福島晋一「計算された無謀さ」

Posted on: 2015.05.29

ツアーオブジャパンが終了した。今年も日本人の総合優勝者は出ず、まだ自分は唯一の日本人総合優勝者として名を残している。

今はカテゴリーも上がって、イラン人も強くなったし、勝つのが難しいことは理解できる。しかし、当時と違って今では世界の状況も日本にいながら手に取るようにわかるし、ヨーロッパにいくチームも増えている。

かつて、飛び込みセールスのような形で飛び込んで行った先人たちがスタッフにまわり、いつでも、ありがたい言葉を聞かせてくれることであろう。それでも、ツアーオブジャパンでUCIポイントが僅かしか日本に入ってこないという状況は何とかしたいものだ。

試走をして、ばっちし調整しても敵わない。ラベルがちがう。

では、ラベルを張り替えてもらうしかない。

しかし、中身がともなっていないのに、ラベルだけ張り替えられても惨めなだけである。スタートラインに並ぶまではプロとして扱えてもらえる。しかし、スタートしてすぐに自分だけ遅れるのだ。

幸い、アジアにはレベルに伴っていないチームがたくさんあるから、ちぎれるのは自分たちだけではないかもしれない。そういう状況が、今のコンチネンタルがたくさんできる状況を後押ししている。

では、どうしたらよいか?

アマチュアでいいと思う。弱いコンチよりもコンチに勝てるアマチュアチームの方がいい。そして、アマチュアチームであれば、ヨーロッパのアマチュアレースを走れる。

ヨーロッパのチームに単独で加入して、経験を積める。フランスはアマチュアに3つのカテゴリーがあり、第1カテゴリーのトップ選手は若ければそのままプロに直結している。

自分も康司も崇史もフミも幸也もそのステップで上がっていった。

今のコンチネンタルの選手は、そのチームのジャージとナショナルチームジャージ以外着ることは許されていないから、実業団レースとUCIレースしか走れない。

UCIレースで勝てる選手ならいいが、そうでない選手は、アマチュアから勝って上に上がっていくことをお勧めする。日本のJPTも2つのカテゴリーに分けられるぐらい強い選手が増えてくれればいい。

勝負の駆け引きを学ぶことなく上に上がっていっては、いざという時に勝利を逃すからだ。

走り方は積極的に行けばいいってわけではない。練習量と自信に裏付けされた積極性でなければ、それはただの自殺行為。リタイヤしては、経験するチャンスが減る。

タイ合宿で毎日200㎞越えの練習をして、自分はレースの200kmが短く感じた。ステージレースを2レース連続で走ったりしたものだ。

康司はフランスの第1カテゴリーのステージレース、セルキュイ・デ・ロレーヌで総合2位に入った後、中1日でトルフェードグランパーという第1カテゴリーのワンデーレースで4位に入賞した事がある。それも、スタートアタックして最後まで集団に戻ってこなかった。その時勝ったのは当時、フランセーズデジュのフィリップジルベール。

練習では無謀な走りをすればいい。しかし、レースでは計算された無謀さでなくてはならない。

昔、イランチームでは福島兄弟を逃がして1分差をあげたら捕まえられない。と、まことしやかに言われていた時代があった。

こっちから言わせれば、そんなあほな と言いたくなる話であるが、外国人からもマークされる新たな日本人が早く出てきてほしいものである。

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【訂正(2015年05月30日)】
今日は若手と一緒に走った。最近、外を走っていなかったので下りを攻められない。下りながら、先日書いたブログに重大な誤解を招く箇所があることに「はっ」と気が付いた。

練習は無謀にと書いたが決して、下りは無謀に下らないでください。信号も…

幸い、僕の賢明な読者さんは そこもちゃんと汲んでくれていたようです。練習で転ぶのは愚の骨頂です!

AUTHOR PROFILE

福島 晋一 ふくしま しんいち/岡山県出身 1971年生まれ。20歳からロードレースを初め、22歳でオランダに単身自転車武者修行。卒業後、ブリヂストンアンカーに所属し2003年全日本チャンピオンを獲得。2004年ツアー・オブ・ジャパン個人総合優勝、2010年ツールドおきなわ個人総合優勝。2003年から始めたチーム「ボンシャンス」代表に就任。2013年シーズンを最後に引退。JOCのスポーツ指導者育成制度でフランスのコンチネンタルチーム「ラ・ポム・マルセイユ」の監督として2年間の研修を経て、現在はアジアのロードレース普及を目指しアジアサイクリングアカデミーを主宰している。 アジアサイクリングアカデミー筆者の公式ブログはこちら

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