パラサイクリング世界選手権 日本代表イタリアへ出発

Posted on: 2011.03.07

11日〜13日にイタリア北東部の街モンティチアリで開催される障害者自転車競技の世界大会「パラサイクリング・トラック世界選手権」。この大会に出場する日本代表選手団が7日、成田空港を出発した。世界トップクラスの実力を持つといわれる日本代表の顔ぶれは、北京パラリンピック金メダリストの石井雅史(38)を筆頭に、前回2009年のイギリス大会・1kmタイムトライアル優勝の藤田征樹(26)、昨年12月のアジアパラリンピック・タンデム(二人乗り視覚障害クラス)で金メダルを獲得した大城竜之(39)とパイロット伊藤保文(38)のペア、昨シーズンからの本格的な国際大会出場で成長を続ける阿部学宏(34)の5名。

世界選手権は、2012年のロンドンパラリンピック出場枠に関して格段に高いポイントが付与される重要な大会。UCI(国際自転車競技連合)のランキングによって既に1枠の出場権を得ている日本男子だが、出場枠のさらなる獲得を目指して、大会では上位を狙っていく。以下は選手たちの出発前のコメント。

●石井雅史(チームスキップ/藤沢市みらい創造財団)
 出場予定種目:C4クラス 1kmTT、4kmTT
「ケガをした後(2009年パラサイクリング・ロード世界選手権で落車、複数箇所骨折などの重傷)、また世界で競技できる状態になったこと、その環境をいただいたことに感謝しながら参加したい。ロンドンへの課題を幾つかでも見つけられれば。チームとしても整ってきたし、やっぱり遊びじゃないなと」

●藤田征樹(チームチェブロ/日立建機)
 出場予定種目:C3クラス 1kmTT、3kmTT
「仕事と競技の両立で厳しい準備期間だったが、練習の成果は出ているので調子は悪くない。クラス編成が変わり(注)、トラックの国際大会は初めて。強化が進んでいるヨーロッパ勢に対して、どれだけ自分が走れるか。今回はロンドンパラのポイント獲得も大切。そこに繋げるためにも、まずは自分のベストを出して走りたい」

●阿部学宏(スペードエース/銚子屋本店)
 出場予定種目:C5クラス 1kmTT、4kmTT
「出来ることはやって来た。大会のレベルは上がってきてると思うが、最低限、自己ベストを更新したい。ライバルは自分ですかね。世界との差はまだまだ大きいですから」

●大城竜之(チームチェブロ/文京盲学校)
 出場予定種目:視覚障害クラス タンデム1kmTT、タンデムスプリント
「先月の合宿で、伊藤さんと息を合わせる練習をして、いい状態になってきている。(アジアパラ金の結果は)意識せず、世界の中でどれくらいの位置にいけるか、気を引き締めて臨みたい。タンデムスプリントは伊藤さんとのペアになって初めて挑戦する。予選の200mFDでしっかり走り、決勝ラウンドに勝ち上がりたい」

●伊藤保文(京都/S級1班競輪選手)
 出場定種目:視覚障害クラス タンデム1kmTT、タンデムスプリント ★パイロット
「こんな経験初めてやから、あまり気負わずにやるしかない。楽しみもあるけど、対戦する強豪国のパイロットには知ってる名前もあったし、どこまで通用するんかなあと。相手がどんだけ強いか分からんし、どういうタイムを出したら戦えるんかも分からんし。でもより高いレベルを目指して行かんと、面白味もないし。行ってからのお楽しみかな。(タンデムスプリントについて)スプリントは、僕自身がやったこと無いんです。現場で見ながら情報を集めて、いま出来ることをやる」

エントリーリストによれば、視覚障害クラスのパイロットには、パベル・ブラン(チェコ)、クレーグ・マクリーン(イギリス)、ホセアントニオ・ビラヌエバ(スペイン)など、世界チャンピオンレベルの有力選手が名を連ねる。その中で、日本代表パイロットに競輪界のトップ選手が出場するのは、実に頼もしいことと言えるだろう。パラサイクリングでは、各種目の競技レベルが急速に上がっており、軽度障害のクラスでは、エリートカテゴリに肉薄するタイムを計測することもしばしばだ。優秀な選手のプロ化が進む欧州各国と違い、日本の選手たちには仕事と競技を両立していかざるを得ない現状がある。しかし同じ競技者として、大会という舞台に立てば、求められていくのはあくまで結果だ。日本代表選手たちの渾身の走りに注目したい。

注)パラサイクリングでは選手の運動機能や運動能力に応じてクラス分けがなされる。2010年には大幅なクラス統合と再編が行われ、世界大会で顔を合わせる対戦相手が変わることになった。

写真上:日本代表選手団(左から 藤田、阿部、石井、大城、伊藤)
写真下:自転車など5名分の機材

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