福島晋一「多様化の矛盾」

Posted on: 2016.10.19

東京に来ている。朝飯は吉野家の朝定、鮭定食。ご飯と焼き鮭とみそ汁のシンプルなメニューだ。

いままで多くの国に行って、いろんなご飯を食べてきたが、このメニューが一番体に合っている。やはり、DNAにしみこんでいるのであろう。

だからと言って、これが外国人の人に一番合うわけでもなく、トルコ人にはトルコの食事が一番合うであろうし、イタリア人はイタリアに帰ったら真っ先にピザを食べにいく。

やはり、食事が合わない国には長い間住むのは難しいと思う。

それだけ長い月日をかけて風土に順応した食事が世界各地でできてきているわけだから、そんなに簡単に文化を受け入れられるわけもないのである。

宗教をはじめにしたものの考え方はもっと厄介である。

今、世界は人の流れもモノの流れも情報の流れも今まで人類が経験したことがないスピードで進んでいる。そのことはさらに多くのことを可能にして、地球は小さくなるばかりだ。そして、長い年月をかけて蓄積されたものを効率よく掘り出して、派手に使ってる。

今の世の中では効率こそがすべてである。

自分も「無駄は嫌い=効率を重んじる」であるが、効率がいいことは、さらに効率を求めて、地球の回転は速くなるばかり。その弊害は多くのところで出てきている。

そして、いま懸命に叫ばれているのが「多様化」という言葉、「お互いの違いを認めて仲良く暮らしましょうや」という考えであるが、この多様化のいくつく先には、均一化というゴールがある。

しかし、先ほども述べたように、人にはお互い譲れないものがある。

マクロ的には国家間
ミクロ的には夫婦間のささいな行き違い。

そして、人があまり我慢をしなくなったこの世の中ではたしてこの多様化、均一化は達成できるのであろうか?

答えはNOだと自分は思う。

だから、この世から戦争がなくなることもないし、この世の中の人すべてが幸福になれるわけでもない。

今、アメリカや西欧が世界の代表のようにふるまっているが、地球の歴史を見る限り、盛者必衰というのは自然の摂理である。

あまり、ほかの国の事には干渉しないでおいた方がいいのは分かっているが、やはり自転車ロード競技で強くなろうと思ったら、やはり才能のある選手はヨーロッパにいって修行するのが最短のルートである。そして、人類はどんどん加速していくのである。

ただ、俺は朝はやはり焼き魚にご飯に味噌汁が一番合っている。

AUTHOR PROFILE

福島 晋一 ふくしま しんいち/岡山県出身 1971年生まれ。20歳からロードレースを初め、22歳でオランダに単身自転車武者修行。卒業後、ブリヂストンアンカーに所属し2003年全日本チャンピオンを獲得。2004年ツアー・オブ・ジャパン個人総合優勝、2010年ツールドおきなわ個人総合優勝。2003年から始めたチーム「ボンシャンス」代表に就任。2013年シーズンを最後に引退。JOCのスポーツ指導者育成制度でフランスのコンチネンタルチーム「ラ・ポム・マルセイユ」の監督として2年間の研修を経て、現在はアジアのロードレース普及を目指しアジアサイクリングアカデミーを主宰している。 アジアサイクリングアカデミー筆者の公式ブログはこちら

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