福島晋一「運命の女神の眼鏡にかなうには」

Posted on: 2016.10.12

自転車という乗り物はまず、重心でバランスをとることが大切である。そして、バランスをとったうえでペダルをこいで推進することで前に進むのだ。推進力だけでもバランスだけでも目的地には到達しない。

自分も45歳になるが原始人のような過激な物について、コメントするだけでもドキドキするものである。ある程度、自分をさらけ出さないとこういうものは書けまい。作家という職業柄、真実であれ、造作であれ自分の内面をさらけ出すものでありそれは勇気を伴うものである。

自分は今まで自分を飾ってきた。監督という職業柄、自分というものは最後まで飾っていくべきものかもしれないが同時に自分は今までレースレポートで自分の内面を晒してきた。自分はどこに行くのであろう…

飾りだけの文章の代表格は大会の政治家のあいさつ文のようなものである。それはそれで、当たり障りがありすぎても困るのだが…

そういう意味でトランプ氏は文学的には非常に面白い!彼はハンドリングがめちゃくちゃであるが推進力は世界一だ。

レースレポートでも代り映えのしない選手が自分は進歩していませんということをマメに報告してくるが、寅さんの失恋じゃないんだから、せめて進歩しないのであれば、読者としては面白さがあってほしいものである。

そこだけ進歩されてもこまるが、自転車が強くならなくても文章がうまくなったのであれば自転車をやった甲斐があったといえるのではないか?

ボンシャンスでは若い時期に自転車という一つの物に夢をかけて試行錯誤して多くの土地を回りながら、自転車がたとえ強くなれなかったとしても、その経験を通して豊かな人生を歩めるきっかけが作れたらそれでもいいと考えている。もちろん、自転車で強くなるために死力を尽くすのが大前提であるが

ペダルを回しながら、目標に向かって重心を決める。

晴れの日も雨の日も風の日も
時には落車するし、ミスもする。
そして、勝利を重ねて上がっていく。

重心が日本である選手もいればフランスである選手もいる。今年から、ボンシャンスは良い選手が集まってきてフランスで第2カテゴリー8勝を挙げた。強くなる若い選手の重心はヨーロッパにないといけないことは周知の事実である。

ボンシャンスでは推進力のある選手を探しています。近々、2017年選手募集を開始します。

AUTHOR PROFILE

福島 晋一 ふくしま しんいち/岡山県出身 1971年生まれ。20歳からロードレースを初め、22歳でオランダに単身自転車武者修行。卒業後、ブリヂストンアンカーに所属し2003年全日本チャンピオンを獲得。2004年ツアー・オブ・ジャパン個人総合優勝、2010年ツールドおきなわ個人総合優勝。2003年から始めたチーム「ボンシャンス」代表に就任。2013年シーズンを最後に引退。JOCのスポーツ指導者育成制度でフランスのコンチネンタルチーム「ラ・ポム・マルセイユ」の監督として2年間の研修を経て、現在はアジアのロードレース普及を目指しアジアサイクリングアカデミーを主宰している。 アジアサイクリングアカデミー筆者の公式ブログはこちら

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