腰山雅大「全日本自転車競技選手権大会シクロクロス SSCX優勝」

Posted on: 2021.12.15

2021年12月11日、茨城県土浦市で開催されたシクロクロス全日本選手権に参加してきました。例年の通り、SSCXと男子エリートに両方エントリーし、土曜開催のSSCXでは悲願の優勝を果たしました。

浮かれモードですが、覚えているうちにレースの展開を記しておきたいと思います。

まずコースは、高低差”3m”と過去ないくらい平坦なものでした。10秒以内の直線と、スピードに乗るコーナーが多いので一度遅れると取り返しがつきにくい印象。そこに若干の泥区間とキャンバー登り返し区間のミスを誘発させる箇所が2つあるようなレイアウトという感じ。


Photo:@h1I2070

① スタート → 直線 → 直線
② 芝区間コーナー群
③ 泥区間
④ 舗装路直線 → 高速キャンバー
⑤ キャンバー登り返し → ① に戻る

金曜に現地入りして、コースウォークで入念に路面チェック。気づきにくい凹凸がないか確認して、土曜の朝試走です。気をつけて走るところは③泥と⑤キャンバーくらいしかありませんが、ひとまずレースの進め方をイメージします。

おそらく野辺山で対峙したヒロムくんや、過去2回全日本を獲っているCOGS牧野さんらと最後までパック展開するのではないか。シンプルな脚力だけでいえば明らかにお二人の方が上、これは覆らない。

逆に自分の脚質はといえば休める区間さえあれば高い出力を複数回出せる。これは関西のレースを分析して理解していました。なので自分に勝運があるとするなら、ペースを維持せず率先して先頭に出てインターバルを繰り返すのみ(逆に速度の乗るコーナー区間はペース下げてきっちり休む)

ホールショットはミスがなければ獲れる自信があったので、最初から最後まで後ろを翻弄する走りに徹しようと。ギア比はいつもより重めの38Tx18T。直線の最高速度よりも、少しでもインターバルを力強く掛けられるように。


Photo : Kei Takada

2日間開催の全日本選手権の開幕戦として9時30分定刻通りスタート。クリートもはまってホールショット。後ろに申し訳ないですが、直後の砂区間はギリギリまで減速して舗装路〜芝区間でスプリント。

シケインを越え、この時点でついてきたのはヒロムくんだけだったようです。コーナーではきっちり休むので、視界も頭も冴えていていい感じ。直線毎思いっきり踏んで攻めの走りに徹します。


Photo : Satoshi Oda

周回を重ねるごとに3位以下パックは離れていくので、ミスがなければこのままヒロムくんと勝負すれば良さそう。

毎回毎回立ち上がりで踏み込みますが、ちょっと遅れてもすぐ戻してくる彼。唯一、泥区間は自分の方が上手で、そこで2秒くらいギャップが開く展開。

最終周回、彼がこの区間を先行したいのは間違いなさそうだったので、意地でもインを締めますが気が緩んだところで先手を取られてしまいます。


Photo : Kei Takada

残すは③泥、④直線、⑤キャンバー。人の後ろ走るのも慣れっこなので、冷静に相手のラインを見て追う。泥を抜けて、そのあとで・・・と考えていると、なんでもないところでFタイヤを取られてずっこけてしまいます。

これで3秒差。コケた瞬間、立ち上がって追いかけた瞬間、舗装路に抜けてヒロムくんを追う瞬間「あぁ、またこれかぁ。僕はこういうところ詰めが甘いんだよなぁ、、、、また2位かぁ・・・」と心は折れかけ。

ただ、身体はまだまだ動いてくれそうなので、とにかく脚が動く限り背中を追います。


Photo : Hiroyuki Oyama

こうなることも予想して残しておいた作戦が、もうひとつだけ。⑤キャンバーはずっと乗車で抜けていましたが、実は降りて走った方が速いのです。

勝負が膠着したら最終周回のみ降りると決めていたので、インベタで走り抜けると登り切ったところで完全に彼の背後を捉えました。

おまけにクリートがハマらず焦ってガチャガチャやっているので、冷静に冷静に背後で息を整えます。


Photo : Kei Takada

コース幅が広がったところで一気にまくり、ホームストレート直前で前に出ます。更に踏みやめ、もう一呼吸。舗装路に出た瞬間、持ちうる最後の力を振り絞ってスプリント。

舗装路のオレンジの線だけが視界に映る中、なんとなくヒロムくんを振り切った気がして背後を確認、勝利を確信して気持ちを爆発させました。


Photo : Satoshi Oda


Photo : Satoshi Oda

あー清々しい。

フィニッシュしてみんなに「3秒くらい離されたときは絶対ダメだと思った」と言われましたが、そりゃ僕もそう思いました。ただ今回ばかりは僕の(偏ったところだけ)やたら準備する癖が功を制しました。


Photo:@h1I2070

レース始まる前から自分のことのように応援してくれたskmzlog、36隊の川村誠くんがライブ配信してくれて、その日次の日合わせて「移動中にライブ見てたよ!」とおそらく20名以上の方から声をかけてもらいました。ありがとう。


Photo:@h1I2070

そしてアウェイな場所にも関わらず、こんなに応援してもらえるのか!と驚いてばかりのレースでした。本当にありがとうございます。みなさんのおかげで日本チャンピオンです。その名に恥じぬよう、自分らしい走りを今後ともやっていこうと思います。


Photo : Satoshi Oda

大会名: 全日本自転車競技選手権大会シクロクロス
開催日: 2021年12月11日
開催場所:茨城県土浦市
気温:   7℃
リザルト: 優勝
路面状況: ドライ
使用機材:All-City Cycles “NatureCross ACE”( http://allcitycycles.com )
ギア比: 38 x 18 = 2.111…
タイヤ: Panaracer “CGCX TLC” 33C / F1.6bar R1.6bar
ウェア: WAVEONE “長袖スピードデュアルスーツ”

AUTHOR PROFILE

腰山雅大 こしやま まさひろ/1986年4月10日生まれ。兵庫県出身。 '00年、BMXと出会う。競技を続ける傍ら、BMX専門誌への寄稿、コンテストでのジャッジ、MC、競技大会の主催など、マルチに活動をする。'14年にシクロクロスを始める。変速機のないシングルスピードの車両(SSCX)で参戦を続け、現在カテゴリー1を走る。'15年からアメリカ、ミネアポリスの自転車ブランド “All-City Cycles” のライダーとして活動をする。趣味はコーヒー。 ◆筆者の公式ブログはこちら ◆筆者のInstagramはこちら

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