「Road to Rio Olympic」BMXレース日本代表コーチ三瓶将廣インタビューPart1
現在オリンピックの正式種目である自転車競技は、ロード、トラック、MTBクロスカントリー、BMXレースの合計4競技。その中で、前回のロンドンオリンピックで日本が唯一出場枠を獲得できなかった競技がBMXレースだ。
しかし一方で、この4年間で急速に力をつけ、一気に世界トップクラスに近づいたのもBMXレースだろう。そんなBMXレース日本代表は現在、世界のどの位置にいるのか。オリンピックイヤーを迎え、重要なシーズンを迎えた今、リオデジャネイロオリンピック出場の可能性、世界各国の強化策、今後の育成について、日本代表コーチを務める三瓶将廣氏(25歳)にワールドカップに向けて出国する直前にインタビューした。全3回に亘ってお送りする。
Part1では、日本の現在の世界ランキングとオリンピック出場条件に対する日本の戦略について聞いた。
<三瓶将廣(25歳):現BMXレース日本代表コーチ/(社)SYSTEMATIC BMX代表>
三瓶将廣氏は、少年時代から海外を転戦しプロとして活動。日本、アジアで頂点に立ち、2012年のロンドンオリンピック出場を目指したものの、直前の怪我の影響もあり、出場枠獲得に失敗。その後、競技を続けながらも、国内BMX界の状況を危惧し、自ら指導者になることを決意。海外とのコネクションを多くもち、世界のBMXレース最前線を日本に持ち込み、代表選手や国内の若手ライダーたちを指導・サポートしている。
Q、オリンピックに向けて重要なシーズンを迎えます。まずは、オリンピック出場枠獲得に向けて日本代表の現状を教えてください。
BMXレースの場合は、オリンピック国別出場枠を獲得する方法は3つあります。
<男子BMXの場合>
①-UCI国別ランキング(各国上位3名分の2年間分のポイント合算)
【上位13カ国⇒1-4位:各国3名/5-7位:各国2名/8-13位:各国1名=計24名】
②-個人ランキング(個人ポイント1年間分)
【①で枠が獲得出来てない国を対象に上位1-4位⇒各国1名=計4名】
③-世界選手権大会における国別順位(2016年5月29日コロンビア大会)
【①②で枠が獲得出来てない国を対象に上位1-3位⇒各国1名=計3名】
■BMXレース出場枠:32名(基準①、②、③より31名+開催国枠1名)
■年齢:18才 1998/12/31以前誕生
(※参考資料:JCF資料「リオ・オリンピック参加資格取得条件)
男子に関しては①の国別ランキングにて出場枠獲得を狙っています。長迫吉拓を先頭に、松下巽、吉村樹希敢の3名の合計ポイントで勝負をかけており、現在日本はボーダーライン上の13位。(ブラジルは2月9日時点でランキングは11位)
ブラジルがこの国別ランキングで1枠獲得した場合、国別ランキングの範囲が14位まで広がるため、現時点では十分なポイント差はあると考えています。対象大会はまだまだ続きますが、大きくポイントが加算されるのが5月までに開催されるワールドカップ3戦と最後の世界選手権大会になります。
コンスタントな予選通過、1/8決勝通過を続けることができれば、ランキング順位はキープできると見込んでいます。しかし、4人目のバックアップがない日本チームは、怪我による欠員が大きく響くので油断はできません。当初のプランでは2名枠を狙っていましたが、2シーズン目の成績が伸び悩み、1名枠獲得へと切り替えました。
悲願のオリンピック出場を目指す日本王者、長迫吉拓(photo:Masahiro Sampei)
<女子の状況>
①-UCI国別ランキング(各国上位3名分の2年間分のポイント合算)
【上位7カ国⇒1-3位:各国2名/4-7位:各国1名=計10名】
②-個人ランキング(個人ポイント1年間分)
【①で枠が獲得出来てない国を対象に上位1-3位⇒各国1名=計3名】
③-世界選手権大会における国別順位(2016年5月29日コロンビア大会)
【①②で枠が獲得出来てない国を対象に上位1-2位⇒各国1名=計2名】
■BMXレース出場枠:16名(基準①、②、③より15名+開催国枠1名)
■年齢:18才 1998/12/31以前誕生
現在女子エリートは昨年夏の朝比奈綾香の怪我により、瀬古遥加のみの活動となっています。国別ランキングは19位とポイントでの枠取りは不可能な状況です。
昨年の段階で方法③である世界選手権大会リザルト枠の一発勝負へと切り替え、強化項目をスキル面にしぼり取り組んできています。女子は世界選手権大会での枠は2つとなっていて狭き門ではありますが、各国の選手のリザルトにより大きく変動するので、最後まで希望を持ち取り組んでいます。
現在は、男子のみならず、女子も1名を送り出すことが現在の僕のミッションとなっています。
女子の枠取りを目指し孤軍奮闘する瀬古遥加(photo:Masahiro Sampei)
Q、現在の日本代表の課題は?また、課題克服に向けて重点においてきた部分はどういったところでしょうか?
男子のエース、長迫吉拓はUCIワールドサイクリングセンターに拠点をおき、今年で5シーズン目を迎えます。昨年は手術などの影響によりリザルトは伸び悩みましたが、今年に入り心境にも変化が生まれ、良い流れへと変わっていることを双方で確認できています。
先週末よりレースシーズンに入り、ワールドカップシリーズを上り調子で進めていけると考えています。(W杯1戦の直前、リオでのテスト練習で転倒し、ダメージが残っていますが、第1戦は参戦予定。)
松下と吉村は今年に入りプランを変更。2月に行ったアメリカ遠征でも1つ下のカテゴリーをチョイスし、ベースを見直すこととなりました。「レースを勝ち進む力」、「コースへ対応する力」の2つを身につけなければ、勝ち進むことは難しいという判断です。現在、吉村樹希敢は鎖骨を骨折し術後の経過待ちとなっています。
5月末に行われる世界選コロンビア大会のコース(photo:Masahiro Sampei)
女子は前述の通り瀬古1名となりました。2016年5月の世界選手権大会1発勝負へと切り替えてから、コースへ対応するためのスキルアップをメインに取り組んできました。
オリンピックポイント獲得ということから、レース参戦ばかりになっていた日本チーム。
「コースを1周できなければ勝負はできない。」
それをメインの課題として、昨年10月よりレース数を増やすのではなくコースでの練習機会を増やし、アメリカのオリンピックセンターでの合宿や、世界選手権が開催されるコロンビアでの10日間の事前練習も行ってきました。
また、日本国内でも1週間に5箇所のコースをまわったりと、様々な条件で練習をしてきました。コース以外にもスケートパークやトレイル、MTBコースなども走り、とにかくバイクコントロールを上げる事に集中し、最後の世界選手権大会のコースに対応できるようプログラムして進めています。