栗村修「今週の海外情報まとめ/ピノとマディオ監督が12年目の愛の誓い」

Posted on: 2020.06.06

今週の注目ニュースをピックアップして、自転車おじさんのコメントをつけてお届けする「ウィークリーニュース しゅ〜くり〜むら(WNC)」の回となります。

もしかすると1回限りで終了してしまうかとも思いましたが、なんとか第2回にたどり着くことができました。

<契約情報>
新型コロナウイルスの影響で各チームの財政状況が心配されているなか、今週はいくつかの新たな契約関連のニュースが飛び込んで参りました。

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◯17歳のドイツジュニアチャンピオンMarco BrennerがUCIワールドチームのチームサンウェブと4年契約を結びました。

栗村コメント:
近年、U23の選手たちがワールドツアーのレースで大活躍をみせています。

エガン・ベルナル(チーム イネオス)は、U23 4年目の年齢(日本だと大学4年生)でパリ〜ニース、ツール・ド・スイス、ツール・ド・フランスを制しました。

レムコ・エヴェネプール(ドゥクーニンク・クイックステップ)は、U23 1年目(大学1年生)にクラシカ・サンセバスティアン、ヨーロッパ選手権個人TTを制し、世界選手権の個人TTでも2位となっています。

このほかにもU23年代でワールドツアーで勝利を挙げている選手は少なくありません。

かつてはU23というのはプロ選手になるための最終準備期間の様な位置づけでしたが、近年は即戦力としてがんがんに暴れまくっている状況です。

そんなこともあってか、U23ではなくてジュニア選手と直接契約を結ぶワールドチームが目立ってきました。

上記のドイツジュニアチャンピオンのBrennerの前には、UAEチームエミレーツがスペインジュニアチャンピオンのJuan Ayuso(17歳)と契約を結んだというニュースが流れていました。

いまは医学的なアプローチが進み、若年層の選手を潰すことなく戦力として生かしながら効率的に育てていくノウハウが構築されているのでしょう。

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◯フランスのワールドチームグルパマFDJが2024年までスポンサー継続を発表しエースのピノも2023年まで契約を延長しました

栗村コメント:
最近の悪い流れとは逆のグッドニュースですね。

ピノはこれで2010年から2023年まで14シーズンマディオ監督一筋となります。すごい子弟愛です。

ちなみにグルパマはフランスの大手保険会社、FDJは昨年末に民営化されたばかりの宝くじ販売会社です。

セクター的にコロナの影響を受けにくい業種ということなのでしょうか。

現状、来季の契約が不透明な選手が多いなかで、この長期契約延長が吉と出るのか凶と出るのか(安心が力になるのか慢心になるのか)に注目です。

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◯一方、選手の給与が今後35%下落するという不吉な予想も…

栗村コメント:
ベルギーの経済学者によると、自転車ロードレースの選手の給与は、他のプロスポーツに比べて新型コロナウイルスの影響をより受けやすいとのことです。

放映権料や入場者収入がチームの収益に反映される(顧客とチームが直結されている部分を持つ)スポーツであれば、ある程度新型コロナのショックを吸収できますが、自転車ロードレースはチーム側が直接収入の構造を持たないため、選手の給与が平均で35%ほど下落する可能性があるとの研究結果が公表されました。

新型コロナウイルスの影響を受けるタイミングは業種によって異なりますが、スポンサー収入がベースのスポーツなどは尾を引く期間が長い様に感じます。

企業にとってスポーツ関係へのスポンサードは最優先事項ではないので仕方がないのですが、自分自身にも関係していることなので少し心配になってしまいます。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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