宮澤崇史「2013ツールド東北」

Posted on: 2013.11.08

ツールド東北を走り切って、今は感無量です。

初めてこのお話を伺った時、このイベントは絶対成功させたい!と感じました。
東北の震災時 私はイタリアに居て現地の人とはとても遠い存在で、ニュースはインターネットやTVを通してしか知り得ませんでした。
初めて石巻市、南三陸を訪れた時なにも声を出せないままこの地を走りました。
被災地の爪痕を見る度に唾を飲み込み、ガレキの間を抜けて走りながらコース設定をしました。

ただ走るのではなく、この地の美味しい食べ物を食べて この地に少しでもお金を落とし帰って欲しい。そう思いました。

朝靄の中会場へ向かい、ツールド東北がスタート。
朝が早かった為、朝ご飯を食べそびれてしまい、第1エイドステーションで朝ご飯を食べました。
ここではツミレ汁が待っていました。「美味しい!」とみんなの笑みがこぼれ、冷えた体を温めてくれました。

さぁ、前半はアップダウンが激しい区間、自分のペースで木の間から見える海を眺めながら走ります。

20km走ると第2エイド。
第2エイドステーションはホタテの鉄板焼き。

採れたてのホタテは地元のおばさんが、その場で殻を開けて鉄板へ。立ち上る湯気と磯の香りが食欲をそそります。

表面は香ばしく中はレア、あまりにも美味しくてびっくり。
かなり評判も良かったようです。

さぁ走ります。
この辺りから沿道の応援が増えていく事を感じました。
おじいちゃん、おばあちゃんが椅子を置いて座りながら一人一人にエールを送っている姿。
仮設住宅から出て来て応援してくれる家族連れのみんな。
地元建設現場で働いているお兄さん達。
私達も自然と笑顔が溢れます。

第3エイドステーションはホットドック。
みんなでワイワイ食べました。

ここはグランフォンドとメディオフォンドの分れ目。

メディオフォンド側は牡蠣蕎麦と海鮮の炊き込みおにぎりだったそうだ。 ん~ん、両方たべた~い!!!

そんな気持ちとは裏腹に、けっこうお腹がイッパイです(笑)

4エイドステーション
ここではまず、疲れた身体にほっと温まる牡蠣汁を!

そして海鮮カツカレー!え?海鮮なのにカツカレー?そうなんです。地元の牡蠣、ホタテ、イカなど新鮮な海鮮がゴロゴロ入ったカレーにメカジキのカツ!

「たくさん走るんだからたくさんお食べ!」の気持ちが伝わって、何だかすっごく嬉しかったです。

さぁコースも折り返し地点。まだまだ走るよ!と気合いを入れて再出発。為末大さんと一緒に走り始めました。 陸上の事、スポーツ全体の事、自転車界の事、いろいろとお話する中で為末さんの考えに触れ、とても楽しく40kmほどご一緒させていただきました。

途中、地元ホテルが作ってくれた休憩所で、フカヒレスープを用意してくれていました。しかし、私達がついたその時にはもう売り切れていました。残念!来年リベンジですね!食べ物の悔しさは忘れませんから~!!

さて、最終エイドステーションへ。
ここまで140kmを走破して来て、足もちょっと棒になりかけてます。
自分でマッサージしながら走ってるくらいですから(笑)
ここではアワビ入り茶碗蒸しを用意してくれてました。これが甘い、
作っているお母さんに「皆さんが食べてる茶碗蒸しは甘く無いのですか?この辺の人達は甘く無いと食べないですよ!」と言われ、びっくり。

実際振る舞われていた茶碗蒸しはプリンくらいの甘さがありましたが、もっともっと甘い茶碗蒸しを食べるそうです。こういうその土地ならではの食文化に触れることも嬉しい事です。

さぁ、ラストスパート。
最後は大川小学校を通り、ゴールの石巻市を目指します。
大川小学校を始め、横倒しのままの建物、仮設住宅の前や 海まで続く更地をしっかり見て、亡くなられた方、ご遺族の方、今尚不自由な生活や悲しみを強いられてる被災地の方々の気持ちを噛みしめながら走ります。

笑顔溢れる笑みの裏で みんな様々な想いを持ち走り続けたと思います。
被災地を走る、という事の大きな意味がここにあります。

今日1日、我々が見た現状、人々の笑顔、声援、全てが宝物のように思える時間でした。
そして、最後の最後まで道路の標識を持って待っていてくれるボランティアの方達の笑顔、すばらしい大会だな~。とおもいながらゴールのある専修大学へ帰ってきました。

最終コーナーを抜けると多くの方が待っていてくれて、一緒に走り切ったライダー達と最高の笑顔でゴールラインを切れました。

この大会を運営してくれたヤフー宮坂社長、地元で復興ベースを中心に企画してくださった須永さんとスタッフの皆さん、本当にお疲れさまでした。
我々がこの地を走る事に賛同頂いた全ての方々にお礼の気持ちと、まだまだ続く被災地復興にみんなで目を向け、少しでも力になり続けていきたい気持ちでいっぱいです。
そして、将来的にはUCIレースをここ東北で開催出来る事を心から願ってます!
イベント後の打ち上げで新たな提案もできたので、是非実現させたいと願っています。

また来年、みんなで叫びましょう!
「ツールド!東北~~~!!」

AUTHOR PROFILE

宮澤 崇史 みやざわ たかし/1978年生まれ。イタリア在住自転車プロロードレーサー。高校生でシクロクロス世界選手権に出場、卒業後イタリアのチームに所属。しかし2001年、母に肝臓の一部を生体移植で提供し手術のハンディもあり戦力外通告を受ける。再びアマチュア選手としてフランスで活動し実績を重ね 2007年アジアチャンピオン、2008年北京オリンピック出場、2010年全日本チャンピオンになる。2012・2013年はカテゴリの最も高いUCIプロチームに所属。2014年のジャパンカップで現役を引退。 筆者の公式ブログはこちら

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