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栗村修「国内の育成強化、日本独自リーグ構築が急務」

Posted on: 2013.09.10
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自身ヨーロッパでプロ経験をした後、国内リーグでも活躍した栗村監督。引退後は自身の体験を若手選手に伝えるとともに、監督として国内リーグを盛り上げている。また、JSPORTSの解説をはじめロードレースの普及活動に大きな力を注いでいる。そんな栗村監督は現在の日本ロードレース界に警鐘を促す。本当に強く世界で活躍する日本人選手を排出するには何をすればいいのか、大胆なリーグ構想など栗村監督独自の発想を語った

ーーーー■ 以下、栗村監督インタビュー

ー日本ロードレース界の現状
現場の人材や知識はある程度揃っていると思う。お金についてもまとめればそれなりの額になる。ただ何が足りないかというと、それをまとめる人、全体を正しい方向に導ける人がいないと思う。完璧ではないにしても、ロード界全体を大きく作り上げるパーツはそろっていると思う。高校・大学には競技部があり、競技人口が少ないと言っても継続的に選手は存在している。お金を出資する企業があり、海外経験豊富な選手、ツール・ド・フランスに出場する選手もいて、優秀な指導者もいるが、これら全体をまとめるカリスマ的人間がまだ出てきていない。

自分自身もこのロードレース界をまとめるだけの力・知識・経験がまったくもって足りていない。それぞれが向かうべき方向の意見が割れていて、ロード界の意思統一ができていない。これを打開すべくためカリスマが必要であり、その不在が今の日本ロード界が抱えている一番の問題だと思っている。


栗村監督率いる宇都宮ブリッツェンも参戦する国内リーグJプロツアー
photo(c):Tatsuya.Sakamoto/STUDIO NOUTIS

ー栗村氏が考えるロード界が向かうべき方向とは
現状日本では、チーム運営・選手育成に着眼している人間はいるが、レース界全体の構造改革というマクロな視点に立てている人が少ない。戦略的なレースシステム→チーム運営→選手育成といった順序立てが必要なのだが日本にはそれがない。むしろ末端ばかりに目がいってしまい順序が逆になっている。レース界全体をデザインできる優秀な経営者がいないのが日本の問題点だ。

世界に現存しているレースシステムではなく、日本に合った新たなリーグ構想などを考えださなければいけないと思っている。競技としてルール・システムの新しいアイデアを取り入れないと、ドーピング問題や安全面、そして経済的なことなども含めて、日本ではロードレースがスポーツとして成り立たなくなってしまうのではないかとすら考えている。

ー新たなリーグ構想とは
10年以上前から、日本の実業団レースをベースにリーグ構想は必要だと思っていた。そのはじまりが現在のJプロツアーであるが、海外へチャレンジして選手のレベルをあげていく一方で、日本国内にも持続性・経済性のあるシステムが必要だと思っている。現在の実業団レースはまだまだ欠点だらけだが、理想としては国内にしっかりとしたピラミッド型(ジュニア→国内プロへと繋がる)のシステムがあり、その上に日本を代表するプロコンチネンタルチーム(最終的にはUCIプロチーム)などがあって、そのチームが海外遠征をするなどのシステムが構築できればいいと思っている。

以前からずっと言い続けていることだが、海外での活動を目論んでいる国内の有力コンチネンタルチームは、規模の小さい活動をバラバラに行うのではなく、海外での活動という目的が一致しているのならば、一つにまとまってお金や人材を共有するべき。口では皆世界を目指すと言っているが、当たり前のことができていないので、単なる自己満足の活動にしかみえない。そして、宇都宮ブリッツェンの様な地域密着型チームは国内でしっかりとしたリーグ戦を戦い、経済面の広がりや人材発掘、育成に力を入れていくべきだと思う。

サッカーのJリーグとサッカー日本代表のような関係を作り出したいというのが発想である。海外至上主義の人にはなかなか受け入れられないことが多いが、ヨーロッパのレースのまねごと、ロードレースごっこだけでは広がりが生まれない。海外で活動している人にもつながる、国内の活動の充実を視野に入れていかなければならない、と思っている。

ー今必要なものは
お金を集める事、優秀な人材を集める事。組織・理念を共有していく人間が集まることが大事なのではないか、ビジネスモデルとして成立しないといけないのでなないだろうか。自転車界という狭い枠だけにとらわれてはいけないと常々考えている。自分自身も思い切った発想で一度自転車業界から離れてみないといけないとさえ思っている節はある。他の業界で学ぶなど、一度外の世界を体験し、俯瞰で自転車界というものものをみなければいけないと思っている

ーナショナルチームの役割
現在の自転車界のスタンダードでは、ナショナルチーム=アンダー・次世代の育成チームとなっている。ただ、一般の人々の感覚だと、サッカー日本代表の様な日の丸をあしらったジャージを着たナショナルのプロチームといったものが必要だと思っているのではないだろうか。カチューシャ(ロシア)・アスタナ(カザフスタン)・コロンビア・ MTNキュベカ(南アフリカ)といった、国が統括するチームが必要だと思っている。

現状日本のコンチネンタルチームが乱立している状況はあまりよくないと思っている。日本の自転車連盟が国として管理しているプロコンチなりプロチームといった、日本の企業・ファンが食いつく、独自の発想でチームを作っていかなければいけない。そのためには、まずは国内のレースを人の興味を惹くものを作らなければいけないだろう。

ー若い世代(ジュニア/アンダー)について
長年見てきて言えるのが、結局は才能が一番大事だなと思っている。才能が大事というのは当たり前のようだが、強くなる人間は本場のシステムに正しいやり方で放り込めば必ず順応して這い上がっていく。例えば、西村大輝(シマノレーシング)のような存在は素質があるので、そういった有望な選手はいち早く海外でフルタイムでの活動をはじめるべきだと思う。

早く本場のレースを沢山経験できるような環境に飛び込むべきだし、彼にはその順応力があると思う。かといってプロチームからいきなりスカウトされるほどのレベルではない。ただ、より強度の高い環境(高すぎてもダメ)が彼のような才能のなる選手を育てるのではないかと思っている。

現状では、才能のない選手が本場で活動しているパターンが多い。本場のシステムの中を這い上がっていける才能を持った選手を発掘し、その選手を良いタイミングで正しい方法で放り込む。このシンプルなルールをただ繰り返していくだけ。才能のない選手にいくら手をかけても残念ながら奇跡は起きない。

一つ言えることは、現在、競技として自転車に乗っている全ての日本人のなかに、ツールで総合優勝できる才能を持った選手は一人もいない。但し、自転車に関わっていない全ての日本人を対象にみた場合は、それに近いことができる人間が何人かはいるはずだ。その選手を探しだし手をかけなくてはいけない。これらのことも極当たり前のことなのだが、皆なぜか既存の選手を育てること集中している。繰り返しになるが、本気で世界を目指している指導者がいるようには到底思えない。


将来が嘱望されるアンダー/ジュニア世代

ードーピング問題
ヨーロッパのプロロード界がドーピング問題によって、現在崩壊しはじめているので、単純にヨーロッパを目指せばいいというわけではない。このままでは企業のスポンサー活動も滞ることすらあるのではないかと思っている。正直、ツール・ド・フランスを見ていてドーピングの問題は根が深いんじゃないかと…自分もロード界に携わっている身として、アームストロングを称えていた自分がいて、解説者として本質を知っているものとしては、実にしゃべりずらい立場である。

強い勝ち方をするフルームがドーピングを疑われるという現状は、本来スポーツとしてありえる状況ではない。これからの事を考えていく以上、日本発信の”世界一クリーンなリーグ”といった大胆な発想もありなのではないか?ドーピング問題は、それほど深刻な社会的な問題だと思っている。

ー栗村監督の理想
発掘、育成システムを底辺に持ち国内プロリーグを頂点とする巨大組織が基盤となり、その上にナショナルチーム色の強いUCIプロチームを創るのが理想。リーグ構想は日本に、ロードレース文化を浸透させるといったこと、国民を動かすレベルの話だと思っている。それが大きすぎる話ならば、チーム単位のレベルで活躍するといったことの方が現実的なのかもしれないが、それでは現状から先に行くことは不可能だと思う。

ロードレース自体の価値を生み出す作業を少しでも早くはじめないと、大きくは競輪マネー(国内UCIレースの大半は未だに補助金に大きく依存している)に、そして結局はその殆どが親企業の売上を食いつぶしているだけの自己満足型国内有力チームの形態を考えると、いずれ崩壊がはじまるのではないだろうか。お金を出すのは企業。ロードレースに地域貢献・企業的価値を見いだす事をしなくては生き残る事はできない。そのために大きな改革が求められていると思っている。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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