栗村修「なぜ走るのか?」

Posted on: 2016.02.01

『選手⇒解説者⇒監督⇒レース主催者』と、ロードレースへの関わり方が変化し、そして年齢を重ねるつれ『なぜ、あの頃の自分はすべてを懸けてロードバイクに乗り続けていたのか』を考える機会が増えました。

同時に、インタビューなどでも『危険かつ決して恵まれているとはいえない環境下でなぜ日本の選手たちは走り続けているのですか?』と外部から聞かれることもあります。

いまの世の中は何をするにも『明確な理由』を求められます。

特に資金集めについては、詳細かつ正確な企画書やスポンサーメリット(裏付け)をどれだけ用意できるかがカギになってきます。

この世界にしっかりとした資金と人材が入ってくる仕組みを創るためには、少なくとも上記の『何故』を取り除いていかなければ、この先もずっと『運』に頼っていくことになるのでしょう。

現代の若い人たちは、社会情勢などを反映し『頭で考え、そして計算してから行動を起こす』傾向にあります。

時代はまわりますから、また『無鉄砲な若者が増える』時代がいずれやってくるかもしれませんが、少なくともこの数年でこれらの傾向が大きく変化する兆しは今のところありません。

一にもニにも『理由』。。。

素晴らしいことですし、正しいことだとも思います。

しかしだからこそ『まったく理由のつかない衝動に15年以上も取り憑かれて走り続けていた』あの頃の自分のメンタルを懐かしく思うと共にある意味で羨ましくも感じます。

『いまでも十分に理由のつかない行動してるでしょ』という声が聞こえてくるような気もしますが、少なくともいまは現役時代の様な『動物的』な生き方はできませんし、それをいまの仕事でやっても通用することはないでしょう。

心の奥底では現役選手たちを『羨ましい』と思い続けています。

『なぜ走るのか?』

誰でもいつかは選手を引退する日がやってきますが、『純粋な苦しみ』を味わえる世界に身を置けることがいかに特別であるかを、現役選手たちにも知っておいて欲しいなと感じます。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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