ツール・ド・フランス2011 現地便り 最終回 寺尾真紀
ラストにラルプ・デュエズの山頂ゴールを控え、あとはグルノーブルのTTと最終日を残すのみ、となった7月22日。レオパード・トレックのチームバスの周りに昨日の勝利の余韻が漂う一方、サクソバンクのリース監督の表情にはすっきりと吹っ切れたような表情があった。
「決着はついたね。我々にとってのツールは終わった」
敗因を聞こうと食い下がる記者にちらりと目をやり、肩をすくめる。
「もしかしたらジロとツールのダブルは無理だったのかもしれない。難しい判断だね。いずれにせよ、どんなに気持ちが追ってもついていけない日がある。アルベルトの場合、それが重要な局面で起きてしまった」
「あと何か狙うとすればステージ優勝かな。彼次第だけれど・・・・・・」
前年の王者としての誇りがそうさせたのか、昨日のアンディのロング・アタックに刺激されたのか、「今日しかない」コンタドールがスタート後僅か15kmでアタックに出た。メカトラブルで遅れたエヴァンスを残し、コンタドールとアンディは競り合いながらガリビエ峠を上るが、ラルプ・デュエズの前に優勝候補たちはまたひとつにまとまってしまう。意地をかけてラルプ・デュエズで渾身のアタックをかけたコンタドールを捕らえ、抜き去ったのは、10年に1度の逸材と言われ、期待をかけられていた24歳のフランス人、ピエール・ローラン。マイヨ・ジョーヌのヴォクレールを献身的にアシストし続けてきた結果、今日このチャンスが巡ってきた。それを見事にものにして、自身のツール初優勝のみならず、フランス人として今ツール初のステージ優勝を飾った。今ツール、初めてマイヨ・ジョーヌに袖を通したアンディは短いステージは好きではない、長ければ長いほど、厳しければ厳しいほど良い、というコメントを残した。
集団が通り過ぎたあとのフィニッシュラインには、HTCハイロードのスタッフが心配顔で立っていた。昨日は制限時間内にゴールできなかったため(タイムアウトになった集団が大きかったため失格は免れた)20ポイントを減点されたカヴェンディッシュ。今日もタイムアウト、減点(運よくレース続行が許された場合)の可能性と闘っているのだ。
「タイムカットには間に合わないかもしれないけれど、遅れは小さいみたい」
「ロハス(15ポイント差でカヴェンディッシュを追う)もグルペットにいるらしい」
電光掲示板に示されたトップとの差が制限時間と等しくなったあたりで、ファンの励ましの歓声が聞こえてきた。グルペットの選手たちがゆっくり最後のカーブを曲がりきり、フィニッシュラインに姿を現す。これが今年のツール最後の山岳。つまり、もうこの苦しさを味わうことはない。しかし、ゴールした多くの選手の表情にその喜びはない。
後日、第18・19ステージ両方とも最終グルペットで帰ってきたフースホフトに聞くと、こんな答えだった。
「ルールで認められた救済措置があるとしても、タイムアウトに間に合わなかった、つまり厳密に言えばそこで失格になっていた、という感覚が嫌だから!」
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Photo by Yuzuru SUNADA

