腰山雅大「Stages Power の不具合とその周辺」

Posted on: 2017.05.01

徐々に自分のトレーニング内容が濃くなってきている昨今。特別「自転車選手になってもらえませんかね」と誰かに頼まれて、毎日毎日トレーニングをしているわけではないです。ただ個人的に好きで、レースをしたり、そのために努力することを楽しんだりしているのですが、そのモチベーションのひとつにパワーメーターがあります。

進捗確認が何せ楽チンなので、平均出力を決めた一定時間のトレーニングをメインにしたり、またはTSSで練習量を管理しています。

今まではハブ式のパワータップを使用していましたが、最近やたら接続が切断される(しかもそのまま暫く接続しない)ので、いろいろメリットを考えてStages Powerを導入してみました。クランクの歪みでパワーを測定するやつです。

さっそくパワータップとStagesの出力比較ライドをしたり、FTPを測ったりしてみたのですが、購入数日にして不具合発生。数分〜数十分に1回ペースで、パワーが0wと表示されてしまうのです。

表示が0wになるのはほんの数秒ながら、平均出力ベースのトレーニングをしているとかなり死活問題なので、治るのならさっさと改善したいわけです。

実はAmazonにて激安でStagesが販売されていることも知っていたのですが、こんなこともあろうかとしっかり実店舗で購入。最悪メーカー送りでも良いかと思いながら、それはそれで時間掛かって面倒そうなので、できる改善は自分で行うことにしました。

◇状況把握1:不具合箇所

表示が0になってしまうのはワットとケイデンスも。StagesをZwiftと(正しくはant+ドングルを介してMacと)初接続した際、ちょっとした踏み込みで即座にワットメーターは接続されましたが、ケイデンスは同じ機器でも数回クランクを回さなければ接続されませんでした。

このことから、Stagesのワット/ケイデンスセンサーは別の機構で測定していることが分かりますし、それが同時に0表示されるということは、おおよそ接続関連(送信側か受信側)に問題があるのでしょう。

◇状況把握2:接続方法

ZwiftでSSTやりながら0表示が繰り返されるので、ハァハァ息を上げながら接続方法を疑ってみました。以前パワータップではこういうことが一度もなかったので、そのことからも受信側の可能性は低い。試しにGarmin520Jを接続すると、同タイミングで0表示になってしまいました。

ZwiftもGarminもどちらも接続方法がant+だったので、更にiPhoneでBluetooth接続し、Stagesのアプリで同時にモニタリング。この時点で一台のStagesに対して3台のデバイスでモニタリング、我が家のStagesはデビューして3日目にして超人気者であります。すると、Zwiftで0表示されてもiPhone上では正しく数値が表示されている・・・。

つまり、事はant+で送信側の問題で起きる、ということまで突き止めることが出来ました。

■改善策1:接続方法(ant+ / Bluetooth)

ということで、じゃあant+を介さずにBluetoothだけでZwiftに接続すれば・・・とやってみたものの、MacとパワーメーターをBluetoothで直接接続するのはあまり動作が安定せず、途中で勝手に切断されることがあるのだとか。これではまた同じ現象が起こっても検証が難しくなります。

iPhoneのZwift Mobile Linkを介してZwiftと接続する方法もありますが、ずっとiPhoneを立ち上げてないと使えない(余計な接続機器を一個増やす)こととなるので、あんまり気が乗らない。

トドメは、メイン機器であるGarmin520JとBluetoothで接続することがどうしても出来ない。前述の通りStagesはant+とBluetoothを同時に吐き出していますが、接続をしようとしてもどうしても ant+ が優先され、Bluetoothは見つけることすら出来ない(ant+とBluetoothにそれぞれ接続番号が割り振られているので、どちらが接続されているか判別つきます)

ということで、何が何でもant+避けて通れないようなので、ここは一度原点に戻ってStagesのウェブサイトを覗きます。

■改善策2 :Stagesウェブサイトの見解

Stagesウェブサイトでは、Garmin520との接続についての記述が色々ありました。
https://support.stagescycling.com/en/support/solutions/articles/1000205217-recommended-settings-garmin-edge-520-head-unit

お互い(Stages、Garmin側)のファームウェアアップデートは当然ながら、ゼロ点の校正、など。もちろんここは既に完了済みで、先へ読み進めると気になる記述があります。

Data collection setting recommendation:
Once-per-second recording. The Garmin Edge 520 head unit has two data recording options (Smart Recording and 1 Sec.). The function ‘smart recording’ purposefully drops data packets when the information looks the same in order to save memory space. We absolutely recommend recording at once-per-second and downloading more frequently.

つまり、データ測定のセッティングは、”スマートレコーディング”と ”1秒1回” があるらしく、メモリスペースを節約するために同じ情報が連続して入ってきている場合は意図的にデータパケットを破棄すると。Stagesのデータにとってはあまり良くないので、1秒1回に変更する方が良いそうです。

正直、Zwift上で同じ症状が出ているのと、Zwiftでスマートレコーディングなんて無いでしょうし、あんまり関係ないんじゃないかと思いつつ設定を確認します。で、僕のGarmin。確かにスマートレコーディングがオンになっていたので、毎秒に設定を変更。これで改善されれば良いんですが、先へ読み進むととある記述が・・・。

取り付け位置の確認などがありつつ、その先に、、、ありました。
Firmware bug causing intermittent display of 0w while pedaling

Cause: Firmware bugs present that cause intermittent values of 0 to be displayed while pedaling
Effect: Lower than normal power average Solution: Disable the Bluetooth function on your Edge 520; check for upcoming firmware updates to resolve this issue.
Further recommendations: It is best practice to check for new firmware for both your Garmin head unit and Stages Power meter once per month.

うそん・・・。「原因:ファームウェアのバグによって、ペダリングの最中しばしば値が 0 と表示される」まるでこのことですし、おまけで「影響:これによってパワーの平均値が下回る」って。うん、知ってる、知ってる。

解決策として、Bluetooth機能をカットするとありますが、これをするとiPhoneとの接続が解除されてしまうのと、そもそもZwiftでも同じ症状が出てる以上あまり関係がない気もします。いや、もしかしたらMacもBluetoothを切れば問題は解決するのでしょうか。それよりなによりこのあとの文言が・・・。

Check for upcoming firmware updates to resolve this issue. Further recommendations: It is best practice to check for new firmware for both your Garmin head unit and Stages Power meter once per month.

「この問題を解決するには、今後のファームウェアアップデートを確認してください。更にオススメ:GarminとStagesの両方について、月に1回新しいファームウェアを確認することをお勧めします」

うるせぇ・・・。(※ちなみにこの情報が開示されたのは2016年の9月14日。ファームウェアアップデート、はよ)

■改善策3:アルミテープ
やっぱりGarmin520 と Bluetooth で接続出来るのが一番問題ないと思うのですが、いくら探してもその方法は見当たらず。ということで、少し見栄えは悪くなるものの、物理的に電波ノイズを吸収してしまうこの方法を試してみます。

https://blogs.yahoo.co.jp/ham1c/36465737.html

表面にアルミテープを貼る方法。確かにGarminのフォーラムを見ていても、この方法で問題が解決した方も多いようです。

https://forums.garmin.com/archive/index.php/t-363536.html

科学的なことはよくわかりませんが、これで(ある程度)解決するなら良しとしようか。

確かに電波状況的には遠いと弱い。遠いって行っても、トップチューブの上くらいなので、あまりにも・・・。最大は5本立つっぽいですが、立ってるも見たことないくらいです。

ということで、貼ってみました。この後電波状況の確認、GarminやZwiftに接続して実際に試してみましたが、かなり改善したように思います。ちなみに、テープはAmazonで買いました。

ロール買って使ったのは数センチのアルミテープ。残りも次いつ使うか分からずもったい無いし、どうしようかと悩んでたんですが、ゼンコーさんのコレを真似してみることにしました。しかしアルミなので軽い為、かなりたくさん貼ることになったのはここだけの話。

■まとめ
そもそも僕がStagesを選ぶまでに、一度はPioneerと比較し悩んでいました。国内ブランドのPioneer、しかもあの沢田時選手も使っているというのは、僕にとってStagesがTeamSKYで使用されているのと同等かそれ以上に魅力的でした。結局は”即納”&”Bluetooth接続” いうポイントに惹かれStagesの購入に至ったわけですが。

こういう面倒なことは無いに越したことありませんが、最初から完璧な製品を発売する日本製に対して、ファームウェアアップデートで改善を図っていく現代のアメリカ製品という違いを感じました。

幸い改善策が無いわけでも無い。そういう意味で必ずしもこのトラブルがStagesをオススメしたくない理由にはなら無いですし、もし正にいま購入検討されている方は使用デバイスに合わせてアルミテープを同時購入されることをオススメします。

AUTHOR PROFILE

腰山雅大 こしやま まさひろ/1986年4月10日生まれ。兵庫県出身。 '00年、BMXと出会う。競技を続ける傍ら、BMX専門誌への寄稿、コンテストでのジャッジ、MC、競技大会の主催など、マルチに活動をする。'14年にシクロクロスを始める。変速機のないシングルスピードの車両(SSCX)で参戦を続け、現在カテゴリー1を走る。'15年からアメリカ、ミネアポリスの自転車ブランド “All-City Cycles” のライダーとして活動をする。趣味はコーヒー。 ◆筆者の公式ブログはこちら ◆筆者のInstagramはこちら

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