栗村修「当事者意識」

Posted on: 2016.12.05

先日、『ツール・ド・フランス主催者=ASO』、『ジロ・デ・イタリア主催者=RCSスポーツ』、そして、『ロンド・ファン・フラーンデレン主催者=フランドルクラシックス』のメジャーロードレース主催者が連名で、『各レースに於ける1チームの出走人数を減らす』発表を行いました。

すでに、様々な理由(選手の安全面/レース展開の多様化/ワールドツアーレースの増加に伴う各チームの選手のやり繰り)から、メジャーレースに於ける1チームの出走人数を減らすという試みについては各所で議論が繰り返されてきており、UCIが進める『コンパクトなレース』、『コンパクトなチーム編成』という長期計画に沿う形で『将来の実施(1チームの出場選手数を減らす)』についてはすでに織り込まれつつある状況でもありました。

しかし、今回、力を持つレース主催者たちが、ステークホルダー(主にUCIとワールドチーム)にコンセンサスを取らずに、いきなり上記決定を一方的に発表したことから、一定の混乱が特にチームサイドに生じてしまっている状況となっています。

改めて状況をまとめると、『1レースに於ける各チームの出走人数を減らすこと』自体については、多くのステークホルダーが理解を示しているようです。

しかし、そこに向かうプロセスに問題(事前の相談なしに)があったため、今回、UCIと各チームがオコとなっているわけです。

特にチーム側は、例えばグランツールに関していえば、『1チーム9名出走』で戦うことを前提に各選手たちと契約したわけで、もし、2017年から『1チーム8名出走』となることがはやい段階からわかっていれば、契約する選手の内容や数自体も変わっていた可能性があります。

今回の発表をこのタイミングで行えば、一定の混乱が生じることは専門家でなくとも容易に想像がつくはずです。

それにも関わらずこの様な判断が安易になされてしまったことについては、個人的にはとても不思議に感じました。

現状では『主催者側の暴挙』といった論調のニュースが大半を占めていますが、改めて、それぞれの立場に立った視点で状況を見つめ直す必要がある気がします。

世界一のレースの主催者であっても、選手経験がなければ『選手の気持ち』を本当の意味で理解することは難しいでしょう。

逆に、どんなに偉大な選手であっても、『レース運営』を経験したことがなければ、極端な言い方をすればレース運営関しては『ズブの素人』と言っても過言ではありません。

また、『レース主催者』と『連盟・連合運営者』も別物といえます。

もちろん、すべてをパーフェクトに経験している者などいないわけですから、どこかで『当事者意識』を『イマジネーション』によって創り出す必要はあり、その上で、それぞれの立場や考え方をフェアに判断しなくてはなりません。

それにしても、現在の世界のロードレース界は、各ステークホルダー間のリスペクトが少なからず欠如していまっているのが少々残念なところではあります。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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