栗村修「情報と価値」

Posted on: 2014.12.29

『価値ある情報』というのがお金を生み出すというのは広く知られています、というか常識ですね。

しかし、価値ある情報でもその情報が公開されることがなければ付加価値を生み出すことはないですし、また情報が公開されたとしても発信元と受け取り手の間に直接or間接的な『優れた収益システム』が噛んでいなければ、優れた情報がお金を生み出すことには繋がりません。

自転車ロードレースはメディア関係者や広告代理店の人たちからみれば一つのスポーツコンテンツに過ぎません。そして彼らはそのスポーツコンテンツに付加価値をつけるプロでもあります。

しかし、レース現場にいる自転車関係者の多くはこういった話を毛嫌いする傾向にあります。

『スポーツで金稼ぎを考えるな』

『そんなことばかり考えていたら強くなれないぞ』

監督が選手にかける言葉ならば理解できますが、この言葉を『信念』として語られてしまうと、自転車界の未来を悲観せざる得なくなります。当たり前ですが、強化にもお金がかかります。

『こんなことやあんなことができればもっと強化できるのに予算がない。上は現場をわかってない!』

『上』 とはいったい誰なのでしょうか?

そもそも普通のスポーツには『上』などありません。資金が必要ならば自分たちで稼ぐ。稼ぐためには価値を生み出す。これ以外にはないと思うのです。

プロスポーツとは、選手という『人生と命を懸けて戦う』リアルなヒーローが創りだす壮大な『ドラマ』です。そして、そのドラマという『情報』が付加価値(お金)を生み出します。

付加価値が高まれば、それがいずれ選手やチームに還元され、その結果、更にその世界全体の付加価値が上がっていきます。付加価値の高い世界には、更なる人材とお金が集まってきます。そういう好循環を目指していかなくては本当の『強化』を実現することはできません。

今日のブログは小学生でもわかるような当たり前のことを書いてしまいました。でも、もし理解していない人がいるならば、是非知っておいて欲しいことなのです。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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