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佐藤一朗「トレーニングの為に考えなくてはならないこと」

Posted on: 2015.06.10
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自転車に限らず競技スポーツで強くなろうと思ったら、幾つか知っておかなければならない事があります。これまで何回かに分けて自転車競技のトレーニングの基本についてお話しをしましたが、学校の授業で言えばその前の話になります。(スミマセン。順番が逆ですね。)
 
僕はトレーニングの事を考える時、人の身体の事を考えます。

それはまるでレース用の車か何かを造るかの如く身体を部品単位で考えていきます。筋肉は関節を動かすエンジンで、食事はそれを動かすエネルギー。それぞれのパーツをバランス良く動かすのが神経で、全てをコントロールするドライバー(運転手)が頭脳と言うことになるでしょうか?

まぁ、細かい事はともかくとして、選手を強くするために細分化して考える事で欠点を補い、全体のパフォーマンスを上げて行くことを目指しています。
 
そんな事を考え続けていると「自転車競技のフィジカルを向上させるポイントは3つに絞られるんだな。。。」と思うようになりました。(あくまで個人的見解です。)
 
その1つは筋肉を強化すること、筋力を上げることです。至って簡単ですね。そして2つ目は、その筋力のバランスを整える事。ボディービルダーの様に沢山の筋肉を付けたからと言って自転車で速く走れるとは限らないので、自転車競技、その中でも自分が行いたい種目にとって必要なバランスに整えると言うことです。

最後の1つは、その筋力を発揮させるためのエネルギー供給をスムーズにする事。筋肉を動かすには当然ですがエネルギーが必要です。そのエネルギー供給を自分の種目に最適な状態で行えるようにする事です。
 
もの凄く抽象的な表現で解りづらいですね。いつもの事ですが、すみません。
 
こういった身体の事を細かく考える学問を解剖学とか生理学と言います。また特に運動に特化した学問として運動生理学、スポーツ・バイオメカニクスなどと言うものもあります。
 
実は、これまで書いてきたトレーニングに関するコラムは、全てこういった学問がベースになっています。逆に言えば、そう言った学問をある程度理解している人にとっては「とても解りやすいコラム」だったでしょうし、見たことも聞いたことも無い人にとっては「難しい、解りにくいコラム」だったと思います。

本当であれば、そう言った基礎知識の部分を先に説明すれば良かったのですが、その場合殆どの人に興味を持って貰えなかったと思うので、キャッチしやすいテーマから始めさせて貰いました。
 
と言う事で今回から少し。。。いえ、正直に言います。「とっても難しい話をさせて頂きます。」FaceBookでの反応等を見ながら、余りにもリアクションが無いようでしたら今回限りになるかも知れませんが、沢山の人に興味を持って頂けるようでしたら、ある程度続けてお話ししたいと思っています。
 
ここからが本題。
 
先月の連休に今年2回目となるチーム合宿に行って来ました。今回の合宿は3月に行った動作解析から導き出した改善点がしっかりとトレーニング出来ているかの確認と、今春一般入試で入学し自転車部に入部してきた選手(自転車競技未経験者)を中心とした1年生への実技講習を目的に行いました。
 
ここで行っている動作解析とは、実際に自転車で走っている姿を一定の条件で撮影して「適正なポジションで走れているか?」と言うことを確認しています。

適正なポジションとは、もちろん自転車に対して最も大きな力(加重)を加えられるポジションのことで、さらに付け加えるなら「ケイデンスが上がった時にもしっかりとペダリング出来るポジション」と言うことです。
 
このポジションを作るのは全身の筋バランスです。ポジションを意識した練習ならともかく、強度の高いトレーニングやレースでは意識してポジションは作れません。

その為、全力で自転車を走らせたときにも適正なポジションを維持出来るよう、全身の筋肉のバランスを整えなくてはなりません。
 
画像は今年入学した1年生の動作解析画像です。

ダンシングポジションでの側面と前面から撮影した画像になります。ダンシングポジションでは、ハンドルとペダルのみで自転車と接するため非常に不安定な状況でペダリングをしなくてはなりません。

ギア変速の無いトラックレーサーでは低速域では大きなトルクを必要とし、中速域から高速域では空回りしない固定ギアのためケイデンスの上昇に対応するために注意しなくてはならないポイントがあります。

トルクを必要とする場面ではペダル加重時に生じる反作用の抑制を、ケイデンス上昇時にはペダルからの抜重と、加重するペダルに対する重心の移動です。
 
もちろんこの事はギア変速が出来、空転するフリーのギアを使用しているロードレーサーを使用した場合でも同じ事が言えるのですが、トラックに比べるとそのデメリットが少ないため見落とされがちになります。しかしトラック同様の筋バランスを整え、ポジショニング出来ればメリットは大きくなります。
 
動作解析を行うときには、低速時には敢えて負荷の高くなる大きいギアをかけ反作用が出やすい状況を作り、中速域から高速域ではケイデンスを上げやすいように敢えて負荷の低くなる小さいギアをかけてバランスを崩しやすい状況を作って画像撮影を行います。
 
そして撮影出来た画像からペダル加重に対する重心の位置、ペダリング時の重心の移動、そしてそれらをコントロールしているグリップから上肢帯・体幹部まで全ての動きを確認していきます。

その上で適正なポジショニングが出来ていない原因を抽出して、それを改善するために必要なアドバイスをすると同時に、トレーニングプログラムを組んだり、ストレングストレーニングの指導を行います。
 
個々の筋力バランスについては、余りにも細かすぎてここで説明することは出来ませんが、選手が持っている現在の筋力に応じて出来る事から順次指導していきます。

難しいのは同じ様な状況に見えても選手によってその状況を生んでいる原因が違えば、指導方法も変わってくる事です。
 
画像を見て頂ければ分かると思いますが、基本的なフィジカルが出来ている選手であれば2ヶ月程度でここまでポジショニングを行う事が出来ます。

高強度のトルク系トレーニングや、効率的な持久系のトレーニングを行う為には、まず適正なポジションでペダリング出来る筋バランスを作る事を意識したトレーニングに取り組む事が必要です。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うトレーナーズハウス代表。自らの競技経験に加え鍼灸按摩マッサージ師としての知識を生かした、運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の研究を重ねる。現在は鹿屋体育大学自転車競技部のコーチとして指導を行うと同時に、競輪・ガールズケイリンなどの多数のプロ選手の指導も行う。中央大学卒/競輪学校63期/元日本代表 ■TRAINER'S HOUSE ■TRAINER'S HOUSE FACEBOOK

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