日本ナショナルチームのプロコンチネンタル化がカギ

Posted on: 2013.08.24

現在世界の第一線で活躍する新城・別府・宮澤選手等日本人選手育ての親と言われる、エキップアサダ浅田顕監督。昨年からナショナルチームの監督として、エリート/アンダーの遠征で指揮を執る機会が多くなり、変わらず世界への挑戦をし続けている。指導者浅田監督が考える、日本人が世界のロードレース界で活躍する為には。ロングインタビューという形で名将は日本ロードレース界の未来を語った。

ーーーー■ 以下、浅田監督インタビュー

ーナショナルチームの現状
ナショナルチームに実際に関わってみて、日本代表チームの価値が低く見られているのを感じている。世界で戦う第一線の選手を招集できるわけでなく、所属チームと選手が有益と判断しない限り参加することはない。それは選手達の目線からも感じられて所属チーム以上の環境・条件が、まだナショナルチームには正直揃っていないのが現状だ。

ジュニア/U23世代に関しては遠征費を自己負担しなくてはならないので、参加するにも制限がある。このシステムを連盟でかえていかなければ、若い選手達を育てていくのに障害がおこるだろう。(現状、連盟はJOCの補助金を、一部遠征費・サポート資金にはしているが全額行えてはいない)


ナショナルチームとして海外遠征に挑む新城・別府に続く活躍が期待されるアンダー23選手達

ー海外のナショナルチームの体制は?
スタッフ特に指導者はだいたい任期4年単位で活動をしている。自転車先進国はもちろん、香港・マレーシア・タイなどアジアチームが、ヨーロッパのコーチを招聘し、選手強化をしてメキメキと力を伸ばしている。(2013年のUCIアジアツアーランキング、1位イラン、2位カザフスタン、3位香港、4位マレーシア、5位日本)

ーナショナルチームが世界の第一線で活躍していくには?
ロードレース界の流れとして国家がサポートしているチーム出身の選手が、最近目立つ活躍をしていると思う。イギリス、オーストラリア、カザフスタンしかり、コロンビアもプロコンチネンタルチーム(以下略、プロコンチ)を所有して、幅広い選手層、ビッグレースで活躍する選手を輩出している。それと比較して日本は国としての全体の力が劣っていると思う。

なので、日本がナショナルチームとしてワールドツアーで活躍できるプロコンチを作り、そこを頂点として、アンダー、ジュニア、女子と裾野に広がっていくような組織を構築をしていくのが理想だと感じている。また、ナショナルチームへ出資するスポンサーも多いだろうというのも、その理由の1つだ。

ー理想のジャパンプロコンチネンタルチームとは?
各クラブチームが各カテゴリーに代表選手を送っていくというシステムを構築していければと思う。選手が強くなったら、そのプロコンチにいけるシステムを作っていく。その成長の過程にナショナル傘下のコンチネンタルチームがあってもよい。

また、格上のプロチームで活躍している選手達の受け皿となり、仮にプロチームに所属していた選手がチームを離れることになったら、ジャパンプロコンチネンタルチームに戻り、トップクラスのレースで培った経験を日本自転車界に還元出来るような、ピラミッド式の構造ができるのが理想なのではないだろうか。


浅田監督の指導のもと多くの選手が世界の第一線で活躍している

ーEQA時代の活動について
当時チームに所属しいた選手達は常に世界を意識し、上を目指そうという強い意志を持っていたので、そんな選手が集まり化学反応を起こし、活躍をしたのではないかと思っている。選手個々に、そうした本質があるから、今でも世界の第一線、活躍しているんだと思う。

その規模の選手を再び集めて世界で活躍するような、プライベートチームを作るには、今の日本ロードレース界ではなかなか難しいのではないかと思う。(エキップアサダ過去所属、現役選手:新城幸也、井上和郎、佐野淳哉、清水都貴、中島康晴、福島晋一、増田成幸、宮澤崇史)

ー当時のメンバーのままチームを継続していたと仮定した場合、今どのくらいの活躍をしているのだろうか?
もちろん当時から各選手が成長しているので、一概に言う事は難しいが、プロコンチの中で中盤くらいのレベルなのではないかと思う。ソールソジャサン、ブルターニュシュレール、チャンピオンシステムといったチームと同じくらいの力ではないかと思う。

ー次期エリート世代、ジュニア/アンダーをみて
高校卒業したばかりの世代(西村・小橋・内野など)は2.3年、レース経験をちゃんと積めば強くなるんじゃないかとは思っているが、まだまだ自力が足りていないと言うのが印象。その下の今のジュニア世代は今の段階ではよく走れていると評価しており、アンダー・エリート世代になったら楽しみな存在だ。また、現アンダー世代は気持ちも力もあるので、テクニック・レース感があればいいんじゃないのかとは思っている。

とにかく継続して、ハイレベルのレースに出続けていくことが大事である

ー浅田流コーチングについて自己分析
常に選手側の考え方でアドバイスしているようにしている。監督として俯瞰でレースを見るだけではなく、なるべく選手の立場で考えていくようにしている。自分で特徴的だと思うのは、選手には環境・シチュエーションを用意して、常に選手自身で物事を考えさせるようにしていることだ。

毎レースごとに、必ず目標を与え「レース前に何位を目指すか」といったことを決めていくことで、1レース、1レース刺激を与えていく。そして、テクニカルな部分、選手達がやらなきゃ行けない事を選手自身の口から言わせないといけないと思っている。選手自身が自分で考え、自発的に動くことで、どんなシチュエーションのレースでさえイメージができ、勝つ為の走りを実行していかなければいけないと思っている。

各レースでのこうした繰り返しが、レース感を養うこととなり、成功したときに選手への自信へとつながっていくんだと思っている。


浅田監督指導のもとフランスのハイレベルなレースで切磋琢磨するEQAU23の選手達

ーロードレースの監督とは?
ゼネラルマネージャは、現場に出て具体的に指示をだすより、運営母体を維持していかなくてはいけないので、スポンサーを筆頭とした外との関係を重要視しなければならないだろう。現場のディレクターは、レースの具体的な指示、選手とのコミュニケーションが一番の仕事なのではないだろうか。

現実問題難しいのは、選手が活躍して、その活躍に見合った契約金なり、待遇をスポンサーから獲得していくことだと思う。そのバランスをチームとして保っていくのが監督のセンスなのかもしれない。ただ、とにかく選手の気持ち・モチベーションを高めるといった事が一番の役割なんじゃないかとは思う。

ー今・将来の夢、やりたいこと
昔からやりたい事は変わっていない。とにかく日本を強くしたい。世界で戦えるレベルにしたい。それをやるにはどうしたらいいのか常に試行錯誤、自問自答を繰り返している。今の自分としての結論は、民間レベルのチーム設立ではなく、とにかく国をあげて活動していく事、そうしたシステム作りが急務だと思っている。

できれば外国人を招聘するのではなく、日本人によるチームで世界を目指したい。それは国内だけという閉鎖的な考えではなく、日本発信のグローバルな人材をもっと排出して層を厚くしていきたいというのが夢である。

メイドインジャパン、ジャパンブランドを確立し、今までと変わらずに世界を目指していきたい

AUTHOR PROFILE

浅田 顕 あさだ・あきら/ツール・ド・フランス出場をめざすプロ自転車チーム「エキップアサダ」代表。自身の豊富な海外レース経験を活かし、主にヨーロッパで活動を続けている。日本人選手育ての親といわれ、新城・別府・宮澤等海外のプロチームで活躍する日本人選手を多く育てている。現在、自身が監督としてEQAU23を率い、次世代の若手育成にも励んでいる

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