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三瓶将廣「勝負のカギを握る、はじめの2秒。8m級スタートヒル建設への期待」

Posted on: 2013.06.30
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「ダートバイクチャンネル」でお馴染みのBMX/MTBプロライダーの栗瀬裕太くんが、「YBPプロジェクト」なるものを立ち上げ、今、着実に前進させている。ちなみに、YBPとは、「Yuta’s Bike Park」のことで、山梨県に裕太君がたったひとりで創りあげたコースの名前だ。


プロMTB&BMXライダー栗瀬裕太くん。ダートシーンを盛り上げるため自らMCを務めている

そして、そのYBPでスタートしたプロジェクトが「YBPプロジェクト」で、BMXレースの国際レベルに対応するための練習施設を作ろうというものだ。目標は、2016年、2020年のオリンピックでメダリストを輩出し、マイナースポーツを脱却すること。裕太くんの想いが凝縮されたプロジェクトとなっている。

ただ、現状、コースを概ね完成しているものの、資金的な問題で大事なものが足りていない。それが「8mのスタートヒル」だ。そうした中、現在クラウドファンディングサービス「キャンプファイヤー」でプロジェクトをたちあげ資金集めを行なっている。(http://camp-fire.jp/projects/view/688


キャンプファイヤーのトップページで紹介され、注目のプロジェクトとなっている

今回、裕太くんがたちあげた8mスタートヒル建設プロジェクトだが、僕も含めて、世界を目指す国内のBMXライダーたちの願いがつまったプロジェクトでもある。

これまで、オリンピック出場を目指してきた国内エリートライダーたちが、常に悩まされてきたのが、練習環境の問題だった。

2008年の北京オリンピックで正式種目に採用されて以降、BMXレースはルールが一気に変わっていった。大きな変更点は3つ。それをクリアするために日本人エリートライダーたちは、様々な苦労を重ねてきた。

ープロセクションー
1つ目はプロセクションと呼ばれる、エリートライダーが走行するビッグジャンプセクション。

海外では昔からプロセクションが設置されていたが、2000年の世界選手権からほぼ毎年採用されるようになった。しかし、国内では飛ぶことの出来ないビッグジャンプへの対応に苦労した日本チームは、それをクリアするだけでも精一杯な年が続いた。

サイクルスポーツセンターBMXコースのプロセクション

しかし、2007年に日本最初のプロセクションが、上越金谷山BMXトラックに常設されて以降、徐々に国内で練習できる箇所が増え、現在では全国で4つのコースにプロセクションが常設された。また、その他のセクションもレベルアップし、今では海外レースに出て、プロセクションで苦戦することはなくなった。

ーランダムスタートゲートー
2つ目の変更点がスタートシステム。BMXレースの映像などを見ると必ず耳にするのが、スタート前の英語音声「OK RIDERS RANDOM START, RIDERS READY WATCH THE GATE」

従来はこのケイデンス音が流れた後に一定の間隔でシグナル音が4つ鳴り(信号は光る)、ゲートが倒れると言うシステムだった。

しかし、新しく採用されたランダムスタートは、ケイデンス音の終了後からシグナル音が鳴るまでの間が、0.1〜2.7秒とランダムになり、タイミングをとるのが非常に難しくなった。

慣れないランダムスタートでタイミングが取れず、遅れてしまう日本チーム。スタートフォームの大改善など、様々な対応策が必要となった。

プロゲート社のランダムゲート

僕は自宅の練習機を無音にして、いつ倒れるかわからなくしてみたり、ビデオなどを見て必死にタイミングをとる練習を行った。

BMXレースで、最も重要とされるのが「スタート」だ。そこで勝敗が80%は決まるため、ランダムゲートへの変更は、かなり厄介だった。

僕は、どうしても必要だと思い2007年、親に無理を言い、製造者であるPROGATE社からゲートを取り寄せ、自宅に設置した。

その後、国際ルールでもランダムゲートが義務化され、今では日本全国全てのコースに取り付けられることとなった。こうして2つ目の変更点にも対応することができるようになった。

ー8mスタートヒルー
そして、3つ目の変更点がスタートヒルだ。通常のトラディショナルタイプのコースでは低いところでは2mから、高いところでは6mのスタートヒルが採用されている。

国内でも修善寺サイクルスポーツセンターや、岸和田競輪場に隣接されているコースでは、6m級のスタートヒルが設置されている。

一方「8mスタートヒル」、通称SXヒル(スーパークロスヒル)と呼ばれるものは、名前の通り8mの高さがあり、2005年からUCIスーパークロスワールドカップ(SX)で採用されたスタートヒルのこと。

北京オリンピック以降も、オリンピックとワールドカップではSXヒルが採用され、2010年からは世界選手権でも使用されることとなった。つまりSXヒル攻略は、エリートクラスで勝つための絶対条件となった。

国際基準の8mスタートヒル

では、なぜ日本に8mスタートヒルがないのか?それは、8mスタートヒルを下れる選手が少ないからだ。

単純に8mの高さからコースを見下ろしただけでヒヤヒヤする。高所恐怖症の僕は、初めて下った時、恥ずかしながら下まで漕げずにブレーキしてしまったほどだ。

8mからスタートするといっても、ただ降りるだけではなく、様々な技術が必要とされる。スタートゲートから5m後に「キンク」と呼ばれる角度が変わるポイントがあり、そこでいかにスピードにのせるかで、その後の約10mで大きな差が出てくる。

さらに、8mスタートヒルから降りた後の、未体験のスピードで超えるジャンプの感覚も全く別物だ。だからこそ、慣れなければならないし、練習する必要ある。

北京オリンピック前後は、世界でも数えるほどしかなかったSXヒルだが、4年が経った今では、自国のオリンピックセンターや、既存のコースと併設するなど、各国でSXヒルやコースを次々と作ってきている。

前述したように、BMXレースは最初のスタートで勝敗が大きく左右する。ランダムシステムのスタートゲートは手にしたもの、その後の4コギで差がついてしまう。しかし、そのSXヒルがまだ日本には存在しない。

強豪国は、スタート後の4コギをとことん研究し、ポジションやテクニック、更には下に下るまでの間に、3ヶ所にタイマーを設置して最善のギヤ比などを「毎日」研究している。

僕や阪本章史くん(北京五輪日本代表)は、これまでSXヒルを求めて世界中を駆け回ってきた。この6年間は、新しく出来たと聞いては飛んでいき、事前に走れるチャンスを探しては練習してきた。

僕が最後に出場した2012年世界選手権は、ロンドンオリンピック最終選考会でもあった。すべてをそこに集中したが、残念ながら予選通過さえならなかった。

しかし、僕のタイムを見てみると、スタートから最初のコーナーを曲がるまででは全体の92位。その後のプロセクションから第2コーナーまでは一気にあがり予選通過圏内の59位のタイムで通過していた。

つまり、スタートヒルでのテクニックが原因で、その後の60キロオーバーで突っ込む第1ストレートで遅れてしまったという分析をしている。

単純に、そのスタート練習をすればいい事だけど、練習環境を求めて世界中を飛び回っているとやはり資金的にも限界は訪れてしまう。

BMX界発展のための起爆剤として、関係者の期待を集めているYBPプロジェクト。写真はプロジェクト賛同者でもあるフォトグラファー中川裕之さん撮影

そう言った悩みを解決させるためにも。そして、今後ワールドカップや世界選手権へ挑戦していくジュニアやユース層の選手たちのためにも、大きな期待を抱いているのが、YBPプロジェクトである。

すでに世界クラスのビッグジャンプは完成し、残すはランダムゲートを含む8mヒルとなったYBP。このコースの完成が、BMX界の発展に向けた大きな一歩となると期待している。皆で1つのゴールを目指し、僕も全力で応援していきたいと思う。

詳しくは、僕も映っている、こちらの動画&プロジェクトページをみてもらいたい。

YBPプロジェクト フェイスブックページ
https://www.facebook.com/YbpProject

AUTHOR PROFILE

三瓶 将廣 さんぺい まさひろ/川崎市出身。プロBMXライダーであり、一般社団法人SYSTEMATIC BMXの代表を務める。5歳からBMXレースを始め、中学校入学と同時に拠点を海外へ移し、これまで17年間18カ国にて、レースに取り組んできたライダーである。全日本選手権3連覇、2011年アジア選手権優勝。日本を代表するプロライダーの一人。現在、ライダー業の傍ら、BMX/自転車普及活動を目的に、一般社団法人SYSTEMATIC BMXの代表としても活動している。 筆者の運営する公式サイトはこちら

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