腰山雅大「All-City Cycles “Electric Queen” インプレッション」
さて、All-City Cycles Electric Queenを、ローカルのトレイルで走らせてきました。ちょうどこの週は全国的な寒波で、普段雪の降らない僕の地元ですら吹雪いていました。当然標高の高い山の中には雪が沢山残っていて、贅沢にもスノーライドを満喫することが出来ました。プラス規格のタイヤにはうってつけのコンディションとも言えます。(ちなみにFは1.0bar/Rは0.9bar)
いつもの馴染みのアプローチをジワジワ登り、トレイルヘッドまで。驚くほどのリヤ荷重で、舗装路ですら若干ハンドルをフラつかせながら、良いポジションを探ります。いつもの乗り物とは随分異なることを思い知らされます。
完成車に組み込まれているSRAM GXの変速は快適そのもので、無駄にシフトしながら山頂まで向かいます。道中、それなりに登りの段差があるんですが、いつもだと乗れない箇所も余裕でトラクションが掛かる。ギアがあるからというのもあるんですが、あまり軽すぎてもフロントが抑えられないので、適度なギア比でジワジワ掛けつつ乗車率を更新していきました。下りをメインに考えていたのでサドル低めにしたのですが、このあたり今後ドロッパーポストで解決出来そうですね。ワイヤーを内側から通すラインも用意されているので、取り付けが楽しみです。
登りを楽しんだあとは比較的フラットなシングルトラック。予想通り縦の動きに余裕があり、ちょっとしたバンクでジャンプしてみたり、ラインを外して側壁を走ってみたり、、、タイヤなのかサスなのか、かなり横柄に扱ってもほぼギャップなど去なしてくれることを徐々に理解していきます。
但しプラス規格のこのタイヤについてはかなり特性が異なる印象を受けました。通常MTBのコーナリングというと、トレッドの角を路面に突き刺して曲がっていく印象があります。ですが、このサイズのタイヤになると突き刺せるほどのトレッドも無ければ、空気圧のせいかどの辺が角に当たるのか、振動に寄る情報が凄く少ないです。どちらかと言うとタイヤそのものの面圧でグッとトラクションを掛けて、それこそシクロクロスのような感覚でコーナーをクリアする方が適しているように感じました。
これはデメリットなのか、それとも慣れなのか判別難しいですが、プラスの恩恵を受けるべく空気圧を下げれば下げる程乗り方は変わっていくはずです。
その分直進安定性は抜群で、それは長く続く下りで大いに発揮されました。とにかくハンドルのフラつきが少なく、どのタイミングからでも狙ったラインにタイヤを運ぶことが出来ました。合わせて角度のついたフロントフォークはかなりのギャップもモノともせずタイヤを転がせるし、結果乗り手に心理的&身体的な余裕を持たせてくれます。
正直、マシンがハイスペックになって速度域が上がってしまうのは、転けた時のリスクを度外視している感じがしてあまり良い気がしていませんでした。ある時下りで置いてけぼりを食らっても、それこそLogLadyのリジッド・SS・XCジオメタリが怖がりの僕には合っているなぁと、言い聞かせていました。
ですが、Electric Queenはそういう話でも無さそうです。結果的に下りのスピードは上がったのですが、それでも身体全体には次のアクションを取る余裕が常に確保されていますし、スピードが遅くてもギリギリで身体を硬直させながら下るのとは全く別物です。出そうと思えばもっとスピードも出せますが、ある程度の余裕を残しながら充分心地いい速度域でトレイルライディングを楽しむことが出来る新しいMTBと言えます。
冒頭「トレイルで走らせる」という言葉は、乗り手と乗り物が分かれている感覚を表しています。後ろ乗りで全体を見ながら操るという感覚を連想させましたが、これこそがElectric Queenのアイデンティティではないかと思います。
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