佐藤一朗「リオ・オリンピック出場に向けた暫定成績。(15.12.07)」

Posted on: 2015.12.14

12月4日~6日にかけて、ニュージーランド・ケンブリッジに於いてUCIワールドカップの今期第2戦が行われました。ツイッターの方で速報を流していましたが、時差が4時間と言う事で逆に仕事との兼ね合いであまりタイムリーな速報にならず、期待して頂いた方には申し訳ないことをいたしました。

最終戦の香港(1月16日~17日)は時差マイナス1時間と、さらに厳しくなる可能性が高いので今のうちに謝っておきます。
 
リオ・オリンピックまでのスケジュールは刻々と消化され、今回のケンブリッジ大会を終えた後は、第3戦の香港大会、1月26日~30日に修善寺で行われるアジア選手権、さらには3月2日~6日にロンドンで行われる世界選手権と3大会を残すのみとなりました。

世界戦にはワールドカップのポイント獲得順位での出場と大陸選手権(アジア選手権)を優勝して出場する方法がありますが、いずれにしても出場しなければオリンピックポイントの獲得は出来ません。まずはしっかりワールドカップのポイントを獲得して出場枠を確保して欲しいものです。

さて、ケンブリッジ大会を終えUCIオリンピック トラック ランキング(07.Dec.2015)が発表されました。前回も執拗にお断りしましたが、ここからランキングの解釈については僕の拙い語学力で「QUALIFICATION SYSTEM–GAMES OF THE XXXI OLYMPIAD–RIO2016」を基に書いていますので、間違っている可能性を否定できません。

ですから、お読み頂くに当たってはあくまで自己責任で判断して頂き、オリンピックに出場出来るか否かについては正式な発表までお待ち下さい。
 
オリンピックの出場枠に付いての決定方法は、前回書いていますのでそちらを参照してください。
https://www.cycloch.net/2015/11/06/20126/
 
○男子チームスプリント(出場枠9/アジア大陸枠2)
チームスプリントは国別ランキングで争います。
日本チームは現在748.5ポイントを獲得し全体の13位に位置しています。そこから大陸枠毎の重複を勘案し現在のオリンピックランキングでは全体の11位/アジアで2位となっています。現在出場枠のボーダーはコロンビアチームの832.5ポイントですので、84ポイント差となっています。まだまだ逆転できる点数差です。ここからの巻き返しを期待します。
 
○男子スプリント(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
スプリントは個人ランキングで争います。
現在日本で上位にランキングされているのは中川誠一郎選手(200ポイント/31位)、河端朋之選手(142ポイント/43位)の2選手です。ここからチームスプリントで出場枠圏内に入っている国の選手、並びに大陸枠毎の重複を勘案した順位は、中川選手が7位と出場枠圏内に入っています。
 
○男子ケイリン(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
ケイリンもスプリント同様個人ランキングで争います。
現在日本で上位にランキングされているのは渡邊一成選手(385ポイント/14位)、脇本雄太選手(357ポイント/16位)の2選手です。ここからチームスプリントで出場枠圏内に入っている国の選手、並びに大陸枠毎の重複を勘案した順位は、渡邊選手が5位と出場枠圏内に入っています。脇本選手は渡邊選手の次にランクされていますが、アジアで3番目となるため渡邊選手を抜くか、2人で出場する為には468ポイント獲得しているマレーシアのAzizulhasni AWANG選手を抜く必要があります。
 
○男子チームパーシュート(出場枠9/アジア大陸枠2)
チームパーシュートは国別のランキングで争います。
日本チームは現在396ポイントを獲得し全体の21位に位置しています。この種目は上位に大陸枠の重複が無く、出場枠のボーダーはコロンビアの1218ポイントと大きく差を付けられているので、出場権獲得は難しい状況です。
 
○男子オムニアム(出場枠18/アジア大陸枠5)
オムニアムは国別の出場上限が1名なので国別ランキングで争います。
日本チームは現在297ポイントを獲得し全体の20位に位置しています。ここから大陸枠毎の重複を勘案し現在のオリンピックランキングでは全体の17位/アジア3位と出場枠圏内に入っています。
 
○女子チームスプリント(出場枠9/アジア大陸枠2)
チームスプリントは国別ランキングで争います。
日本チームは現在401ポイント獲得し全体の14位に位置しています。ここから大陸枠毎の重複を勘案し現在のオリンピックランキングでは全体の11位/アジア2位となっています。現在出場枠のボーダーはコロンビアチームの619ポイントですので、218ポイント差とやや厳しい状況です。ワールドカップの優勝が150ポイント、アジア選手権の優勝が120ポイントと言う事を考えると、逆転は不可能では無いと思います。厳しい状況ですがなんとか頑張って欲しいと思います。
 
○女子スプリント(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
スプリントは個人ランキングで争います。
現在日本で上位にランキングされているのは前田佳代乃選手(124ポイント/37位)です。ここから男子同様チームスプリントで出場枠圏内に入っている国の選手、並びに大陸枠毎の重複を勘案した順位は圏外となっています。

ポイント的には10番目なのですがアジアで3位となっている為出場枠圏内にありません。現在アジアで2位となっているのはマレーシアのFatehah MUSTAPA選手(203ポイント)。今回のワールドカップでも両者の力に差は殆どありません。残された3大会で79ポイントの差を是非挽回して欲しいと思います。
 
○女子ケイリン(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
ケイリンもスプリント同様個人ランキングで争います。
現在日本で上位にランキングされているのは加瀬加奈子選手(289ポイント/20位)です。ここから男子同様チームスプリントで出場枠圏内に入っている国の選手、並びに大陸枠毎の重複を勘案した順位は圏外となっています。ポイント的には8番目となっていますが、前田選手同様アジアでの順位が4位となっている為出場枠圏内にありません。現在アジアで2位となっているのは韓国のHyejin LEE選手(538ポイント)。その差は249ポイントとかなり厳しい現況となっています。
 
○女子チームパーシュート(出場枠9/アジア大陸枠2)
チームスプリントは国別ランキングで争います。
日本チームは現在764ポイント獲得して全体の14位に位置しています。ここから大陸枠毎の重複を勘案し現在のオリンピックランキングでは全体の12番目となりますが、日本チーム自体もアジアで3位と大陸枠を外れてしまっているので出場枠圏内にはありません。現在出場枠のボーダーはロシアチームの1256ポイントとその差は492ポイントとなっており、男子同様出場権獲得は難しい状況です。
 
○女子オムニアム(出場枠18/アジア大陸枠5)
オムニアムは国別の出場上限が1名なので国別ランキングで争います。
日本チームは現在196ポイントを獲得し全体の26位に位置しています。ここから大陸枠毎の重複を勘案し現在のオリンピックランキングでは全体の19位/アジア4位となっています。今回のワールドカップでマレーシアを抜いてランキングを1つあげましたが、出場枠圏内にはもう1つ上げ無くてはなりません。

現在出場枠のボーダーラインは台湾チームの230ポイントです。台湾のHSIAO Mei Yu選手も塚越さくら選手と同型で短距離系のタイムトライアルでポイントを獲得出来るタイプで、現在の34ポイント差は今後大きく響いてくるように感じられます。しかし、現在17位に位置しているメキシコチーム(273ポイント/77ポイント差)も十分射程圏に入っているので、今後の活躍に期待したいと思います。
 
以上の様に、前回のワールドカップ終了時と比べ大きな変動はありませんでしたが、今回の大会は出場枠確定に向け各国の目標設定が一段とハッキリしてきているように感じました。

出場枠に届かないと判断した種目に選手を派遣しないチームもあれば、出場枠がほぼ確定していると判断した種目はエース級を温存して世界選手権に照準を合わせていると思われるチームもありました。

日本チームでは男子オムニアムに前回の橋本選手に代え、窪木選手を派遣するなど国内での代表争いも続いている事をうかがわせました。

現在出場枠圏内に入っている男子スプリント・ケイリン・オムニアムは確実に出場権を確保し、まだ十分射程圏にある男子チームスプリント、女子スプリント・オムニアムでも出場権を獲得出来るよう、あと3大会日本チームの活躍に期待したいと思います。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

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