、張りの弱い筋肉がバラバラに点在する
2、表面だけ張りがあるが、内部がスカスカする
3、選手の主観で走り始めは調子が良いが、中盤から後半で思ったように足が動かない

などがある

先日マッサージャーと話をしていて「筋細胞が起きている部分と起きていない部分がある」という話題になった

そう、例えばオフ明けのトレーニングで、ゆっくりとロングディスタンスを走ることが多いが、シーズンに入るにつれ、高強度のトレーニングを取り入れる

このゆっくり走るトレーニングの時間に筋細胞が起きるか?

というところが、トップ選手と一般ライダーには大きな差がある

強い選手が怪我の後にみるみる走れるようになるケースはよく目にする

あっという間にコンディションを作り、レースで擦り合わせながら早い段階でレースで結果を出してしまう

しかし、一般ライダーにはこの細胞がバランスよく起きるという点で意外と膨大な時間がかかる

若い選手も同じく、いわゆるギリギリのペースで身体を早く作りたい気持ちを押さえつけてじっくりと身体の細胞を起こす作業

というのが大切なことがわかる

それをすっ飛ばすと、例えば

外側広筋が物凄く張る
肩が痛い
脹脛が攣る

などの症状が起きやすくなる

じっくりと走る時間というのはシーズン中も継続するが、その時に何気なく走るのではなく、身体をバランスよく使う意識

そして、ケアの時にマッサージャーと対話することで自分の状態を作り上げていくことを可能にする

特にレースで結果を求める選手ならば、急がず慌てず身体の反応を感じながらコンディショニングすることが自分を積み上げていくことになるのだ

AUTHOR PROFILE

宮澤 崇史 みやざわ たかし/1978年生まれ。イタリア在住自転車プロロードレーサー。高校生でシクロクロス世界選手権に出場、卒業後イタリアのチームに所属。しかし2001年、母に肝臓の一部を生体移植で提供し手術のハンディもあり戦力外通告を受ける。再びアマチュア選手としてフランスで活動し実績を重ね 2007年アジアチャンピオン、2008年北京オリンピック出場、2010年全日本チャンピオンになる。2012・2013年はカテゴリの最も高いUCIプロチームに所属。2014年のジャパンカップで現役を引退。 筆者の公式ブログはこちら

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