腰山雅大「自転車競技と肩鎖関節脱臼」

Posted on: 2016.07.12

3年半前に左肩を脱臼=「肩鎖関節脱臼」を経験し、あえて手術をしない選択をしてから今日に至るまでの備忘録を書いておきたいと思います。自転車競技者としての事例も。

“肩鎖関節”は鎖骨と肩の骨を繋いでる関節のことで、3つの靭帯で繋がっています。重いものを引き上げたり、関節の位置を正常に保ったりしているそうです。いわゆる脱臼と違って、靭帯が幾分か切断されて関節の位置がズレる状態のことを指します。

僕の場合、スノーボードで肩から落下し3つ全てを切ってしまいました。小さいジャンプで体勢を崩し、硬い雪に落下。「バイーーン」という音と共に凄い衝撃が加わり、何が起こったのか把握しようにも「頭の上を星が飛ぶ」状態になってですね。

1時間くらいで落ち着いたものの、その後凄まじい痛みがやってきて、この痛みは結局5日間ほど続きました。レントゲンを撮る時に肩動かすのですが、本当に涙が自然と出る痛みでした。

僕が最初お世話になった病院は柔道の選手が良く訪問するらしく、「肩鎖関節脱臼=即手術」という見解だったんですが、周りの仲間に聞くと賛否両論で、手術しない選択肢があることを知りました。

手術をするメリット:正常に近い状態に戻せる
手術をするデメリット:完治までの期間が伸びる、手術費用、手術休業、手術による体への負担

手術を好きこのんでする人なんておらず、可能ならば避けたい。セカンドオピニオンを求め、自転車競技選手の集まる病院へ駆け込みました。

レントゲンと現状の可動域を確認し、先生の出した結論は「このままでも良い」という見解。その時はBMXだけが僕の競技種目だったんですが、それも2ヶ月ほどでゆっくり始めて様子を見て良いとのことでした。

何より僕を安心させてくれたのは、学術で【肩鎖関節脱臼を即手術しても、数年経過してから手術しても、治癒に関する差は見られない】というモノがあるらしく、あとで不具合が出て手術しても良いという プランBがあったこと。

実際1週間ほどで痛みは引き、普通に洋服を着たり出来るようになり、1ヶ月でそこそこ重い荷物を持ち運びが可能になり、2ヶ月後にはBMXに跨っていました。

今となっては恥ずかしい話、肩鎖関節脱臼がどのくらい重度な怪我か分からず「僕は一生BMXに乗れないかも・・・」と不安に苛まれ、故に自由にパークを走り回れた時はものすごく感動したことを覚えています。(結局これを機に身体を鍛えることに目覚め、ローラー台から始まり、シクロクロス、ロードと今に至るわけです。なんだったら怪我して良かったかもと少し思っています)

で、実際手術をしなかったメリットデメリットはどうだったんでしょうか。

手術をしなかったメリット:2ヶ月で自転車競技を再開、費用、日が経てば肩の違和感も殆ど無い
手術をしなかったデメリット:重いモノを長時間持てない(輪行に非常に苦労する)、気圧の変化で肩に違和感、肩が凝りやすい

もう少し自転車競技に特化したデメリットを書いてみたいと思います。

<BMXパーク>:基本的には違和感なし、唯一バックフリップ時の引き上げで痛みあり。縦回転系を好むなら手術した方がいいと思う。
<シクロクロス>:基本的に違和感なし、スタンディングを要する長い下りで肩にダルさがあり。その状態で階段をランすると痛い。
<ロード>:違和感なし。長いダンシングでわざと肩を振ると少し違和感があるかも?(そんなことするのコンタドールくらいか・・・)
<ランニング>:気圧によって結構キシむような痛みを伴うことがある(但しこれは怪我をしていない反対側の肩にも稀に感じるので、全てが肩鎖関節に伴う事由とは思えない)

色んな競技をやっていて、こうやって羅列出来るのはいいもんです。BMXで大概問題無いし他の競技でも大丈夫だろうと思っていたんですが、少し負荷が違うとダメみたいです。たぶん大きい衝撃に対してはそんなに負荷かからないのですが、細かい振動が断続的に伝わるのは辛そうです。

・・・鎖骨の骨折など、手術をした方が早く回復しメリットが大きい怪我も多いです。が、放置して症状と付き合う、という怪我にしては風変わりなこの肩鎖関節脱臼。

今更に備忘録を書いているのは、僕が怪我をした当時同じ経験をした先輩方に相談させていただき、その内容が非常に参考になったから。全てが他の人に当てはまるとは思いませんが、少しでも治療の判断材料になれば幸いです。

AUTHOR PROFILE

腰山雅大 こしやま まさひろ/1986年4月10日生まれ。兵庫県出身。 '00年、BMXと出会う。競技を続ける傍ら、BMX専門誌への寄稿、コンテストでのジャッジ、MC、競技大会の主催など、マルチに活動をする。'14年にシクロクロスを始める。変速機のないシングルスピードの車両(SSCX)で参戦を続け、現在カテゴリー1を走る。'15年からアメリカ、ミネアポリスの自転車ブランド “All-City Cycles” のライダーとして活動をする。趣味はコーヒー。 ◆筆者の公式ブログはこちら ◆筆者のInstagramはこちら

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