栗村修「スリップストリーム」

Posted on: 2015.08.11

キャノンデール・ガーミンに所属するトム・ダニエルソンが、自身のTwitterに於いて『7月9日に行われた競技外検査においてテストステロンの陽性反応(Aサンプル)』が出たことを公表しました。

『ランス・アームストロング アフェア』に於ける証言者の一人だったダニエルソンは、自身もUSP時代に禁止薬物を使用していたことをUSADAに対して告白し、その結果、6ヶ月の出場停止処分を受けた過去を持っています。

一般的に考えれば、色々と苦しんできたダニエルソンが、このタイミングでテストステロンを含む物質を意図的に摂る可能性というのは、あまり高くないとみるのが多数意見となるのでしょうか?

但し、理由がどうであれ、テストステロンの陽性反応が出てしまった以上は、Bサンプルの再検査を要請するかは別として、この判定がいずれ正式に確定すれば、ダニエルソン自身のみならず、『スリップストリーム』というある意味でアンチ・ドーピングを象徴するようなチームの未来にも大きな影響がでるのは必至だと思われます。

奇しくも、前回のエントリーでUCIの新ルール(12ヶ月以内に複数のドーピング違反者を出したチームに対する制裁ルール)について触れたばかりですが、その直後にまさかのキャノンデール・ガーミンから、それもダニエルソンから陽性反応が出たというニュースには正直驚きました。

前回のエントリーで取り上げたイタリア人たちの陽性反応のニュースに比べれると、まだ、汚染された物質を摂った影響での陽性反応という可能性が残されているものの、ダニエルソンが所属している『スリップストリーム』というチームの哲学的には、理由がどうであれ、全ての責任をとる形で『チームの解散』という究極の選択を彼ら自身が選ぶ可能性はゼロではありません。

チームから、明らかな能力向上薬の使用者が続出しても、ノラリクラリと名前を変え、登録を変え、何もなかったようにビッグレースに出場して金儲けを続けているチームがある一方で、『スリップストリーム』という正しい信念を持ったチームが今後決断するかもしれない『ケジメ』に対して、色々な意味で注目したいと思います。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

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