日本人ロードレーサーの進むべく未来とは?Part1浅田顕が説く代表強化論
オリンピックやツール・ド・フランスといった夢の舞台で日本人が活躍するためには、果たして今、日本自転車界は何をすべきか・・・?永遠の課題とも言えるこの問いに対して答えを出そうと、これまで様々な人が立ち向かってきた。
そうした中、数々の名選手を輩出してきた育成プロフェッショナルに今、日本代表の未来が託されている。
JCF(日本自転車競技連盟)で日本ナショナルチームを導く浅田顕監督(エリート男子・U23担当)。そして若手の育成に尽力する柿木孝之コーチ(エリート女子、ジュニア男女担当)。2人の考える、今日本人選手の進むべき未来について語った。Part1は、浅田監督のインタビューを紹介する。
【以下、浅田監督インタビュー】
■オリンピックの先を見据えた活動しなくてはならない
ーー2016年リオ・オリンピックに向けて、日本人選手強化へのビジョンは?
来年のオリンピックに向けて、今年2015年はポイントを大量に獲らないといけない年なのです。国別ランキングで4位に入らないとオリンピックの出場枠が「ゼロ」になってしまう可能性もあるので、海外遠征も含めて計画的にやっていくことと、国内の各コンチネンタルチームの皆さんにも協力をしてもらって、とにかくポイントを獲れるような活動をしてもらうことですね。
後は、来年のオリンピックも重要ですが、その次の事を考えるともっと先の事をやっていかなければなりません。今までジャパンの代表はジュニアであったり、U23が中心となってやっているんですけど、今年はエリート男子の強いメンバーにも遠征に来てもらって、ヨーロッパのプロのレースにまた再挑戦していきたいと思います。
日本人選手育ての親といわれる名将浅田監督
■狙いは日本ナショナルチームのプロコンチネンタルチーム化
ーーナショナルチームでヨーロッパのレースに参戦するということですか?
引き続き、日本を代表するプロチームが必要な状態なので、こういうチャンスなのでそこに再チャレンジして強い日本のチームを、100%の日本人のチームを作りたいなと思っています。
JCFのロード部門では皆さんに同意をいただいている状態で、お金の面が重要なファクターのひとつなので、しっかりと計画を立てていきたいと思います。また、強い選手に協力してもらい、2020年にはワールドレベルで走れる日本チームがあるぞ。という形ににしていきたいです。
浅田監督のもとトレーニングを行うナショナルチーム(photo by Koichiro SHIIKI)
ヨーロッパ遠征を行うU23世代(photo by Koichiro SHIIKI)
■UCIヨーロッパツアーへの挑戦
ーー今年、ナショナルチームはフランスへの遠征計画はあるのですか?
そうですね。JCFからナショナルチームとしてヨーロッパに拠点を作るという許可が下り、今年から活動が行われることが決まっています。それを軸としてジュニア、U23、エリートを含めてヨーロッパのよりレベルの高いレースで戦っていこうと思っています。
ーー具体的に、現段階(1月18日現在)決まっているスケジュールは?
7月、8月がすごくチャンスなので、以前のエキップアサダで出場していたレース(パリ・コレーズ、ツール・ド・リムザン、シャトールークラシックなど)に出場を交渉したいと思います。
当時以上の成績(2008パリ・コレーズ清水都貴総合優勝、2008ツール・ド・リムザン新城幸也ステージ優勝)を出すのはなかなか難しく、日本の選手が今年勝つことは難しいと思います。しかし、その準備と対外的なアピールとして、日本もこれから世界でやっていくんだという事を海外へ見せられたらと思ってます。
エキップアサダ時代、日本を代表するチームとしてヨーロッパを主戦場に活動していた
■次世代の台頭を願う
ーーエリートでは具体的に誰が行く予定ですか?
日本のトップエリート選手が来てくれると思います。どこのチームも好意的に活動は受け入れてくれていると思います。ただ、プロツアーレベルの選手は難しいでしょう。
例えば新城幸也に関してはプロツアーに準じたチームなので、ヨーロッパでナショナルチームで走るのはなかなか難しいと思います。年齢層でいうと中堅ぐらいの実力のついてきてる選手もいるので、そういう選手を中心に、強化していきたいと思います。
ーー昨年、日本のトップ選手たちがたくさん引退したことについては?
引退した彼らもけして若くはありません。昨年引退した西谷泰治・盛一大(元:愛三工業レーシングチーム)、宮澤崇史(元:VINIファンターニNIPPO)、清水都貴(元:ブリヂストン・アンカーサイクリングチーム)。この4名を除いても、その次の世代の年齢が30歳近くなんですよね。
30歳はベテランの部類ですから、もっと若い選手ですよね。山本元喜(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・デローザ)、寺崎武郎(ブリヂストン・アンカーサイクリングチーム)などの年代が、ぐんと力を伸ばして活躍できるようになって欲しいです。
2014年全日本選手権U23でワンツーフィニッシュを徳田鍛造・優兄弟
今季プロコンチネンタルチームと契約し飛躍を誓う山本元喜
■日本代表という一つのチーム
ーーU23今後の目標は?
U23に関しては継続的な課題なのですが、とにかく世界選手権やネーションズカップなどの世界レベルのU23カテゴリーでトップ10に入ることをまずは最初の目標としてやっています。世界選手権でトップ10に入ることが1番分かり易いことではあるんですが、それに準じたレベルの大会もたくさんあるので、そういった大会でトップ10に入る選手を輩出することが今の課題です。
一人でやることではなく、チームは違っても日本という一つのチームなので、なるべく遠征の機会を増やし、期間もできるだけ伸ばしたいと思います。自分が所属しているチームのメンバーと走るよりも、ナショナルチームで走る機会をどんどん増やして、お互いにレベルを伸ばしていきたいと思います。