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砂田弓弦「全日本ロードを見て」

Posted on: 2010.08.01
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 先日、広島での全日本選手権ロードレースに行って来ました。当日は新城選手の参加もあり、昔とは比較にならないくらいの観客が来たことをうれしく思いました。昨年と比べても、かなり多かったようです。
 初日には強い雨が降りましたが、関係者のみなさんの尽力で、無事大会が終わりました。

 一方、本場ヨーロッパのレースをこれまで見て来た私には、いくつかの点で疑問が残るところも見受けられました。まず、この大会要項にはこう書かれています。

「今年9月にオーストラリア・メルボルンで開催される世界選手権と、12月に中国・広州で開催される第16回アジア競技大会ロード日本代表候補選手の選考対象レースになっております」

 この全日本選手権は6月です。この大会でいい成績を取った選手が9月の世界選や12月のアジア大会で良い成績が出せるかどうかは大きな疑問です。力の問題ではなく、人間のコンディションや、長いシーズンの中でのモチベーションの問題です。
 さらにロードレースでは上りを得意とする選手、スプリントを得意とする選手など、タイプが分かれます。全日本のコースで勝った者が、世界選やアジア大会のコースを得意とするとは限りません。
 このように、一見公平そうに見える大会要項には、現代の自転車競技とほど遠い言葉が並んでいるのです。それは今に始まったことではなく、もうずっと昔からです。

 もっとも強化の環境が整っている国の一つ、イタリアの例を挙げましょう。世界選手権は五輪の選手選抜は、技術委員と呼ばれる一人に一任されます。そしてそれぞれの大会直前に選手が発表されます。プロ選手が非常に多い国ですから、代表発表直後のメディアからはどうしても批判が出ますが、決定が覆ることは絶対にありません。技術委員は年間を通してレースを観察した上、世界選や五輪のコースを下見し、十分に検討してから決めるのです。そしてそれは誰の意見にも左右されない確固たるものなのです。
 もちろん、イタリアと日本との間には、埋めがたいような環境や文化の差、競技レベル違いがあります。
 しかし、日本は少なくとも何十年も前から同じようなことをずっとやっているわけで、こうしたことが問題にされないのが問題なわけです。
 また、今年もチームカーが走る姿が見られませんでした。ロードレースは選手とクルマによって成り立つものです。国でいちばん強い選手を決めるレースで、選手をサポートするチームのクルマが走らないという姿は、少なくともヨーロッパでは考えられないことなのです。
 仮に、この大会でもっとも注目を集めた新城選手がパンクでレースを失ってしまっていたならば、いったいどのような反応があったのか、考えるだけでも恐ろしくなって来ます。
 ロードレースにはあってはならないことが、あいかわらず日本では当たり前であり、だれもこれを改善しようとしないことが残念でなりません。もしクルマを走らせることが危険な道であれば、それはロードレースができないコースと言わざる得ないのです。

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END

砂田弓弦(すなだ・ゆづる)/1961年富山市生まれ。法政大学卒業後、イタリアに渡り、フォトグラファーとなる。現在は日本とイタリアの間を頻繁に行き来しており、ミラノにオフィスを構えて、自転車競技を中心に撮影をしている。その作品はイタリア、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリア、日本をはじめとする多くの国のメディアに掲載されているほか、内外の広告の分野でも定評を得ている。
http://www.yuzurusunada.com

AUTHOR PROFILE

砂田弓弦 すなだ・ゆづる/1961年富山市生まれ。法政大学卒業後、イタリアに渡り、フォトグラファーとなる。現在は日本とイタリアの間を頻繁に行き来しており、ミラノにオフィスを構えて、自転車競技を中心に撮影をしている。その作品はイタリア、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリア、日本をはじめとする多くの国のメディアに掲載されているほか、内外の広告の分野でも定評を得ている。

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