佐藤一朗「トラック日本代表、リオ・オリンピック出場に向けた暫定成績。(15.11.02) 」

Posted on: 2015.11.06

ワールドカップ第1戦が終わりリオデジャネイロ・オリンピックに向けて緊張感がさらに高まってきました。来年、2016年に行われるオリンピックの出場権を獲得するための戦いは去年のワールドカップシリーズから始まり、来年の3月2日~6日にロンドンで行われる世界選手権までの2シーズンで行われています。ご存じのない方の為に少し長くなりますがその方法について説明したいと思います。
 
オリンピックに出場する為には、アジア選手権(大陸選手権)、ワールドカップ、世界選手権に出場し、着順毎に予め付与されているポイントを獲得しなくてはなりません。

リオの場合、2015/2016のアジア選手権、2014-2015/2015-2016シーズンのワールドカップ、2015/2016の世界選手権が対象となります。
 
対象の大会で獲得したポイントはUCIのオリンピックランキングの指標となり、種目によって国別ランキング、個人ランキングが決定し、種目毎に決められた数のチーム・選手が出場権を獲得する事が出来ます。
 
大まかに説明するとこれだけの事なのですが、最終的に決定するまでには様々な条件が関わってきます。残念ながら僕の英語学力は中学生レベルで止まってしまっているので、UCIルールの解釈に誤りがある場合があります。その為これ以降の文章については”責任は持てません”ので、あくまで参考程度にして頂き、最終的な決定はオリンピック出場枠の正式発表までお待ち頂けるようお願いします。
  
さて、皆さんの中に将来オリンピックに出場したいと思っている方はいらっしゃるでしょうか?目指している方の為に、オリンピック出るためのステップについてお話ししたいと思います。
 
あなたが真剣にオリンピックを目指し、それにふさわしい競技力を身につけたとしたら、まず日本代表を目指しましょう。日本の代表として国際大会に出場するためには強化指定選手に選ばれなくてはなりません。

強化指定選手になる方法は幾つかあるようですが、全日本選手権で活躍する以外にトライアウト(合宿)に参加することで選ばれる事もあります。(詳細はJCFのサイトをご参照ください。)

強化指定選手に選ばれたら、強化合宿を経て日本代表として国際大会に出場する事になりますが、「強化指定選手=日本代表」では無く、強化指定選手の中でさらに選考される事になります。
 
Step1:国際大会への出場
トラックの国際大会はローカルな大会からUCIのポイントが付与され大会まで様々です。強化指定選手の中でも主力級の選手はUCIポイントのかかる大会を中心に遠征し、それ以外の選手はローカルな大会で経験を積む事が多いようです。
 
Step2:アジア選手権の出場
国際大会の成績、全日本選手権、選考合宿等の結果からアジア選手権の代表は選ばれているようです。ただ大陸大会でありながらエリートカテゴリーは、世界選手権の出場権やオリンピックの出場権に関連する大会でもあるため、その時期のトップメンバーが選ばれているように感じます。
 
Step3:ワールドカップの出場
ワールドカップに出場するためには世界選手権が終わった3月からワールドカップまでの審査期間内にUCIのクラス1~クラス3、及びアジア選手権に出場し種目毎に決められた条件(個人・チーム共に幾つかのハードルがある)をクリアしなくてはなりません。そして規定をクリアした選手の中からランキングに応じて出場枠が与えられる事になります。※日本国内の大会ではありますが、全日本選手権はクラス3のポイントが付与されます。
 
Step4:世界選手権の出場
世界選手権は、ワールドカップに出場した選手が種目毎の成績に応じて付与されたポイントを合計し、その順位によって出場権を得ることが出来ます。また各大陸大会、日本の場合アジア選手権の優勝者も出場権を得ることが出来ます。
  
<目指せオリンピック!!>
大雑把に世界選手権までの出場資格について説明してきましたが、いよいよオリンピックの出場についてお話ししましょう。
 
○オリンピックで行われる種目
・チームスプリント
・チームパーシュート
・スプリント
・ケイリン
・オムニアム
男女ともにこの5種目がオリンピックで行われます。
 
○オリンピックに参加できるチーム及び選手数
このチーム/選手数のにはいろいろと条件があるのですが、簡単に言うと以下の様になります。
・チームスプリント9チーム(男子27名/女子18名)
・チームパーシュート9チーム(男女共に36名)
・スプリント 男女共に27名
・ケイリン 男女共に27名
・オムニアム 男女共に18名
 
○オリンピックポイント獲得対象大会
オリンピックの出場枠の争いはオリンピック前2年間に渡って行われます。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの場合、2014-2015シーズンのワールドカップから始まり、2016世界選手権までの2年間になります。オリンピックポイントが付与される大会は以下の通りです。
・2015/2016アジア選手権大会(2大会)
・2014-2015/2015-2016シーズン・ワールドカップ(合計6大会)
・2015/2016世界選手権(2大会)
 
まずこの3つの条件が基本的な要件になります。とてもシンプルです。2年間合計10大会に出場しポイントを獲得してランキングに入れば出場出来る。たったそれだけの事なのですが、ここからが少し難しくなります。
 
○大陸毎の出場枠
オリンピックは世界のイベントですから、世界中から参加して貰う為でしょうか、予め大陸毎に参加枠が決まっています。ただ自転車の盛んな大陸、そうで無い大陸のギャップがあるため、その案分は均等ではありません。
 
○国別の出場枠
これも大陸枠と同じ考えでしょうか?1ヶ国から沢山の選手が参加した場合レースとして面白みが欠ける部分もあるので、国毎に最大の参加者数、種目毎の出場枠も決まっています。
 
○チームスプリント枠
最後の条件はトラックの参加総数との絡みだと思いますが、チームスプリントで出場枠を得られた国は、同時にスプリントとケイリンのそれぞれ2枠を獲得する事になります。チームスプリントは9チームですから、それぞれのチーム(国)が2名ずつと言う事でスプリント18名、ケイリン18名はチームスプリント出場枠と同時に決定してしまうと言う事です。ですから残り9枠をスプリントとケイリンは個人ランキングで争うことになります。
 
さて、基本的な出場枠決定の条件が分かったところで、いま日本チームが置かれている現状について種目毎に考えて見たいと思います。※UCI オリンピック トラック ランキング (02.Nov.2015)参照
 
○男子チームスプリント(出場枠9/アジア大陸枠2)
チームスプリントは国別ランキングで争います。
日本チームは現在13位/アジア2位(649.5p)。
日本チームはアジアでは2位ですが全体では13位なので出場圏内にありません。しかし日本より上位にヨーロッパ大陸の国が6チームありますがヨーロッパ枠が5の為、1チーム(ロシア)が出場権を得られません。

また12位に付けているカナダもアメリカ大陸枠(2)に入らない為同じく出場権を得られません。その為日本の順位は11位まで上がりますが、出場権獲得までは至っていない状況です。現在暫定9位はコロンビアの751.5p、その差は102pですからまだまだチャンスはあります。
 
○男子スプリント(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
スプリントは個人ランキングで争いますが、このランキングからチームスプリントで出場枠を獲得した国の選手は全て除外されることになります。(※チームスプリントの出場国には自動的に2名の出場枠が与えられ、国別の出場上限が2名のため。)その上でランキングを見てみると、中川誠一郎選手が7位/アジア2位(199p)で出場圏内に入っています。
 
○男子ケイリン(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
ケイリンもスプリント同様個人ランキングで争います。チームスプリント出場国を除いたランキングを見ると渡邊一成選手が5位/アジア2位(355p)で出場圏内に入っています。また今回のワールドカップで決勝進出した脇本雄太選手も303pで上位にきていますが、アジアで3位となってしまうため渡邊選手を追い抜いて出場するか、2人揃って出場枠を確保するためにはアジア1位のAWANG選手(マレーシア)468pを2人揃って抜かなくてはなりません。
 
※日本がチームスプリントで出場枠を獲得した場合、スプリントおよびケイリンのランキングに関わりなくそれぞれの種目に2名出場する事が出来ますので、是非頑張って欲しいと思います。
 
○男子チームパーシュート(出場枠9/アジア大陸枠2)
チームパーシュートは国別のランキングで争います。
日本チームは現在20位/アジア2位(396p)
日本チームはアジアでは2位ですが全体では20位の為出場圏内にはありません。
上位9チームに大陸枠の超過が無いため、出場枠を得るためには現在9位のコロンビア(1110p)を抜かなくてはならず、残りの大会(4大会)で好成績を収めたとしても出場権の獲得は厳しいと思われます。
 
○男子オムニアム(出場枠18/アジア大陸枠5)
オムニアムは国別の出場上限が1名なので国別ランキングで争います。日本は現在19位/アジア2位ですが、ヨーロッパ大陸枠8に対して11ヶ国が上位に入っているため3ヶ国が超過しています。その為日本の順位は16位となり現在は出場圏内にはいっています。
 
○女子チームスプリント(出場枠9/アジア大陸枠2)
日本チームは現在14位/アジア2位(356p)。
日本チームはアジアでは2位ですが全体では14位の為出場圏内にはありません。上位に大陸枠を超過しているチームが3ヶ国、それを除くと日本チームは11位に上がります。暫定9位のコロンビアチームは553pですので197p差、これを残りの大会で逆転できるかどうかにかかっています。
 
○女子スプリント(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
スプリントは個人ランキングで争います。チームスプリントで上位9チームに入っている国の選手をランキングから除外した順位を見ると、前田佳代乃選手が123pで8位となっていますがアメリカ大陸枠で1人超過があり7位となります。しかし前田選手自身アジアで3位となっている為現在出場圏内にありません。現在アジアで2位はマレーシアのMUSTAPA選手202pですのでその差は79p。まだ逆転不可能な差ではないので是非頑張って出場枠を獲得して欲しいと思います。
 
○女子ケイリン(出場枠27(9)/アジア大陸枠2)
ケイリンもスプリント同様個人ランキングで争います。スプリント同様除外したランキングを見ると、加瀬加奈子選手が253pで8位となっていますが、アジアで4位となっている為前田選手同様出場圏内にありません。現在アジアで2位は韓国のLEE選手が440p。その差は187pです。現況を見るとかなり厳しいと言わざるを得ませんが、まだ逆転不可能では無いと思いますのでなんとか頑張って欲しいものです。
 
○女子チームパーシュート(出場枠9/アジア大陸枠2)
日本チームは現在14位/アジア3位(674p)
チームスプリント同様現在は出場圏内にありません。また上位9チームに大陸枠超過が無いので現在の9位ロシアの1158pが当面の目標となります。その差は484pと大きいのですが、今回のワールドカップでも分かるように日本チームは若手の強化が進んでいます。リオ・オリンピックまでに間に合うかどうか難しい所ですが、入賞が目指せる種目だけに東京オリンピックに向けてもしっかり頑張って欲しいと思います。
 
○女子オムニアム(出場枠18/アジア大陸枠5)
現在日本は27位/アジア5位(147p)ですが、上位にヨーロッパ・アメリカに超過があるため日本は20位まで上がる事になります。当面のライバルとなるのは18位のマレーシア(191p)、その差は44pです。実はこの種目日本がアジア5位と出遅れているのは、昨年のワールドカップ3戦中2戦でアクシデントに遭い、本来得られるであろう獲得ポイントが得られなかった事が大きく影響しています。今回のコロンビア大会では塚越さくら選手が15位と健闘し42ポイントを獲得しています。残りのワールドカップ2戦(ニュージーランド/香港)、アジア選手権(修善寺)、世界選手権(ロンドン)を実力通り走りきれば十分出場枠の獲得が見込めると期待しています。
 
以上の様に、現在出場圏内に位置しているのは、男子のスプリント・ケイリン・オムニアムのみの状況ですが、男子チームスプリント、女子チームスプリント、女子オムニアムはまだまだチャンスがあると思います。チームスプリントにはスプリントとケイリンの出場枠も付いてきますし、男女オムニアムも併せて出場出来れば、日本チームの出場枠はかなり大きくなると思います。まずは残ったワールドカップの2戦をしっかりこなし、世界選手権の出場枠を確保して欲しいと願っています。
 
<ご注意願います!!>最初にお断りしましたように、この出場枠の推計はUCIが発表した「QUALIFICATION SYSTEM – GAMES OF THE XXXI OLYMPIAD – RIO 2016」を参照して調べていますが、なにぶん語学力が不足している為間違いがあることが十分に考えられます。参考程度にご覧下さい。
 
また、なにか間違いに気づかれた方がいらっしゃいましたら、コメントかメッセージを頂けると助かります。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

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