ツール・ド・フランスさいたまクリテでパラ世界王者 野口もアルカンシェルで疾走!パラサイクリングが大観衆に競技アピール

Posted on: 2018.11.09

2018年11月4日、6回目となる「ツールドフランスさいたまクリテリウム」が埼玉県・さいたま新都心で行われた。自転車ファンにはすっかりおなじみとなった、世界のトップ選手が集いシーズンのフィナーレを飾るビッグイベント。今年も熱気と興奮を帯びながら、祝祭のような華やいだ一日となった。

そんな中、障害があるアスリートの自転車競技「パラサイクリング」の選手たちも、メインレースに先立って行われた個人タイムトライアルに出場。沿道の声援を受けながら自身のパフォーマンスを通じてパラサイクリングをアピールした。


アルカンシェルジャージのお披露目となった2018UCIパラ・ロード世界選手権優勝の野口佳子

参加したパラサイクリング選手は東京2020を目指す日本代表選手を中心に、視覚障害クラスのパイロットを含む9名。大会数が限られるパラサイクリングにあって、若手の強化育成選手も大観衆の前で走る、またとない機会を得た。


大会デビューの視覚障害クラス・山口乃愛(のあ/写真左)と寺井えりか(写真右)

女子視覚障害クラスの強化育成選手・山口乃愛(16歳・北海道)とパイロットの寺井えりか(26歳・北海道)は今回が初めての大会参加。今後を担う期待の若手選手として抜擢された。

山口は周囲のすすめで、昨年から本格的に自転車競技のトレーニングを始めた高校1年生。2016年、障害者アスリートの国体にあたる「全国障害者スポーツ大会」で、陸上競技の女子走り幅跳び全国第2位、女子100m全国第3位に入っている優れた身体能力の持ち主でもある。その将来性を認められて今年、日本パラサイクリング連盟の強化育成選手となった。


沿道の声援を受けて走る寺井えりか(前)・山口乃愛(後)

レース後、初めて多くの人前で走り「緊張しました。大会の雰囲気を感じて凄かった」と笑顔を見せた山口。競技中は山口たちの1分後にスタートした男子視覚障害クラス日本代表の木村和平・パイロット倉林巧和ペア(ともに楽天ソシオビジネス所属)が迫っているのを感じ、「抜かされる訳には行かないと頑張りました」と負けず嫌いの一面も。今後は、まずパラの日本選手権出場を目標に、「もっと体力を付け、選手としての基礎を作って行きたい」と力強く語った。

一方、山口のパイロットを務める寺井は、今年7月にプロデビューした女子の競輪選手。大学まで打ち込んだアルペンスキーから競輪への転向で山口同様、自転車競技歴はまだまだ短い中でタンデムパイロットに挑戦している。

「自分のチャレンジで、もっともっと競輪もパラサイクリングも沢山の人に知ってもらえたら」と寺井。女子の視覚障害クラスでは、2016年のリオ・パラリンピックで女子競輪選手の先輩、田中まい(104期・千葉)が鹿沼由理恵とのペアで銀メダルを獲得しており、それに続く活躍が期待される。


男子トライシクル(三輪自転車)の福井万葉(かずは/静岡)も期待の若手選手


男子ハンドサイクル 島田和彦(茨城)

2018年は、UCIの年間表彰選手にも選ばれた野口佳子(ウェルパーク/TEAM BRIDGESTONE Cycling)のパラ・ロード世界選手権優勝や川本翔大(大和産業/TEAM BRIDGESTONE Cycling)の同大会4位入賞など、ロード競技での活躍が目立ったパラサイクリングだが、ここからは2019年3月にオランダで行われるUCIパラ・トラック世界選手権に照準を移しトレーニングを積んで行くという。

パラ・トラック選手権も東京2020の参加枠にかかわるUCIポイント獲得の対象大会となる重要な一戦。どんな選手が選考されるかは未定だが、野口や川本のほか、10月のアジア・パラのトラックで初めて国際大会でメダルを獲得した藤井美穂(楽天ソシオビジネス)や男子視覚障害クラスの木村・倉林ペアなど、世界大会でも上位に食い込める力を付けはじめている選手たちの活躍がポイント上積みの鍵となりそうだ。


藤井美穂(茨城)。沿道からは「みほちゃん!」「かわいい」等の声援も


川本翔大(広島)


視覚障害クラスの倉林巧和(前・群馬)木村和平(後・北海道)。2人は同郷・同学校の先輩後輩


2018 ツールドフランスさいたまクリテリウム パラサイクリング出場選手たち

Text : ayako KOITABASHI
Photo : JPCF/ayako KOITABASHI

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