栗村修「時代ごとの強さ」

Posted on: 2020.06.29

YouTubeなどを含む各種SNSで1970年代〜1980年代(私が多感だった頃)の画像や映像が流れてくるとつい手を止めて見入ってしまうことがあります。

それらを見て感じることというのは、「人間のやっていることは基本的にあまり変わっていないなあ」という部分だったりします。

もちろん、テクノロジーが大きく進化しているので、ビジネスなどを進める上での細かいプロセスなどは大幅に変化しています。

しかし、ベースは人間が持つ「本能(欲)」を追い求める行為が昔から延々と繰り返されているだけで、基本的な部分は殆ど変わっていないように感じます。

むしろ、昔の自転車ロードレースの画像や映像などを観て思うことは、現在ほどのテクノロジーがないなかで、よく「ツール・ド・フランス」の様な大規模なスポーツイベントなどを開催できていたなという驚きだったりもします。

携帯電話(スマホやタブレット)もない、ノートPCもない、当然モバイルでのデータ通信もできない…

そんな環境下で、根本的な仕組みはいまと同様のビジネスモデルのスポーツイベントをまわしていたわけですから、ある意味で驚異的だったりもします。

最近は、テクノロジーについていけない50代のおじさん達を「5G(ファイブジー/高速データ通信)」ならぬ「50G(フィフティー爺/コスパの悪い人材)」と揶揄する表現を見かけたりもしますが、一方で、見方によってはテクノロジーなしでも巨大なプロジェクトをまわしてきたある種のバイタリティは持っているわけでして、現代の「テクノロジー」と「50Gバイタリティ」をうまく掛け合わせることができれば、もしかすると未知の化学反応を生み出すことができるのかもしれません。

まあ、「50G」と呼ばれてしまう皆さんの問題の本質が、変わろうとしない、学ぼうとしないというところだったりもするので、まずはそこを改善してもらえないとなかなか先には進めなかったりもするのですが…。

少し前にベルナール・イノーさん(現在65歳/ツール・ド・フランス5勝のレジェンド)がインタビューで、「私が現代にやってきてもツールで5回勝つ自信はあるが、逆にフルームが我々の時代にやってきたら恐らくツールで1勝もできないだろう」と語っていたのがとても印象に残っています。

ちなみに冒頭の1970年代〜1980年代の画像や映像を見ていると、イノーさんが、記者やカメラマン、デモ隊などにパンチを食らわしているシーンなどが結構流れてきす…汗

現代であれば完全にアウトですが、一方で、今とは求められる強さやインテリジェンスの種類が異なっていたのかもしれません。

そして話は戻りますが、もし、ベルナール・イノーさんやエディー・メルクスさんなどのレジェンドと呼ばれる偉大な選手たちが現代に現れ、最先端テクノロジーと融合したならば、本当にとんでもない化物選手が生み出される様な気がします。

時代ごとに求められる能力や強さはというのは日々刻々と変化し続けています。

そして、テクノロジーが発達していない時代に物事をまわせた能力というのは一つの強みであり、現代の若者たちがなかなか習得できない能力の一つともいえます。

今後もし、デジタルツールが一切使えなくなる様な大規模な災害が起きたならば、デジタルエリートな若者の強みはほぼ役に立たなくなり、逆にお爺さんたちの生きる知恵の方が社会で必要とされるかもしれません。

今回のブログは色々と内容がとっ散らかってしまいましたが、結局なにが言いたいのかというと、自分(アラフィフ)も含めて「50代もっとがんばれ!(変化を受け入れてもっと進化していきましょう!)」です。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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