ロンドンパラリンピック トラック競技日程終了
9月2日、ロンドンパラリンピックの自転車トラック競技は4日間全ての日程が終了した。メダル獲得総数は開催国イギリスが15個でトップ。連日会場を埋め尽くした地元観衆の期待に応えた形だ。また金メダル獲得数ではイギリス、中国が共に5個で1位だった。日本は、視覚障害クラス(タンデム)の大城竜之・パイロット伊藤保文のタンデムスプリント(写真)の第4位が最高成績。メダル獲得には惜しくも一歩及ばなかった。
前日の9月1日、大会3日目となるこの日は、1kmタイムトライアルで好走した石井雅史が4km個人追い抜きに、視覚障害クラス・タンデムの大城竜之・パイロット伊藤保文ペアは最初の種目となる1kmタイムトライアルに出場した。石井は1kmに続き4kmでも5分2秒100のベスト記録を更新し全体の9位。「5分を切りたかったので満足ではないがベストを更新出来て良かった。今の力は出し切れました」と前日に続きすっきりとした表情で語った。「北京では結果(金メダル獲得)を出させてもらったのもあったので、出るだけで喜ぶわけにはいかないと思っていた。怪我をして悩んで苦しんでたどり着いたロンドンだったので、結果として1kmも4kmも自己ベストで終えることが出来て良かったと思います」。
また、1kmタイムトライアルに出場した大城・伊藤ペアは、こちらも大舞台でベスト更新となる1分4秒266を出すものの、メダル争いには絡めず。レース後大城は「調子はずっと良く3秒台を狙える期待があったので、そこは少し残念。自分たちも本番に合わせて仕上げてきたが、他の国もきっちり仕上げてきていたということですね。ただ(伊藤と)2人とも力を出し切って、自己ベスト更新という最低限の目標はクリアできたので、満足している所もあります」と語った。優勝したイギリスペアのタイムは1分01秒351。2位スペインが1分02秒707、3位はオランダで1分03秒052。日本ペアが狙っていた3秒台が、メダル獲得争いに絡むギリギリのラインとなり、競技レベルの向上が改めて伺える結果だった。
そしてトラック最終日の9月2日、日本の出場は大城・伊藤のタンデムスプリント。前日大城が「予選のハロンからとにかく全開で行きます」と意気込んだ通り、全力の戦いを見せた。予選を5位で通過し、迎えた準々決勝。今年2月、アメリカで行われたパラトラック世界選手権では全く歯が立たなかったオランダを2ー1で破る。続く準決勝は優勝したイギリスのカップスとマクリーンのペアにストレート負けを喫するものの、3ー4位決定戦に回り、メダル獲得の望みをかけたラストマッチに臨むことに。勝てば銅メダルだが、対戦相手はスペイン。1回戦、日本はインスタートから道中スペインの後ろを取り、残り1周手前で先に仕掛けロングスパート。粘りきって先着したが、ブルーバンド走行を言い渡され降格、スペインに先手を取られる。2回戦は途中、日本ペアが観客スタンドの手すりに接触し、再スタート。勝負がもつれる中、最後まで互角の戦いを見せたが、一歩及ばず。結果2ー0でスペインに破れ、最終順位4位となった。
<レース後のコメント>
大城竜之「予選のハロンで5位で、このままの順位で終わってしまうのかとも思いましたが、やっぱり上へ行きたいしメダルを狙ってましたので、4位という結果は自分としては良くやったなと思っています。(伊藤さんとのコンビネーションは)合宿を重ねてきたので息はばっちり合って、照準をここにしっかり合わせていい状態で臨めたので本当に今持っている力を全て出し切れたと思います。(質:レース後伊藤さんとはどんな言葉をかけあった?) 良くやった、ありがとう、そんな感じだったと思います」
パイロット伊藤保文(競輪選手)「まあまあ頑張ったでしょ(笑)。面白かった。降格になったけどスペインに先着したし。(質:2月には完敗したオランダにも勝ちましたが?) ね、あのときは勝負にならなかったもんね。今日は大城がすごい頑張りました。自分は(オランダとの)3本目、諦めかけてたけど後ろの大城がギャーッと踏んできたからそれで、おお、となって諦めずに踏んで、結果、前に出られた。大城が本当に頑張りました。(質:自身にとってはどんな経験だったか?) もういいわ(笑)。ただパラサイクリングには関わって、若い競輪選手を乗せるようにしたりすれば普及はできるし。自転車に世話になってるしね。普及活動できれば、って今のところはそんな感じです。(大城さんに)どうしてもって言われたら乗るけどね(笑)」
現役競輪選手とパラリンピック3大会目のベテランペア。言葉もそうだが、ペダルを通じて互いの気持ちを感じ合った。メダル獲得はならなかったが、世界と戦えるペアを目指して積み重ねてきた3年間。1km、スプリントともにこれまでを上回る結果、内容で大城・伊藤ペアは大舞台での戦いを終えた。
自転車競技は5日からロードレースが始まる。日本からは藤田征樹と石井雅史が出場する。また、競輪選手の伊藤は、3日、一足先に帰国。9月13日から開催されるG1オールスター競輪(前橋)に出場する。