福島晋一「さよなら南仏」
スイスのUCIに監督のライセンスを取りに行った後、2年の研修を終えて帰国します。住み慣れたオバーニュとも明日でさようならです。
この2年間は非常に自分にとって悩ましい2年間でした。
選手生活を終えてフレッシュな状態でやってきたわけですが、選手気分が抜けきらないためにジレンマを感じ、また生活するための手続きに追われ、自分が選手時代に所属したチームであったら幾分か楽であったと思われる点も多々ありました。
子供たちがいる間は、とにかく事故に遭わないようにびくびくしていたのですが、一足先に家族を日本に戻した後は、町を歩いていても子供たちの影ばかりがちらつく状態になり家族でフランスで過ごした日々がかけがえのないものであったことに今気が付いたのでした。
一人この町に戻ってくると街の風景がまったく違ってみえる。
子供がいるおかげで、多くのところに行って、多くの人に会い。町に溶け込めていたことに気が付きました。子供もいきなり、フランスの学校に放り込まれて大変だったと思いますが、大変さの基準がない 子供たちは文句も言わず楽しそうに通っておりました。
路上にバイオリンを弾いてお金を集めている人がいました。彼の姿に魅かれてサイドミラー越しに写真を撮ったのですが、どこの世界も同じですが生きていくことは非常に大変です。
子供の時は大人というものはしっかりしたものだと思っていました。それは、自分の周りにしっかりした人が多かっただけだったというよりも自分が大人を過信していたんだ。と言うことが分かりました。
大人でも恵まれない人はいるし、子供よりも大人は救いようがない。
世の中には完璧な人間などいない。そして、完璧になれない人間であるからこそ、お互い補い合って生きて行かなくてはいけない。だからと言って、だれでも家に招き入れることはできない。
そのジレンマが今移民が大量に流入しているヨーロッパの苦悩なのです。
この2年間は研修制度のおかげで非常に恵まれた有意義な2年間でした。来年から、本当の勝負が始まります。