パリ・パラリンピック ロード初日 個人TT 杉浦6位  藤田7位 川本8位  厳しい戦いも揃って入賞に漕ぎつける

Posted on: 2024.09.05

9月4日、7日目を迎えたパリ・パラリンピック。8日の閉幕まで残すところあと数日となった大会後半戦、自転車はロード競技が始まった。

ロードの舞台はパリ郊外のクリシー=ス=ボワ。ロード初日は各クラスで個人タイムトライアルが行われ日本からは3選手が出場した。

杉浦佳子(女子C3・53歳・総合メディカル株式会社/TEAM EMMA Cycling))、川本翔大(男子C2・28歳・大和産業株式会社)、藤田征樹(男子C3・39歳・藤建設株式会社)だ。

なお、男子視覚障害クラス・タンデムの木村和平とパイロット三浦生誠はトラック競技をもって今大会の出場を終えている。

川本翔大 photo Ayako Koitabashsi

パラリンピック自転車競技の個人タイムトライアルは全クラスが1日で競技を行う長い1日。朝8時に競技が始まり、最終走者のスタートは午後4時過ぎ。

19のメダルイベント、そして視覚障害クラスのパイロットを含めたおよそ240人の選手が次々とコースを駆け抜けた。

今回のコースは、富士スピードウェイを舞台とし厳しいアップダウンが続いた東京パラとは打って変わって平坦基調。1周14.1kmの中盤と後半に2か所、短い登りを含むが、1周あたりの獲得標高は140mにとどまる。

日本はまず男子C2クラスの川本翔大が出走。11人が出場し、距離はコース1周の14.1km。1つ目の登りに設定された中間ポイントは5位で通過したものの、

後半は粘りを欠き、タイム21分50秒29で最終順位は8位となった。

<川本コメント>
全然ダメでした。(トラック最終種目の)1kmが終わったあと筋肉的な疲れがあって(回復を優先したため)ここに向けてトレーニングができていなかったのが原因かなと思います。

ちょっと自分の調整が上手く出来なかったです。(平坦基調なので)しっかり平坦で出し切れればいいなと思って臨んだんですけど、最初の登りを登ってしまったら、もう平坦も思ったように踏めなかったです。(中2日挟んでのロードレースに向けて)調整し直してしっかり頑張りたいです。」

疲れの残る中、8位の入賞ラインには踏みとどまったが、納得のいく走りではなかったようだ。7日の最終日に行われるロードレースまでは中2日。

簡単なことではないが、心身ともに立て直し、トラックで見せた本来の川本らしい最後まで諦めない粘り強い走りに期待したい。

男子C2の優勝は、地元フランスのアレクサンドル・ルオテ。トラック競技の3000m個人パシュートに続き、今大会2つ目、パラリンピック通算では3つ目の金メダルを獲得した。

最終日7日に行われるロードレースでも優勝候補の筆頭だ。

アレクサンドル・ルオテ(フランス・男子C2) photo Ayako Koitabashi

◾️男子C2 個人TT 結果詳細
https://olympics.com/OG2024/pdf/PG2024/CRD/PG2024_CRD_C73T_CRDMTT——02010—–FNL-000100–.pdf

杉浦佳子 photo Ayako Koitabashi

続いて、女子C1-3クラスに杉浦佳子が登場。ここもコース1周の14.1kmで競われた。16人が出場し、東京パラでこの種目金メダルの杉浦は最終走者としてスタート。

東京パラ以降に頭角を表してきた若い選手たちが快走を見せる中、今回のようなフラットコースは決して得意ではない杉浦も終盤までしっかり粘り、タイム33分38秒53、最終順位6位でフィニッシュした。

期待されていた2大会連続のメダル獲得には届かなかったが、持ち味を発揮しにくい平坦なコースでも力は出し切れたと杉浦。レース後の表情も明るかった。

杉浦 レース後の表情 photo Ayako Koitabasho

<杉浦コメント>
「自分としては、力はしっかり出し切った結果だったなと思っています。東京パラの時は(長い登坂を含む)自分のすごく得意なコースだったんですが、東京終わってから、坂のないコースではなかなか勝てなく、特にタイムトライアルは苦手な種目だったので、本当に他の選手が強かったです。

C1、C2の選手たちがすごい勢いで強くなっていて、リスペクト。すごいなって思います。

(今大会はロードが平坦ということもあって)トラックの3000mに狙いを定めていたので正直とても落ち込んでいたのですが、メンタルトレーニングの先生から気持ちを切り替えて出来ることをしっかりやりなさいと言われていて、その中でコーチのアドバイス通りの走りが出来れば自分の中では満点かなって思っていましたが、ほぼその通りに走れました。

今日は寒かったので最初が、どうしても温まるまで時間がかかってしまいましたが後半は調子が上がって良かったです。

(7日のロードレースに向けては)ここまできたら敵は己だと(笑)思ってとにかく自分で、気持ちだけでは負けない走りをしたいなと思います。頑張ります。」

この日の当地は最高気温22度ほど。前日からの天候の崩れの影響もあり、杉浦が出走した午前9時半前後は曇りがちで気温も17度ほどと、秋の気配が感じられる肌寒い気候だった。

女子C1-3 個人TT 表彰式 photo Ayako Koitabashi

◾️女子C1-3 個人TT 結果詳細
https://olympics.com/OG2024/pdf/PG2024/CRD/PG2024_CRD_C73T_CRDWTT——03030—–FNL-000100–.pdf

藤田征樹 photo Ayako Koitabashi

個人ロードTT、日本から最後の登場は男子C3クラスの藤田征樹。北京、ロンドン、リオ、東京、そしてパリと、パラリンピック5大会連続出場、長らく日本のパラサイクリングを牽引している藤田が、ようやく今大会の初戦を迎えた。

10人が出場し、藤田は5番目の出走、藤田のクラスはコース2周の28.2kmで競われた。

初戦ということで実際のコンディションは未知数だったということだったが、1周目の中間ポイントの通過順位は8位、その後も大きく崩れる事はなくタイム40分14秒50、最終順位は7位でレースを終えた。

<藤田コメント>
「7位という順位は残念ではあるんですけれども、今日のコンディションでしっかり走ることが出来たのは良かったと思います。

出国日から膝の調子を悪くしてしまっていたので、本当にレースに出られるかどうかもわからなくて、事実トラックは欠場してレースに出られずに帰ることも覚悟したくらいだったんですけれどもドクターやチーム、日本で応援してくれている皆さんに支えられて回復して、なんとかスタート台に立つことが出来ました。」

藤田は今回、右膝の炎症が悪化し、大事を取ってトラックを欠場するという苦しい選択をした。

両膝下が義足の藤田にとって膝は義足との接点。その接点にあたる部分が腫れ、体重をかける事ができない状態だったという。炎症部分に溜まった液体を抜く治療を施しながら、義足を着け、自転車に乗る事ができるところまでどうにか漕ぎ着け、この日のロード個人TTに臨んでいた。

藤田 レース後の表情 photo Ayako Koitabashi

<藤田コメント>
「トラック前は義足を履くこともできない状態でしたので、まずは義足を履ける状態まで回復に努めて、そこからは自転車に乗って体に徐々に負荷をかけていくといったような調整をしました。

本当に今日のコースはタフで、距離も28kmと長めの設定ですし中盤の登ってからの平坦区間でギアを踏んでいくこと、実際の身体のコンディションはトラックに出場出来なかったので未知のところもあったんですけど、その平坦区間でしっかり身体に負荷をかけて踏むことはできたのでそこは次につながると思います。

今日のレースの結果でライバルのコンディションも分かりましたし、自分もしっかり力を使えたので、まずは身体を休めてしっかり作戦を立ててロードレースに臨みたいと思います。

(5大会連続のパラリンピック、まずは初戦を終えて)本当にあの、何度も出場出来るという事は、それだけ家族だったり、会社の方だったりとか、周りの沢山の人たちに支えてもらっての今回だと思うので、本当にそういう人たちへの「ありがとう」の気持ちです。

次のロードはチャンスあると思うのでしっかり結果でも恩を返せるように、喜んでもらえるように、また日本でパラリンピックを見て楽しみにして下さっている方々にも良い結果を届けたい、そういう風に走りたいと思います。」

◾️男子C3 個人ロードTT 結果詳細
https://olympics.com/OG2024/pdf/PG2024/CRD/PG2024_CRD_C73T_CRDMTT——03010—–FNL-000100–.pdf

パリ・パラリンピック、日本自転車チームの戦いは残すところ最終日の7日に行われるロードレースのみとなった。ここまで、それぞれ悔しい思いを重ねてきている選手たちだが、最終戦も力を出し切る悔いのない走りに期待したい。

◾️競技スケジュール(現地時間)https://olympics.com/OG2024/pdf/PG2024/CRD/PG2024_CRD_C08_CRD——————————-.pdf

photo&text 小板橋彩子

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