橋川健「日本人選手たちが問われる積極性について」

Posted on: 2015.06.01

Tour de Kumano has finished. Foremer Team Eurasia’s riders Yoshioka had been on break with stage winner Rabou Thomas, and Suzuki had finished 3rd on stage!! Good Job!!


写真は2014年ツールドナミュール参戦時。右から3番目のJamesは現在CCT p/b ChampionSystemで活躍中。右端が吉岡、右から4番目が鈴木。

ツールド熊野が終わった。キナンで走っていたのでこの土地に対する思い入れが沢山ある。現役だった頃はこのレースに対しては良い思いではあまり無いけれど(「結果が出なかった=悪い思いで」となるパターンです)・・・・

澄んだ清流、空気、ローカル感がいっぱいのスーパー、あたたかくもてなしてくれる地元の人々・・・もちろん角口会長の音頭で集まった大会関係者の方々の存在も大きい。

今年立ち上がったキナンは1年目のチームとして存在感を示す事ができたし、中根(愛三工業レーシング)、吉岡(那須ブラーゼン)、鈴木(那須ブラーゼン)達のユーラシア出身の選手達の奮闘もワクワクさせてくれた。

ロードレースに於ける日本人選手の積極性について問われる記事を目にする事があるけれど、これは選手にいくら「積極的に走れ!」と言っても無駄。

理に叶った「積極性」を必要とするコースと展開が必要だし(コースの設定=主催者)、きちんと評価できるメディア(提灯記事ばかりではなく良い事、悪い事様々な意見が交わされるべき)、必要性を語れるゼネラルマネージャー、スポンサー(積極的に動き、結果が出ない選手への評価)、そして一番大事なのはファン(常に肯定して応援するファンも必要だし、きちんと是非を問えるファンも必要。大会主催者も、スポンサーもGMもファンの声は無視できない)がいなければ「積極的に走る理由が無い」。

これは僕の考え方だけど、TOJなどのレベルの高いレースで若い選手が「積極策」をとってリタイヤに終わってしまうのなら、僕はツキイチでも完走を目指すべきだと思う。

では仮に徳田鍛造や小石が参加していたなら、間違いなく積極策を取らせていたと思う。彼らはそれなりの成績とキャリアを残しているし、失敗したとしても乗り切れるだけの実力を備えている。

今のTOJはイチかバチかで何とかなる選手のレベル、コースではない。「ツキイチなんて意味が無い」と評されるのであれば、そもそも「参加に値する選手なのか?」を主催者+チーム共に再考する必要がある。僕はツキイチだったとしてもその選手の実力、レベルを計る上で完走する事はとても有意義な事だと思う。

若手を育成する観点から主観的に言えば、海外選手と日本人選手を走らせて「ロードレース」を行い、若手を積極的に走らせたいのであればコースを再考する必要があると思う。また2.1カテゴリーである必要は無いと思う。

そこを選手に「若い選手は積極的に走れ!」と言うのは、言われる選手が可哀想である・・・

ツールド熊野は3日間を通してスピード、集団の位置取り、ヒルクライム、様々な要素を必要とする、言い方を変えれば苦手な要素があっても他で補う事のできる、国際イベントに相応しいステージレースだ。

第3ステージでは今年から那須ブラーゼンで走っている吉岡が「勝ち逃げ」に加わった。結果的にはラスト2周で千切れ、集団からも遅れてしまい完走できなかったが(恐らく一般的なUCIルールで行われていたのなら、タイムアウトになる事は無かったと推測する。)、とても良いレースができていたと思う。

ラボウからは下りで遅れたのだろうか?何れにせよ力不足だね。もっと強くなって次は最後まで逃げ切って欲しい。そして3位に入った鈴木もオメデトウ!

AUTHOR PROFILE

橋川健 はしかわ けん
/1970年5月8日生まれ。千葉県出身。
 20歳で全日本アマチュア選手権で2位に入賞。その後、渡欧しベルギーのクラブチーム”G.S.Kotrijk”に所属。翌年にクラシックレースで海外初優勝。1995年にトニステイナーと契約しプロレーサーとして欧州で本格活動。1999年以降、国内に戻りブリヂストンアンカー、マトリックスパワータグで活躍し、全日本プロフェッショナル選手権優勝、ツールド北海道総合優勝するなどの成績を残す。2010年には若手育成チーム、チームユーラシアの監督を務め、シクロクロス日本王者、竹之内悠などの実力者を輩出。2015年よりニュージーランド籍のコンチネンタルチーム「チャンピオンシステム」の監督を就任。 ■Champion System Conti Cycling Team ■チャンピオンシステム

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