リオパラリンピックロードTT 藤田征樹と鹿沼由理恵・田中まいペア 苦しみ抜いて掴んだ銀メダル!

Posted on: 2016.09.17

9月14日、リオデジャネイロパラリンピックは自転車ロード競技、初日のタイムトライアルが行われ、男子C3クラス藤田征樹と女子視覚障害タンデムの鹿沼由理恵・田中まいペアが銀メダルに輝いた。

藤田はパラリンピック3大会連続、鹿沼・田中ペアは日本の女子自転車競技選手として初めてパラリンピックのメダリストになった。メダル無しで終わったトラックから一転、二つのメダルを獲得し、日本自転車チームにとって、大きな実りの一日となった。また、男子C2クラスに出場した川本翔大は13位、男子C4クラスの石井雅史は11位だった。


写真 ロードTT スタートする藤田征樹

ロードタイムトライアルは、リオオリンピックパークの南西に位置するビーチ、ポンタル地区で行われた。オリンピックのロードでもコースの一部になった、海岸沿いを走るフラットなコース。主なコーナーは、2か所の折り返し地点のみという直線的な設定だった。

朝から晴天に恵まれ、藤田と鹿沼・田中のクラスのレースが行われた午後は、気温も30℃近くまで上昇した。ただ、風はそれほどなく、気象条件といい、アップダウンが無く、コーナーの少ない平坦なコース設定といい、直線を踏み抜く力勝負になることが予想された。


<写真 ポンタルのビーチ>

15kmを2周する30kmで行われた男子C3クラス、藤田征樹は13人中10番目でスタートした。「コースが決まった時から、このコースは自分が勝負出来る土俵だと思い、今日の為に準備をして臨んだ」と藤田。「最初からプッシュすると。抑えたら絶対に駄目、最後まで苦しむつもりで臨みました」という言葉通り、力強くペダルを踏み続け、記録39分30秒41。銀メダルを獲得した。


写真 男子C3ロードTT 表彰台

この種目に照準を合わせ、トレーニングを重ね、狙いに狙って勝ち取った、3大会連続のメダル。「銀メダルに悔しさは残る」とは言いながらも「しっかり準備して来た事を吐き出す事は出来た」と清々しい表情で語った。優勝は、最終走者で男子C3クラスのロードタイムトライアル世界チャンピオンのクリフォード(アイルランド)だった。


写真 スタートする鹿沼由理恵・田中まいペア

女子視覚障害クラスには、12か国から17のペアが出場。鹿沼由理恵・田中まいペアは午後2時53分、10番目でスタートを切った。2014年にはこの種目で世界チャンピオンにも輝いている二人は、終始上位をキープ。

30kmを39分32秒92で走り抜くと、後続の7ペアを残し、暫定トップでフィニッシュした。最終的にアイルランドペアに交わされたものの、堂々の銀メダル。順位確定が告げられた瞬間、二人は固く抱き合った。


写真 順位が確定し抱き合う鹿沼・田中

実はこの日、二人は機材スポーツである自転車競技の、ある意味宿命とも言える機材アクシデントに見舞われていた。電動変速機のトラブルで、トップギアに入ったまま、ギアの変速が行えない状態だったという。

気づいたのは、発走直前にスタートのギアを決めようとした段階だった。自分たちの確認不足が招いた事態だったと、二人はゴール後に振り返ったが、15kmのコース2周、30kmをトップギアのままで走った。「あせりましたが、そこはもう勝負なので、(ギアが)変わらないなら変わらないで行くしかないとすぐ切り替えた」という田中。普段、穏やかな雰囲気の田中が、ここぞの場面で見せた勝負師の一面だった。

二人は折り返し地点の鋭角なコーナーでは早めに脚を止め減速、脚力の消耗を抑え、コーナーの立ち上がりからの加速に備えた。自転車競技の経験が豊富な田中の技術力も生きた。何より、自分たちならこのギアでも踏み切れると、お互いに信じられたという。


写真 女子視覚障害タンデム ロードTT表彰台

「本当に嬉しい、最後まで諦めなくて良かった」と目を潤ませながら語った鹿沼。メダルを逃したトラック競技から2日、気持ちの立て直しについて、鹿沼が「自分も悔しかったし、田中さんが悔しいのも分かっていた。口に出さなくても彼女は本当に、本気で戦ってくれるので、あえて口では言っていません」と言えば、「鹿沼さんの、メダルを獲りたいと言う気持ちは、痛い程分かっている。本気で応えて行かないと獲れない、苦しまなきゃ絶対獲れないと思ったので、死ぬ気で苦しもうと思って臨みました」と田中。

ペアを組んで3年、鹿沼の怪我、一旦のペア解消など、一筋縄では行かなかった道のりの先に、二人なりの信頼の形が生まれ、この日、4年に一度の大きな舞台で実を結んだ。

◯藤田征樹(男子C3/31歳・日立建機株式会社)
勝つ為に乗込んで来てそれには届かなかったんですが、このコースは自分が勝負出来る土俵だと、このコースが決まった時から、今日の為に準備をしてきて臨んだので、(優勝したクリフォードに)1分差を付けられたっていうのは力負けですけども、相手が(男子C3のロードTT)世界チャンピオンであり、偉大な選手と言う事でそこは今、納得しています。だからこの(銀)メダルは、残念ではあります、ただ、すごくホッとしています。勝負なので優勝出来る人は一人しか居ないし、金メダルを取れる人も一人しか居ないし、目一杯やった中で、2番になったて言う事は、自分に自信を持って報告出来る内容だと思います。

◯鹿沼由理恵(女子視覚障害/35歳・楽天ソシオビジネス株式会社)
本当に嬉しいです。最後まで諦めなくて良かったなと思います。トラックで狙っていたものが獲れなかったって言うのもありますし、ギアが変わらないって言う事がわかって、脚を止めてしまえば簡単な話しなんですけど、止めずにここまで来られたのは彼女(田中)のお陰ですし、メダルという、銀メダルという成績は本当に自分一人では出来なかったので、本当に皆さんのお陰です。彼女(田中)と表彰台に上がれる事は本当に嬉しいです。

◯田中まい(パイロット/26歳・ガールズケイリン選手)
鹿沼さんがメダルを獲りたい、って言う気持ちは、痛い程分かっているので、本気で応えて行かないと獲れない、って思ったので、今日も最後まで諦めないで持てる力を出し切ろうって言う気持ちで走りました。もう、苦しんで耐えようって。苦しまなきゃ絶対獲れないと思ったので、死ぬ気で苦しもうと思って臨みました。後半は鹿沼さんが、ガンガンに踏んでくれると思ったので、前半で出し切るつもりで突っ込んで行こうと思いました。鹿沼さんが、信頼してくれて、こういう舞台に来られてすごく嬉しかったので、しっかり結果で応えたいって言う気持ちを持って、今日もしっかり走って、結果を出せた事が嬉しいです。

◯ロードタイムトライアル結果
【男子C3クラス 30.0km】
1位 CLIFFORD Eoghan IRL 38:21.79
2位 FUJITA Masaki JPN 39:30.41 (+1:08.62)
3位 SAMETZ Michael CAN  39:41.28

【女子視覚障害クラス 30.0km】
1位  DUNLEVY Katie George IRL 38:59.22
< PILOT > McCRYSTAL Evelyn
2位 KANUMA Yurie JPN 39:32.92 (+33.70)
< PILOT >TANAKA Mai
3位 TURNHAM Lora GBR 39:33.81
< PILOT >HALL Corrine

記事・写真 小板橋彩子

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