栗村修「アヴィニョンプロジェクト」

Posted on: 2014.01.28

以前から噂されている自転車ロードレースのプロリーグ構想に 『World Series Cycling』 と呼ばれているものがあります。

これらは、例えば、サッカーのプレミアリーグや、テニスのATPツアー、モータースポーツのF1、バスケットボールのNBAなど、リーグが核となる形でフランチャイズビジネスを展開し、それまでの構造を改善しながらビジネス的価値を高めてきた他のプロスポーツをお手本とする、自転車ロードレース界の 『新リーグ構想』 として注目されていました(UCIの新会長クックソンはUCIの存在意義が薄れるためかあまり乗り気ではないコメントを残してましたが…)。

また、現在水面下では、ワールドツアーの13チームが集まるカタチで 『Project Avignon』 と呼ばれる非公式会合が開催されているという情報もあります。

その13チームは以下の通り。

Belkin
BMC
Cannondale
Garmin-Sharp
Lampre-Merida
Lotto Belisol
Movistar
Omega Pharma-Quick Step
Orica-GreenEdge
Giant-Shimano
Team Sky
Tinkoff-Saxo
Trek Factory Racing

この構想には 『放映権の分配』 という要素が含まれているため、当然上記チームはツール・ド・フランスの主催者であるA.S.O.に対しても、放映権料の一部を均等分配するよう要求するのはほぼ間違いないとされています。

その影響なのか、フランス系のチームはこのプロジェクトには直接関与していない(A.S.O.と喧嘩したくない?)ともいわれています。

ちなみに非参加チームは以下の通り。

Ag2r-La Mondiale
Astana
FDJ.fr
Europcar
Katusha

現状、チーム間で若干の温度差はあるにしろ、自転車ロードレース界が新しいビジネスモデルを模索しているのは確実な状況です。

過激な発言でお馴染みのティンコフ氏は、『A.S.O.が放映権の分配に応じないなら出場ボイコットもあり得る』 的なコメントを残したとも報じられていますが、実際チーム側の価値はそれほど大きくはないので、『喧嘩売るなら出なくていいです。コンタドールがいてもいなくてもツールの価値は変わりません。』 とA.S.O.側に軽くかわされてしまう様な気もします…

ただ、どちらにしてもこれまで(現在も)ビジネス的アプローチが脆弱だったロードレース界が内部から変わろうとしているのはとても良いことだと思うので、今後もこれらの動きに注目していきたいところです。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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