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栗村修「ジレンマ」

Posted on: 2015.03.05
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現在、ツアー・オブ・ジャパンの出場チーム選考の最終段階に差し掛かっています。先日、恵比寿で開催した公式記者発表で暫定的に発表した出場チームリストは以下の通りです。

◆海外8チーム(予定)
ランプレ・メリダ(イタリア)
ドラパック(オーストラリア)
アヴァンティ(ニュージーランド)
タブリーズ・ペトロケミカル(イラン)※
RTS・サンティック(台湾)※
ピシュガマン・ジャイアント(イラン)※
(残り2チームは未定)
※印はUCIルールで定められた Provisional ranking の上位3チーム

◆国内8~9チーム(予定)
ブリヂストン・アンカー
愛三工業
チーム右京
宇都宮ブリッツェン
那須ブラーゼン
シマノ
マトリックス
日本ナショナルチーム
(残り1チームは未定)
※選考はUCI Provisional ranking を参考

UCIレースに於ける出場チーム選考については、UCIが定めたルールを守っていれば、その他は主催者の意思で選ぶことができます。その、UCIが定めたルールは以下の様になっています。

◆アジアツアークラス1に適用されるルール
・ワールドチーム(全出場チーム数の最大50%)
・プロフェッショナルコンチネンタルチーム
・コンチネンタルチーム
・各国のナショナルチーム
・ヨーロッパツアークラス2のレース主催者、アメリカ/アジア/アフリカ/オセアニアツアーのクラス1&2のレース主催者は、UCIの各大陸チームランキング(Provisional ranking)の上位3チームを優先して招待しなければならない。

実は、暫定出場チームリストを発表後に「なんであのチームを呼ぶの?」「なんであのチームを呼べないの?」 というご質問を多数いただきました。我々主催者としても、できるだけ “常識” に則したチーム選考を行いたいと常々考えています。

その様な状況下で、普通に考えて “?マーク” がつく判断がなされた時というのは、何らかの理由があるのだと解釈していただければ幸いです…

しっくりとこない選考がされた際の理由としては、一般的に『ルール』『お金』『対象チームの意思』『スポンサーの意向』などが理由として考えられます。もちろん、レース主催者によっては、好き嫌いや政治的な意図でチーム選考を行うこともありますが…

しかし、ツアー・オブ・ジャパンに関しては、日本のレースファンや日本のレース界のメリットを再優先にして出場チームを選びたいと考えています。

少し悲しく感じるのは、世界のロードレース界全体の “仕組み” が未成熟なことが影響して、我々の努力や想いが伝わらず、時に曲解されて批判を受けたりすることです。

「UCIのルールを無視しているオーガナイザーなんてたくさんいる」「主催者は全権限を持ってるんだから怪しいチームや選手は拒否するべきだ」など、あやふやな情報でアドバイスをくださる方は結構います。

しかし、その言葉を信じて行動を起こし、最悪の結果、ツアー・オブ・ジャパンが消滅しても、彼らは責任をとれないでしょう。今年、我々主催者は、UCIへ『Provisional ranking』ルールの順守について、明確にドーピングやその他の問題を明記して、質問状を送付しました。

しかし、UCIからの回答は「ルール通り招待しなさい」というものでした。

今回、出場チームリストに入っている、一つのチームについては、昨年のTOJメンバーの一人が、TOJ一ヶ月後の競技内検査で、EPO陽性となっています。

そして、もう一つのチームは、出場停止処分があけたばかりの選手が、先日開催された大陸選手権で優勝を飾っています。その選手が今年のTOJのメンバー入りするかは今のところわかりません…

こういったことを私が書くことは、大会にとって負の面を生み出すことにも繋がるでしょう。何も書かず、何も語らず、が、一番楽で利口な選択であることはよく理解しています。

ただ、私は現場上がりの人間なので、クリーンに戦っている選手たちをできるだけ守りたいと感じています。もちろん、憶測だけで無用な “疑い” を助長することのリスクも理解した上での主張です。 

ここに書くことが、私個人のせめてもの抵抗です。現状、疑惑があるチーム、ドーピング違反者を複数出しているチーム(ランキング上位チームに関して)を主催者判断で呼ばなくて良い、というルールは存在していません。

要するに交通ルールと一緒です。

みんなが口を揃えて「あいつは高速道路でいつも200km/hでかっ飛んでいる」 と言ってたとしても、証拠がなければそのドライバーの免許を剥奪することはできません。

また、何度も交通違反で捕まっていて、更に一発免停になったドライバーがいたとしても、そのドライバーがルール上の免停期間を消化すれば公道に戻ってくることができます。

しかし、交通ルール違反と “悪質な能力向上薬品の使用” とを、同じように裁くのはもうやめた方がいいとおもいます。もしかしたら、交通ルール違反と”うっかりドーピング”であれば同じスタンスで裁いても良いのかもしれませんが…

昨日、UCIが『アスタナのワールドツアーライセンスの取り消しをライセンス委員会へ要請した』というニュースが入ってきました。その理由は、アスタナのドーピングスキャンダルです。

アスナタからワールドツアーライセンスを奪えるのであれば、我々レース主催者にもある程度の権限を与えて欲しいものです。もしなにかあれば、大会の信用は傷つき、そして最悪の場合は全てを失う可能性すらあります。

レースを開催する地域は、税金を投入し、自転車ロードレースの可能性に”投資”してくれています。我々はファンもチームも選手も大切にしたいですが、それ以上に、最も大きな犠牲を払ってくれている開催地のメリットを最大化したいのです。

色々ありますが、引き続きがんばっていきたいと思います。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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