NIPPOがツール・ド・北海道完全優勝!「ロードレースに楽勝は存在しない」
9月11日から3日間にわたり開催されていたツール・ド・北海道(UCI2.2)は、13日、札幌市モエレ沼公園で、最終第3ステージを迎えた。レースは雨のなかのゴールスプリントとなり、レースリーダーのリカルド・スタッキオッティ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザ)が優勝。またポイント賞リーダーであるダニエーレ・コッリ(イタリア、NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザ)が2位に続いた。スタッキオッティは個人総合時間賞を獲得し、NIPPO・ヴィーニファンティーニが区間全勝で圧勝した。
リカルド・スタッキオッティとダニエーレ・コッリの個人総合成績ワンツーフィニッシュ
第3ステージは、鷹栖町から札幌市まで、大会最長距離となる200kmで競われた。朝から強い雨が降り、気温は14度と寒さを感じるなかでのスタートとなった。
19.5km地点に2級山岳があり、その後は平坦基調というコースプロフィールで、第2ステージを終えて、個人総合成績上位26選手が僅差でつけているため、レースリーダーのスタッキオッティを擁するNIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザが厳しい攻撃にあうことが予想された。

雨の第3ステージ、NIPPOが先頭に立ってメーン集団をコントロール
レースは、序盤の2級山岳で動く。個人総合成績の逆転を狙うブリヂストンアンカーが中心となり、総合上位7選手が先行し、先頭集団を形成。彼らとスタッキオッティとのタイム差はわずか13秒。このまま逃げ切られてしまうと、スタッキオッティはリーダージャージを失うことになる。
しかし、この動きはNIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザにとっては想定内。登坂区間でのアタックに反応せず、下り切ったあとの平坦区間で、ゴールスプリントの展開を期待する他チームとともに追撃する作戦を事前に立てていた。
山本元喜は「登坂でのアタックに反応することで集団のペースが速くなってしまい、登坂が得意ではないスタッキオッティとコッリに負担をかけてしまう。だったら、平坦区間で他チームの動きも利用して追ったほうがいいと考えていた」と、レース後に話した。
7名の先頭集団は加速を続け、一方NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザがコントロールするメーン集団では、コントロールに参加する他チームがなかなか現れず、タイム差は9分台まで広がった。
残り70kmを切って、総合3位につけているチームUKYOがコントロールに参加し始め、それを機に多くのチームが加わっていく。その頃、先頭集団は5名となり、トマ・ルバ(フランス、ブリヂストンアンカー)が単独で先行する場面もあったが、先頭集団での協調体制は緩み、ゴール前10km、5kmと急激にタイム差が縮まっていった。
そして残り3kmで最後まで逃げていたルバを集団が吸収。ゴールスプリントの展開となり、この日もNIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザはゴール前で完璧な連携をみせ、レースリーダーのスタッキオッティが優勝。ポイント賞リーダーのコッリが2着と続いた。
この結果を受けて、スタッキオッティの個人総合優勝。またコッリのポイント賞が確定。チーム総合成績でもNIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザが首位にたった。プロ1年目、2年目の若手選手が主体となったチーム編成ながら、唯一のプロコンチネンタルチームとして格の違いをみせつけた。
第1ステージに次ぐ、ステージ優勝をあげたスタッキオッティ

全レースを終えて、チームメート全員で記念撮影
リカルド・スタッキオッティのコメント
「ツール・ド・北海道は去年も走っていて、とても美しいレースだと知っていた。区間2勝と個人総合優勝という結果が出せて、とてもとても嬉しく思っている。チームワークがあっての結果だった。チームメートや支えてくれているスポンサーの皆さまに感謝したい」
唯一の日本人選手として走った山本元喜は、鹿屋体育大学時代にステージ優勝を挙げた経歴があるが、今大会ではアシストに徹し、チームの好成績を力強く支えた。勝負どころで何度もアタックを繰り返し、チームメートからも他チームからも評価される力走をみせた。今後はチームメートたちと一緒にイタリアへと戻り、シーズン最後までヨーロッパの主要レースに参戦していく予定だ。
山本 元喜のコメント
「初日も2日目も3日目も全部キツかった。今回、チームの力になってこのような結果を出したことは今後に向けて大きな自信につながった。ヨーロッパのレースではキツい思いばかりしていたけど、確実に実力アップにつながっていると実感することができた。逆に強くなりたいなら、キツい経験をしないといけないと思った。この先のシーズンもチームにとって重要なレースが続くので、チームの力になれるように頑張りたいと思う」
大門 宏監督のコメント
「終日、悪天候にさいなまれた。最終日もこれまで以上に厳しいステージだった。終わってみれば全ステージを制覇し、閉会式の会場では『楽勝』との声も聞かれたが、ロードレース競技には“楽勝”という言葉は決して存在しないということを改めて申し上げたい。
近年では昨年の最終ステージでラスト30mでの些細なアクシデントで個人総合のタイトルを逃がしているように、昨日もゴールラインまで決して気が抜けないレースだった。僕も過去、たとえ万全の体制で望んだとしても、散々痛い目に遭っているので、初日からまずはステージで勝つことを最優先に作戦を組むことを心がけた。
総合成績に関しては、ワンアクシデントで全てが引っ繰り返る秒差の接近戦になることは十分予想していたので、悪天候の中、最後まで確信はできなかった。選手5人、それぞれのパワー、クオリティの歯車が素晴らしく噛み合った結果だが、選手全員100パーセント以上の力を結集させて実現できた結果だった。
この大会では常に勝つことが期待されている“使命”を担うチームの監督として、昨日もレースが終わり、喜びよりも先に正直ホッとしたが、これまでで最も若いメンバー構成で摑んだ勝利の価値はこれまで以上だったと感じることができた」
●ツール・ド・北海道 公式サイト
http://www.tour-de-hokkaido.or.jp/
●ツール・ド・北海道 コース概要
第1ステージ 9月11日(金) 188㎞
旭川市(S:春光台公園)〜鷹栖町〜士別市〜名寄市〜東川町(F:キトウシ森林公園前)
第2ステージ 9月12日(土) 162㎞
美瑛町(S:丸山公園前)〜富良野市〜上富良野町〜美瑛町(F:丸山公園前)
第3ステージ 9月13日(日) 200㎞
鷹栖町(S:役場前)〜秩父別町〜当別町〜石狩市〜札幌市(F:モエレ沼公園)
レースから一夜明け、出場した選手たちはイタリアに向けて旅立った。今後は、9月16日の「コッパ・アゴストーニ(UCI1.1)」から続くイタリアのワンデイレース4連戦、そして10月2日からはUCIアジアツアーである「ツアー・オブ・チャイナ(2.1)」に出場する予定。日本国内の次戦は10月18日の「ジャパンカップ サイクルロードレース(UCI1.HC)」となっている。
(情報・写真提供:NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザ)