安藤隼人「レースに備えたゲーム形式練習」

Posted on: 2015.12.03

週末は、7月から定例で行っている鹿児島県自転車競技連盟の強化合宿コーチングでした。前回までのコーチングで指導した、バンクでの2列ローテーションがとてもスムーズにできるようになっていたので、そこに強度を上げる目的で、土曜のバンク練、日曜のロード練の両日ともゲーム形式の練習を取り入れました。

土曜に行ったメニューは4000mのフライング10本。それを、実力差があまりなさそうな4−6名のグループを作り、力量が近い2つのグループを逃げグループと追走グループに分けます。そして、それぞれのグループで以下の課題を与えます。

・逃げグループは半周(200m)毎に読むラップ誤差を0.5秒以内に抑えてキープする。指定ペースはできると思うペースを自分たちに決めさせる。

・追走グループは、逃げグループと10秒差でスタートして1周1秒ずつ詰めて最後に捕まえる。

もちろん、どちらも2列ローテーションをしながら、というルールです。この練習の目的は

1,どのようなローテーションがペースを安定させるのか。あるいは安定しないのか。(逃げグループ)

2,ローテーションを回しながらタイム差を詰めるためにどうやって足を使うのかを知る。(追走グループ)

アップ周回のローテーションは綺麗にできていた選手も、いざ、模擬レースのような練習になると頭と体が同時にうまく動かないようで、1回目はギクシャクして足もだいぶ使っていました。

ただ、ポイントレース、4km速度競争、スクラッチなどでは、そういう状況がレースで起きています。団体追い抜きにしても1列のローテーションですが、2列でのペースアップ、ペース維持の基本ができれば、1列のペースコントロールの方が簡単です。

一本一本練習が終わるたびに各グループで反省させ、さらに逃げグループと追走グループを入れ替えながら本数をこなすようにしました。2本目以降は反省内容が生かされ、本数を重ねる度にスムーズになっていきました。そして、余裕もできてきたグループは、自分たちで設定するタイムを速くしてその中でもできるように練習していました。

その後は、ちょっとルールを変えて4本。

・逃げグループは5周目までは、同様に半周(200m)毎に読むラップ誤差を0.5秒以内に抑えてキープする。指定ペースはできると思うペースを自分たちに決めさせる。5周したら、追走グループに追いつかれないように踏みなおして最後まで逃げ切る。

・追走グループは、逃げグループと10秒差でスタートして1周1秒ずつ詰める。(ここまでは一緒)その後、逃げグループの踏みなおしに対して逃がさないように強調して捕まえる。ただし、全員で。一人でブリッジをかけるのはなし!

すると、一人だけでひきあげようとして分裂したり、タイムが思うように上がらなかったりと見ていても面白かったのですが、なぜペースが上がらなかったか、だれの引きが急だったかなど勝手にグループでディスカッションをはじめ次は逃げ切るぞ!とか、次は捕まえるぞ!と勝手にモチベーションも強度もあがっていきます。

ちなみに、サポートする側は各グループに無線でタイム差やラップを伝えて、さながらヨーロッパのロードレースと同じように練習するので、選手も楽しくきつい練習ができるのです。

さらに最後には、5−6名だった一つのグループの人数を3名に減らして同様に。人数が減ることで一人当たりの負担が増え、同じようなペースコントロールを踏み方も変わることを体験してもらいました。

日曜日は、それを登りの5分前後のインターバル走5本と、競技場の外周路を使った6km走5本をロードでおこないました。登りでは、ワットの変化とタイムの変化に加えて主観的にきつかった順に番号を振り、どうしたら休みながら登れるのかを、考えてもらいました。

このような練習を通して、いろいろな脚の使い方、休め方、協調の仕方、脚の使わせ方を知ってもらいたいというのが、大きな目的でした。このような練習をぜずに、いきなりレースで駆け引きをしろという方が無理ですね。選手も意欲的に取り組むので、どんどん強くなってもらいたいですね。

AUTHOR PROFILE

安藤 隼人 あんどう はやと/1979年生まれ。鹿児島県出身。鹿屋体育大学体育スポーツ過程修士卒業。鹿屋体育大学自転車競技部元主将。オリンピック選手などのアスリートに対するトレーニング指導をはじめ、海外高所登山者への高所順応指導が専門。2013年にプロコーチとして独立。スマートコーチング主宰。 ◆筆者の公式ブログはこちら ◆スマートコーチングHPはこちら ◆スマートコーチングFacebookはこちら

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