福島晋一「楽しく 苦しむ〜サッカーW杯にみるロードレーサー育成方法〜」

Posted on: 2018.07.10

日本とベルギー戦に声をからして応援した。サッカーは育成、強化という意味で成功している例だと思う。

ヨーロッパには多くのクラブがあり、子供から育成して、そしてプロリーグがある。ベルギー人も代表でベルギーチームに所属している選手は一人だけの黄金期である。日本人もJリーグ所属の選手は一人だけと聞いたが、ワールドカップのような大舞台での激戦を戦い抜くには普段から厳しい環境で戦い抜く力が必要だ。

この厳しい環境で戦い抜く力というものは、天才でない限り厳しい環境のなかで生き抜く以外ほかはない。

この厳しい環境というものはアウェイの中でも自分のポジションを作る力であったり
言葉の堪能さであったり
したたかに自分の成績を残すチャンスは逃さないことであったり
チームのエースや監督の信頼を得る誠実さであったり
自分の力をどのような状況で伸ばすことができるかを自分で見つけ出す力であったり

たとえば、フランス人がフランスチームでツールドフランスに出るのであれば、力さえあればスムーズにいくかもしれないが外国チームであれば、天才でない限りこのような能力が求められる。

トレーナーのメニューを忠実にこなして
「あなたのメニュー通りやっても強くならない、責任とってくれ」と言っても
「君に才能がないのだよ」と返されておしまいである。

トレーナーにとって、トップ選手がトップのレースで成績を出すことが大事であり
下っ端の選手が強くなることはさして重要なことでない。

逆に下っ端の選手は大事にされるために、アピールして成績を出すためには
皆と同じことをしていてはだめなのである。

ほかの選手と違うことをした場合、責任が生じる。
成績を出した場合は認められるし、失敗した場合は2度とトライさせてはもらえない。

ポーランド戦での時間稼ぎも結果、予選リーグを突破したからあの西野監督の判断は勇気ある英断だったといえる。ベルギー戦をみて、日本を批判する声はなくなった。

ロードレースでは日本代表がベルギー代表を破る日はまだまだ遠いが、国内で発掘と育成・強化のシステムを作り、そして選ばれた選手がヨーロッパでしっかり段階を踏んで上に上がっていくことによって、層を厚くしてトップが高くなれば第2の幸也を量産できる日が来ると思う。

サッカーは世界的なスポーツであり、それだけ競争も激しいが、コーチの資格など学ぶことは非常に多い。

我々が参加しているワールドツアーのレースも厳しさはサッカーと全く同じで、選手は衝撃を受けているが、今の選手たちの役割は各々の壁を突破して、次に上がってくる選手たちの踏み台になり、次世代の選手をさらに高みに導くこと。そして監督はそれをサポートしていかなくてはならない。

そのサポートの仕方は決して、やさしい言葉をかけることだけではなく、楽に苦しみながらステップアップできる上昇気流をつくること。

AUTHOR PROFILE

福島 晋一 ふくしま しんいち/岡山県出身 1971年生まれ。20歳からロードレースを初め、22歳でオランダに単身自転車武者修行。卒業後、ブリヂストンアンカーに所属し2003年全日本チャンピオンを獲得。2004年ツアー・オブ・ジャパン個人総合優勝、2010年ツールドおきなわ個人総合優勝。2003年から始めたチーム「ボンシャンス」代表に就任。2013年シーズンを最後に引退。JOCのスポーツ指導者育成制度でフランスのコンチネンタルチーム「ラ・ポム・マルセイユ」の監督として2年間の研修を経て、現在はアジアのロードレース普及を目指しアジアサイクリングアカデミーを主宰している。 アジアサイクリングアカデミー筆者の公式ブログはこちら

福島 晋一の新着コラム

NEW ENTRY