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砂田弓弦「ジャージの着方とプロ意識」

Posted on: 2010.08.01
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 ロードレースにおいて、世界の一流プロチームの平均的な年間運営費は、だいたい12億円から15億円くらいではないかと思います。その費用を出すのがチームのスポンサーです。選手が着ているジャージにはスポンサーのロゴが入っていますが、支払っている額によってロゴの位置や大きさが変わります。
 選手たちが走ることにより、スポンサーになっている企業のイメージが一般社会に浸透していくのです。選手たちはレースではもちろん、普段の練習でもこうしたジャージを必ず着用します。

 極端な例になるのですが、イタリアの話をしましょう。サッカーのワールドカップ同様に、自転車の世界選手権は各プロチームから選び抜かれた選手が集まります。イタリアの場合はとりわけレベルが高く、しかもメディアからの注目度も格段に高いので、選手に選ばれることは大変な名誉となります。
 しかし、彼らの普段の収入というのは所属チームからの給与なので、スポンサーへの気配りは大変大きく、世界選手権の練習でも普段所属するプロチームのものを着たがるのです。
 さすがにこうした状況をイタリア車連も黙って見ているわけには行きませんから、世界選で現地入りをした選手に練習のときにもナショナルチームのウエアを着るように強制したのです。そして初めて選抜選手全員がナショナルチームのウエアを着て練習したのは、今からつい数年前のことです。選手たちのプロ意識を示す良い例だと思います。

 また、選手の自宅やホテルなどで写真を撮るときにも、スポンサーのものをちゃんと写す、あるいはスポンサーではないもの(たとえば乗っているクルマなど)は写さないで欲しい、などといった要求もあります。

 僕自身、プロレースの世界に20年以上身を置いて生活しているわけですが、こうしたことがすっかり身に付いてしまったせいか、普段自分が着る服もメーカーのロゴが入ったものは着ないような習慣ができています。ロゴが入った服を着るのであれば、その会社からお金をもらわなくてはならないと思っているほどです。

 今、僕はスペイン一周レース、ブエルタ・ア・エスパーニャに来ています。今年はオランダがスタートなので、本来天気がよいはずのブエルタも初日から北ヨーロッパ特有のにわか雨に見舞われました。
 今回、帽子を忘れたため、雨にそなえて某チームからもらいました。案の定、ベテランカメラマンから「そんなチームのものを身につけて恥ずかしくないのか」とからかわれました。そうなることは覚悟の上でしたが。

 日本には競輪選手が数千人いますが、練習で海外のプロチームのものを着て走っている姿をよくみかけます。競輪選手たちがプロと称するならば、そんなものを着て走ってはいけません。読売ジャイアンツの選手たちが、かっこいいからといってニューヨークヤンキースのユニホームを着て練習するでしょうか?

 数年前の話ですが、ヨーロッパで向こうの選手から「面白いものを見せてやる」といって、呼び止められました。そこになぜか日本の競輪カレンダーがあったのですが、ヨーロッパのプロチームのジャージを着た日本の競輪選手の写真が満載だったのです。これなど、プロレースの世界であり得ないことで、恥ずかしい思いをしました。

 ヨーロッパでロードレースは大きな人気を誇ります。その理由の一つは、やはりプロ選手たちに憧れる人が多いからです。
 日本で競輪がこの先、これまで以上の人気を得ようとするならば、やはり選手たちに世間一般の人が憧れるようなかっこよさが求められます。そのときにも、こうしたプロ意識ということが欠かせなくなってくると思うのです。

END

砂田弓弦(すなだ・ゆづる)/1961年富山市生まれ。法政大学卒業後、イタリアに渡り、フォトグラファーとなる。現在は日本とイタリアの間を頻繁に行き来しており、ミラノにオフィスを構えて、自転車競技を中心に撮影をしている。その作品はイタリア、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリア、日本をはじめとする多くの国のメディアに掲載されているほか、内外の広告の分野でも定評を得ている。
http://www.yuzurusunada.com

AUTHOR PROFILE

砂田弓弦 すなだ・ゆづる/1961年富山市生まれ。法政大学卒業後、イタリアに渡り、フォトグラファーとなる。現在は日本とイタリアの間を頻繁に行き来しており、ミラノにオフィスを構えて、自転車競技を中心に撮影をしている。その作品はイタリア、フランス、イギリス、アメリカ、オーストラリア、日本をはじめとする多くの国のメディアに掲載されているほか、内外の広告の分野でも定評を得ている。

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