栗村修「長期構想」

Posted on: 2017.09.10

「U23版 ツール・ド・フランス」といわれている「ツール・ド・ラヴニール」に出場していた「U23日本代表チーム」は、そのまま欧州に留まり、9月18日(個人タイムトライアル)及び9月22日(ロードレース)に「ノルウェー・ベルゲン」で開催される「世界選手権U23ロードレース」に出場するための準備を精力的に続けています。

9月5日に「JCF(日本自転車競技連盟)」より発表された日本代表ロードレースチームのメンバーは以下の様になっています。

◯男子エリート(1名)
新城幸也(JPCA・BAHARAIN MERIDA)   

◯女子エリート(2名)
與那嶺恵理(茨城・FDJ Nouvelle Aquitaine Futuroscope)※TT
梶原悠未(埼玉・筑波大学)※TT

◯男子U23(5名)
小野寺玲(栃木・宇都宮ブリッツェン)※TT
岡本隼(和歌山・日本大学/愛三工業レーシング)
雨澤毅明(栃木・宇都宮ブリッツェン)
岡篤志(栃木・宇都宮ブリッツェン)※TT
山本大喜(奈良・鹿屋体育大学)

◯男子ジュニア(3名)
松田祥位(岐阜・岐阜第一高校)※TT
小野寺慶(栃木・真岡工業高校)
蠣崎優仁(静岡・伊豆総合高校) 

◯女子ジュニア(1名)
下山美寿々(大阪・大阪教育大学附属天王寺高校)※TT

今回、「男子エリート」は1名のみの参加となる一方で、「男子U23」は5名の出場となっています。

東京五輪に向けて残り時間が少なくなっていくなか、次世代選手の育成を進める若年層の日本代表チームですが、数年前のかなり厳しい状況から、徐々にではありますが光が見える状態へと好転しつつあるように感じます。

もちろん「すぐにメダルを狙える」様な状況ではないものの、それでもいくつかの良い兆しがみえはじめています。

その一つが、「Up B-Ling System(アップビーリングシステム)」という若手発掘・育成をシステムとして長期的に行う「宇都宮ブリッツェン」の取り組みです。

今回、「宇都宮ブリッツェン」から日本代表として「男子U23」に3名、「宇都宮ブリッツェン」の下部チームである「ブラウ・ブリッツェン」から「男子ジュニア」に1名が選出されました。

選出されたこと自体を評価するというよりかは、「宇都宮ブリッツェン」が日本代表選手を輩出すると同時に「次に続く原石の発掘」を「Up B-Ling System(アップビーリングシステム)」を通じていまこの瞬間も継続的に行っていることに大きな意味があると感じています(宇都宮ブリッツェンのベテラン選手がコーチとして直接指導を行っている)。

「ウィーラースクール(子供向け自転車教室)」⇒「ジュニアチーム」⇒「ブラウ・ブリッツェン(下部育成チーム)」⇒「宇都宮ブリッツェン(プロチーム)」というフルパッケージのヒエラルキーの中で、長期的視野に立った総合的な取り組みを本格的に進めているチームはこれまで国内には存在していませんでした。

「宇都宮ブリッツェン」というチームは、これからのチームの理想形を目指しているチームであり、「宇都宮ブリッツェンモデル」が全国へと広がっていく時がくるならば、分母が飛躍的に広がり、「怪物発掘」の可能性も一気に高まることでしょう。

目先の結果と評価だけではなく、こういった長期的視野を持った活動こそが明るい未来を創りあげていくのは間違いありません。

AUTHOR PROFILE

栗村 修 くりむら・おさむ/1971年横浜市出身。15歳から本格的にロードレースをはじめ、高校を中退し単身フランス自転車留学。帰国後シマノレーシングで契約選手となり、1998年ポーランドのプロチーム「ムロズ」と契約。2000年よりミヤタ・スバルレーシングで活躍した後、2002年より同チームで監督としてチームを率いた。2008-09年はシマノレーシングでスポーツディレクター。2010年より宇都宮ブリッツェンにて監督。2014シーズンからは、宇都宮ブリッツェンのテクニカルアドバイザーを務めた。現在は、一般財団法人日本自転車普及協会 主幹調査役につき、ツアー・オブ・ジャパン大会副ディレクターとしてレース運営の仕事に就いている。JSPORTSのロードレース解説をはじめ、競技の普及および日本人選手活躍にむけた活動も積極的に行なう。 筆者の公式ブログはこちら

栗村 修の新着コラム

NEW ENTRY