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栗村修「練習中の事故」

Posted on: 2016.01.25
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1月下旬に入り、世界各国で2016シーズンの本格始動に向けた動きが活発化しています。

『UCIワールドツアー』初戦となる『ツアー・ダウンアンダー(オーストラリア)』は、昨シーズン多くの事故(怪我)に見舞われ0勝に終わったサイモン・ゲランス(オリカ・グリーンエッジ)が、開幕戦からエンジン全開で自身4度目となる総合優勝を飾り見事復活の狼煙をあげました。

一方、『ツール・ド・サンルイス(アルゼンチン)』では、キンタナ・ブラザーズが好調な走りをみせ、ナイロ・キンタナの弟であるダイェル・キンタナが総合優勝に王手をかけています。また、兄のナイロ・キンタナも総合3位につけており、開幕戦でいきなり兄弟揃っての表彰台がみれるかもしれません。

また、NIPPO・ヴィーニファンティーニから出場している山本元喜選手が第2ステージであわやステージ優勝という素晴らしい走りを披露しています。

日本人選手といえば、伊豆大島で開催された『アジア自転車競技選手権大会』では、代表選手たちが各カテゴリーで多くのメダルを獲得する魂の走りをみせてくれました。

そんな中、シーズン開幕直後にも関わらず、レース中のクラッシュで早くも戦線離脱を余儀なくされる選手たちの情報も入ってきています…

そして昨日、『スペインでトレーニングキャンプ中のジャイアント・アルペシンの選手6名が逆走してきたクルマにはねられる』というショッキングなニュースが飛び込んできました。この中には、ジャイアント・アルペシンの主力選手であるジョン・デゲンコルブやワレン・バーギルも含まれていたということです。6名とも幸い命に別状はないとのことですが重症であることには間違いなく、今季のチームの成績に影響がでることは必至な状況となっています。

この事故の記事をみて感じたことは、『選手たちは本当に日々命をかけて戦っているんだな』というこれまでもずっと自転車選手に対して抱いてきたリスペクトの気持と、このスポーツを日本でメジャーにすることがいかに困難であるか、という二つの相反する気持ちでした。

日本国内でも選手が練習中に死亡する事故は残念ながら過去に起きています。更に特定の地域の高校では『自転車競技部の生徒が部活で公道練習を行うことを禁止する(生徒たちの安全のために)』という事例もすでに生まれています。

野球に置き換えるならば『部活中にグラウンドでの練習を禁止する』というのに匹敵する処置であり、もし、これらが全国的に波及するならば、自転車競技の未来は大きく閉ざされることになってしまいます。

アジア選手権などの最前線で懸命に戦う選手やスタッフをみていると、過去の自分がそうであったように、彼らのためにも本当に早いところ抜本的な改革の流れを創りださなくては、と焦る気持ちが大きくなります。

最近は以前に比べて『自転車業界内で自転車関係者とコミュニケーションをとる時間』よりも、『自転車業界外の方々と自転車に関するビジネスなどの話をする時間』の方が増えてきました。

まだまだニッチな世界といえる自転車界に『優秀な人材』と『資本』を招き入れるにはどうすれば良いのかを日々考え続けていますが、やはり『自転車業界内の価値観』と『一般社会からの目や価値観』の間には大きな乖離があるのは間違いなく、自分を含めた『自転車村の人々』の目を外にも向けさせ、一般社会の空気に触れる機会をより多くつくらなければと切に感じる次第です。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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