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栗村修「ロードレース界の新たなビジネスモデル創出に向けて設立された『Velon』とその実情」

Posted on: 2014.12.08
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11のUCIワールドチームが出資し合って設立された新企業『Velon』が11月25日に発表されました。Velonは、以前から何度もニュースに挙がっていたロードレースの新リーグ構想である『World Series Cycling(WSC)project』を継承している新団体と思われますが、その方向性は間違いなく正しいにも関わらず、現状ではまだ一枚岩になれていないという側面もあります。

◆Velon 設立にあたって出資した11のワールドチーム
BMCレーシングチーム(アメリカ)
エティックス・クイックステップ(ベルギー)
ランプレ・メリダ(イタリア)
ロット・スーダル(ベルギー)
オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)
チームキャノンデール・ガーミン(アメリカ)
チームジャイアント・アルペシン(ドイツ)
チームロトNL・ユンボ(オランダ)
チームスカイ(イギリス)
ティンコフ・サクソ(ロシア)
トレックファクトリーレーシング(アメリカ)

◆現状でVelon構想に加わっていないワールドチーム
AG2R・ラモンディアル(フランス)
FDJ(フランス)
IAMサイクリング(スイス)
アスタナプロチーム(カザフスタン)
モビスターチーム(スペイン)
チームカチューシャ(ロシア)
チームユーロップカー(フランス)
※アスタナとユーロップカーの2015年ライセンスの更新は未定

Velonが設立された理由というのは細かくみていくと数多くあるとは思いますが、その核心にあるのはずばり『チーム運営(収入)を安定させる』という部分にフォーカスされているのは間違いありません。

現在のロードレース界のビジネスモデルというのは・・・、

◯主催者がプロレースを開催するということをベースにまずはイベント(レース)を企画

◯主催者の収入源は、自治体、企業などからの誘致料(補助金)及び大会スポンサーからのスポンサー料、そして放映権料が中心

◯チームというのは上記レース(露出が大きいレースほど価値が高い)に出場して、更にそこで好成績を残す(更に露出価値が高まる)ことでスポンサー企業のPR(露出)に繋げるという口説き文句をベースにチーム運営を企画

◯チームの収入源は、チームスポンサーからのスポンサー料がメインで、レース主催者から得られるギャラや賞金は全体の割合からみると大きくない上にそれらは選手やスタッフ個人へ分配されることが殆ど

という様に、レース主催者と各チームの”お財布”が別々になっているのが現状です。

Velonは、例えばサッカーやNBAなど、他のプロスポーツの多くが採用しているリーグ形式を目指しており、レース主催者が獲得する収入源を各チームへ均等に配分する方向を模索していくのだと思われます。

具体的には・・・、

◯レース主催者とチームが同じ枠組み(リーグ)の中に存在し、レース主催者が獲得する放映権料や大会スポンサーからの収入を各チームへも分配する

◯各チームの運営基板が安定し、チームスポンサーの経営状況や方針などで一瞬でチームが消滅するような最悪の事態を回避する

◯主催者とチームが一体となり、より魅力的で商品価値の高いスポーツコンテンツを開発していく(=ロードレース界全体で収入を増やしていく)

という感じになっていくのでしょうか。

現状では、ツール・ド・フランスを開催している『A.S.O.』がほぼ一人勝ち状態であり、各プロチームにとって『ツール・ド・フランスさまさま』という状況となっており、『魅力あるツール・ド・フランスへの出場権を与えるのであとは自己責任でチームを運営して下さい』という感じで全体が成り立っています。

あくまでも憶測ですが、Velonにフランスのプロチームが一つも加わっていないのは、もしかするとこの辺りが若干影響している可能性はあります。

また、全体の連携という意味では、自転車競技界からのドーピング根絶を目指す世界的反ドーピング倫理運動、M.P.C.C.(Mouvement Pour un Cyclisme Crédible/信頼できる自転車界を作るムーヴメント)への加盟チームについても、全体のコンセンサスがとれていないのが実情です。

◆M.P.C.C.加盟12チーム(ワールドチーム)
AG2R・ラモンディアル(フランス)
FDJ(フランス)
IAMサイクリング(スイス)
アスタナプロチーム(カザフスタン)
ランプレ・メリダ(イタリア)
ロット・スーダル(ベルギー)
オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)
チームカチューシャ(ロシア)
チームキャノンデール・ガーミン(アメリカ)
チームジャイアント・アルペシン(ドイツ)
チームロトNL・ユンボ(オランダ)
チームユーロップカー(フランス)

◆M.P.C.C.非加盟6チーム(ワールドチーム)
BMCレーシングチーム(アメリカ)
エティックス・クイックステップ(ベルギー)
チームスカイ(イギリス)
ティンコフ・サクソ(ロシア)
トレックファクトリーレーシング(アメリカ)
モビスターチーム(スペイン)

※アスタナとユーロップカーの2015年ライセンスの更新は未定
※『Velon』と『M.P.C.C.』両方に加盟しているチームは、ランプレ・メリダ(イタリア)、チームキャノンデール・ガーミン(アメリカ)、チームジャイアント・アルペシン(ドイツ)、チームロトNL・ユンボ(オランダ)、ロット・スーダル(ベルギー)、オリカ・グリーンエッジ(オーストラリア)の6チームのみ。逆にどちらにも加盟していないのが個人&チームで世界ランキング首位だったモビスターチーム(スペイン)。

ドーピング問題はロードレース界の未来を考える上で避けては通れない要素なので、『Velon』や『M.P.C.C.』という、経済的及び倫理的な改善を目指すべく設立された上記のチーム共同組織がまとまれないうちは、まだまだ大きな一歩を踏み出すのは難しいのかもしれません。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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