ガールズサマーキャンプ2010リポート Day6

Posted on: 2010.08.21

 
 トラック競技の初心者と自転車競技の未経験者を集めたグループは、リフレッシュも兼ね、バンクを離れて競輪学校名物の激坂「登坂走路」に挑戦。中には頂上まで登りきる選手も現れ、身体能力の高さをあらためて示した格好だ。高校ではスケート部に所属し、5日目に行われた1kmタイムトライアルで全くの未経験者ながら1分26秒台のタイムを出した近藤知美は「6日間の内容が濃くて、長いようで短く、本当に楽しかった。また皆に会いたいです」。ホッケーの岡村育子は「初めは不安だったが、未経験でも楽しく出来た。他の競技の人たちといろいろ話せたこともよかった」。ライフセーバーの岡野彩は、「むちゃくちゃ楽しかった。レベルアップして戻ってきたい」とそれぞれ笑顔で話した。トラック競技用の自転車に慣れることから始まった6日間。メンバー同士、そして一から手取り足取りで指導にあたったコーチたちとの間には深い絆も生まれた。こうした人と人との繋がりも、彼女たちの今後の競技活動にとって大きな糧となることだろう。

 最年少グループとなった中学生の参加選手たちも、最終日まで元気いっぱいだった。現在の規定では、トラック競技でオリンピックに出場できるのは18歳から。2年後のロンドンオリンピックを見据えた選手発掘プロジェクトとして計画された今キャンプでは、当初、中学生は公募の対象外だったが、反響が大きかったため急遽募集枠を拡大。14名の中学生でひとつのグループを構成するに至った。競技経験者から未経験者まで技量差のあるグループとなったため、トレーニングメニューの作成には苦心したと語るのは、このグループを担当した宮地コーチ(日本サイクルスポーツセンター)だ。それでも、「乗れる子も乗れない子も、同じようにやりがいを感じられるメニューを」と考え抜いた。そんな思いは十分に伝わったらしい。選手たちは、「まだ帰りたくない」「自転車がもっと大好きになった」などと口を揃えてキャンプ終幕を惜しんだ。「自ら望んで参加してきている子ばかりなので、目線もレベルも高い。強くなりたいという意欲を感じた」と同コーチ。少し気が早い話かも知れないが、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは年齢的にも彼女たちは立派な代表候補となりうる。長期的な視野に立った選手の育成、競技人口の裾野拡大という部分においても、今回中学生にこうした機会を与えたことは大きな意義があったといえる。

 午後は、インターネットを活用したサポートシステムの説明が行われた。日本サイクルスポーツセンターが運用する「サイクルスポーツネットワークシステム」(CS-net)がそれで、目的に応じた練習メニューの詳細やアスリート向けの栄養学など豊富なコンテンツが用意されているだけでなく、ID登録を行えばトレーニング記録もつけられ、寄せられた質問に対しては各分野の専門家がすぐに回答を届けるといった、成績向上をめざす自転車競技選手にとっては万全このうえないシステムだ。63名のキャンプ参加者たちにとって、また日本の自転車界にとっても、この選手発掘キャンプはあくまで始まりにすぎない。こうしたシステムを活用しながら、キャンプ終了後も参加選手たちに対してはサポートを続けていくのだという。選手たちの計測記録は、こののち科学的にさまざまな角度から精査される予定だ。自転車競技に懸けようと、強い意思を持って集まってきた参加者たちのためにも、今キャンプを通じて得られた知見が、今後より効果的な形となって世界レベルの選手誕生への道に活かされることを期待したい。

リポート:小板橋彩子(シクロチャンネル)

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