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佐藤一朗「中間速度域の加速」

Posted on: 2016.08.21
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前回に引き続きペダリングの修正シリーズです。最初にお断りしておきます。今回は何時もにもまして難しい事に触れています。興味のある方だけ見て頂ければと思います。
 
前回、固定ギアを使用したトラック用バイクでのペダリングの難しさについて、ペダルに対して加重(自重+脚力-反作用)をロス無くかける事よりも、踏み切った側のペダルから速やかに加重を抜く(抜重)事の方が難しいとお話ししました。

参考としてダッシュ時の画像を一緒に乗せたので、ご覧になった方はイメージしやすかったのでは無いかと思います。(前回分を読まれていない方は是非読んでみてください。)

◆前回ログ「改めて考えるペダリングの難しさ」
 
ダンシングポジションで低速域からダッシュする際に下死点を越えて加重がペダルに残っていた場合、その力がそのままバックをかけることになりブレーキングしてしまうことは誰にでも理解しやすい事と思います。修正する事は簡単ではありませんが、踏み切るタイミングを意識する事である程度改善する事が出来ます。
  
実はそれ以上に難しいのがダンシングポジションでの中速域からの加速です。
 
低速域では踏み込むポイントを下死点少し手前で終了する事。ハンドルの引きつけを最小限に留め、前後左右の重心移動を小さくすることで改善する事が出来ます。それはまだケイデンスが上がっていないため、全ての動作に時間的余裕があるからです。

それに対して中速域ではケイデンスが上がるにつれ、重心移動をするために与えられた時間はどんどん少なくなり、僅かな抜重の遅れがブレーキングを引き起こしてしまう事につながってしまうのです。
 
中速域でペダリングロスを少なくする為には、時間的余裕の少なさの他にもう1つ大きな課題があります。それはペダルに対しての出力の起点ともなる骨盤ポジションを安定させる事です。
 
低速域からの加速時にも骨盤ポジションの安定は非常に大切なポイントです。ペダルを踏み込む際の反作用によって骨盤が浮き上がってしまったり、前後左右に力を逃がしてしまったりとポジションを安定させる為には上半身の様々な筋力を必要とします。

中速域でも骨盤ポジションの安定はペダル加重の為にとても大切なポイントなのですが、その安定の為に求められる物が低速域とは大きく変わってきます。
 
低速域ではペダルの反作用によって逃げようとする骨盤を抑え込むことが最も重要なポイントになりますが、中速域では反作用はそれほど大きくなく寧ろ腰を上げた状態でペダリングを続ける為に身体全体を安定(同じ位置で支える)させる事が重要になってくるからです。
 
ちょっと分かりにくいですね。(何時もの事ですがすみません。)
 
ランニングをしている所を想像してみてください。天気の良い日にグランドやアスファルトで被われた道路を走るときには、1歩1歩しっかりと地面を蹴ること(力を入れること)が出来るので、特別な意識をしなくても走れると思います。しかし、雨が降ったベアグランド(土がむき出しのグランド)や砂利道、雪が降り積もった山道ではどうでしょうか?
 
足下が滑りやすかったり不安定になると、安定して地面に力を伝え走り続ける為には、地面を直接捉える脚だけではなく上半身のバランス感覚も重要になってくるはずです。
 
話を自転車に戻しましょう。
 
ケイデンスが上がって来る状態は、それまで踏み応えのあったペダルが徐々に底が抜けてくるように軽くなり、踏み込んだと思ったら直ぐに下死点に到達してしまい脚を引き上げるポイントに達してしまうのです。その為不安定になった身体を支える為にハンドルに重心を乗せしがみつく様なかたちでダッシュをしている選手をよく見かけます。
 
実はこの時ハンドルを引き付け身体を安定させようと力を入れている筋肉は、上腕二頭筋・三角筋・僧帽筋上部繊維です。この3つの筋肉は日頃から使い慣れている筋肉なので特別な意識をしなくてもしっかりと安定させてくれます。ただしそれは腕から肩、そして頚部を通して頭部の安定です。
 
もしここで気がついた人がいたとすれば、その方は相当身体の事(バイメカ)について勉強している人です。(笑)そうで無い人の為に話を続けましょう。
 
これまで何度もお話ししたと思うのですが自転車はペダルを踏んで走る乗り物です。それ以外の方法では走れません。競技に於いて最も重要なことはペダルに最大限の力をロス無く伝える事で、その為に上半身の力を使います。

ペダルを踏み込む為の脚力の起点となる骨盤を安定させる為に、体幹部の筋力を使い、その体幹部を安定させる為に上肢(肩甲骨から腕)を使います。
 
先ほどお話ししたケイデンスの上昇時に身体を安定させる為に使っていた筋力は、グリップ~肩~頚部~頭部を安定させる為の筋力でした。しかし大切なのはグリップ~肩~体幹部~骨盤の安定です。
 
お気づきになりましたか??
 
身体を支える為に上腕二頭筋・三角筋・僧帽筋上部繊維を使って身体を安定させる方法は、体幹部を安定させる事には繋がらず、左右の重心移動に遅れを生じさせ、ペダルを踏みきった(下死点を越えた)側からの抜重を遅れさせてしまっているのです。
 
しかし残念ながらグリップ~体幹部を繋ぐ筋力は相当意識してトレーニングしなければ、ダンシングポジションで安定した脚力をを発揮するだけのスタビリティーを発揮する事は出来ません。つまり中速域での加速力を強化するためには、このポイントの筋力強化、及び動作の習得が非常に大切になって来ます。
 
スタンディングスタートは遅くないのに後半のスピードの乗りが良くない人、ハロンのタイムが出ない人は自分に思い当たることがないか1度確かめて見てください。特にこれから競輪学校を受験しようと考えている人には重要なポイントですね。少しでも参考になればと思います。
 
画像は全日本学生選手権個人パーシュートのスタートシーンから。タイムトライアル系の種目で最も重要視している中間速度域の加速ポイント。


画像① ダンシング状態でもしっかりと重心をペダルの上に保ちスタビリティーが保たれています。


画像② ハンドルセッティングが出ていないこともあり、やや僧帽筋上部繊維・三角筋に力みが入り肩が体幹部から浮き上がってしまいスタビリティーが落ちてしまっています。

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