DHシリーズ第2戦で井岡佑介が下剋上達成!第3戦はウィングヒルズ

Posted on: 2015.07.09

PROクラス最終走者の加藤将来選手のあまりのパワーにタイヤが外れたとき、会場がざわめいた。プロクラスライダーの全員を抑えて優勝したのは、エリートクラス優勝者に与えられる「下克上システム」を使ってPROクラスライダーに挑戦した、高校2年生のローカルライダー、井岡佑介(HottSpin nukeproof)だった。


シェイクダウンしたてのNUKEPROOF ROOKに乗る井岡佑介

6月27 日、28日、ダウンヒルシリーズ第2戦が愛知県瀬戸市のSRAMPARKで開催された。コースは全長425m。スラムパークの山頂をスタートとし、すぐに90度ターンのクランクが続くシングルトラックに入る。

シングルを抜けてからは、リズムセクションの連続。ジャンプと細かいバンクが組み合わされたコースは「下りのパンプトラック」と言ってもいいほど。

どんどんスピードがあがるため、短いわりに体力を使ううえに、いかにバイクに置いていかれないようにコントロールできるかがポイント。


沼セクションをジャンプする井手川直樹(AKI FACTORY/STRIDER)

昨年は、土砂降りのなかのレースとなったスラムパーク会場。今回も週間天気予報を見る限り雨の週末になる覚悟をしていたものの、土曜の明け方にやんだ。

雨はコースを湿らせ、試走が始まる頃には、路面コンディションとしては最高のものに。ただし、ヌタヌタの沼になったセクションが一カ所あり、そこではフロントが埋まって前転するライダーも見られた。

この会場の最大のポイントは、コースの全てが見えること。全長の短さもあって、スタート直後からフィニッシュまで、コース脇には観客が並ぶ。だからこそ気合いが入ると同時に、ストレスも感じるだろう。メンタルの強さもこのコース
攻略の鍵だ。

軽トラックでの搬送は約5分。この会場では昨年に引き続き、このスラムパークを練習拠点とするFMX(フリースタイルモトクロス)ライダーが搬送ドライバーを務めてくれている。

タイムドセッション前の昼休みにはFMXショーも行われ、普段なかなか見ることのない、エンジン付きバイクの空中ショーに参加者たちも大盛り上がりだった。

今回のエントリーは96人。土曜日のタイムドセッションには76人が参加した。今年から全クラス総合ランキングも参考として発表しており、タイムドセッションでの総合1位はエリートクラスの泉野龍雅(桜丘高校/KONA/自転車道)。

2位に加藤将来( AKI FACTORY/ACCEL)、3位には井本はじめ(SRAM/LITEC)。この3人が51秒台を出した。4位には、ショートダウンヒル荒らしとも呼ばれるハードテールの使い手、エリートクラス出走の増田直樹(DTP)が入った。


スタート地点でスタートを待つ井本はじめ。最高の天気

日曜日も、朝から快晴。梅雨はどこへ行った?と言いたくなるほどの青空が広がった。朝から試走には長い列ができ、最終的には20本近く走ったという強者も。どんどん乾く路面は、すでにホコリっぽい。「濡れて滑るのと、乾いて滑るのは全然違う。昨日と今日じゃ、違うコースだと言ってもいいくらい変わっている。」とは、SRAMPARK管理人の波多野さんの談。

本戦が始まる頃になると、急に風が強くなりはじめた。スタート地点から吹き下ろす風は、MCアリーの立つテントを飛ばしそうになるほど。

今回も、エリート男子優勝者は「下克上システム」でPROクラスライダーに挑戦できる権利を持つ。そこで表彰台に乗った場合はもちろん賞金も与えられる。若手から、往年の名選手までが揃った今回は、開幕戦の十種ヶ峰で「下克上システム」の権利を獲得し、PROクラス4位に入った藤村飛丸(Blanky Dog/MUDDY CHOCOLATE)もなりを潜めた。

前日のタイムドセッションの結果をもとに、リバーススタートによる本戦が始まると、みんな着々とタイムを更新していく。タイムドセッション3位の井岡佑介選手(HottSpin nukeproof)が出走したとき、突風が吹いてフィニッシュゲートが倒れるというアクシデントが発生。

しかし、その突風に乗ったかのようにフィニッシュに飛び込んできた井岡選手が、今大会初めての50秒台を出す。タイムドセッション2位の泉野と3位の増田は51秒台となり、PROへの挑戦権を得たのはスラムパークをホームコースとする地元の若手・井岡選手となった。

PROクラスの前走者として、もう一度山頂からスタートした井岡選手は、エリート優勝を決めた自身のタイムをさらに0.349秒更新し、50秒283という数字を叩き出す。

疲れが見えないのは、さすが若者?その後、プロライダーたちが次々にスタートするものの、なかなか51秒を切れない。残り2人、ここで井岡選手の表彰台は確定。プロライダーとして負けるわけにはいかない開幕戦優勝者の井本はじめがついに50秒台を出すも0.029秒井岡選手に届かず。


#1で優勝した井本はじめ選手は0.029 秒及ばずの2位に終わった

最終走者の加藤将来も豪快な攻めの走りでゴールを目指す。しかし、中盤のタイトなバームでの切り返しで、あまりのパワーにタイヤが悲鳴を上げ「パンッ」という音と共に一瞬にしてタイヤがリムから外れてしまった。その瞬間、会場にはため息と、そして今日のローカルヒーローをたたえる拍手が湧いた。

「マジで嬉しいです。涙が出ました。タイムドセッションで勝てなくて、本戦でも勝てないんじゃないか、と今日一日吐きそうなくらいでした。」と話した井岡選手。ひとりだけ空中でもペダルを漕いでいた、という自転車歴5年、16歳の少年がプロクラスライダーに勝ってしまうという結果。


コース脇に観客が並ぶなかで優勝を決めた井岡佑介

全エントリーの内、地元愛知県からの参加者は38人と約4割。SRAMPARK はできてから2年。自転車歴1年未満の若手ライダーのエントリーも多く、どんどんローカルライダーが育ってきているのが分かる。

ご夫婦でスラムパークを走り込んでいるという吉川邦岳さんは、エリートで本戦7位となり「数を走っていれば勝てるわけではないですね。色んなライン取りが見れて面白いです」と話してくれた。

ローカルヒーローに活躍してほしい!DOWNHILL SERIESを企画した当初の構想が、早くも現実となった一戦になった。第3戦は岐阜県ウイングヒルズ白鳥リゾートにて行われる。


PROクラス表彰台

■第3戦は新たに会場に加わったウィングヒルズ
今年新たにダウンヒルシリーズの会場に加わったウイングヒルズ白鳥リゾート。ダウンヒルコースとしては、国内屈指のハードコースとしてJシリーズでも使用されてきた歴史ある会場だ。

そして今年はコースをリニューアルするにあたり、プロライダー井本はじめ選手(SRAM/LITEC)を起用。ダウンヒルシリーズのコースセッターとしても、走り応えのあるルートな設定をしてくれる。

【ダウンヒルシリーズオフィシャルホームページ】
http://dhseries.jp/

photo and text:©Ryuta IWASAKI/DOWNHILL SERIES

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