リオパラリンピック自転車トラック競技はイギリス勢が席巻!日本チームのメダル獲得はロードへ持ち越し

Posted on: 2016.09.13

リオデジャネイロパラリンピックは11日、トラック競技最終日を迎え、メダル獲得の期待が大きかった女子視覚障害タンデム鹿沼由理恵・田中まいペアの3km個人パーシュートはタイム3分34秒892で6位。トラック競技で日本勢のメダル獲得はならなかった。


写真 3kmIPで6位の鹿沼由理恵・田中まいペア

トラック競技最終日、女子視覚障害タンデムの3km個人パーシュート予選には、11か国から14のペアが出場した。持ちタイムの良い選手ほど後からの出走になるパーシュートの予選だが、全7組中、前半の第3組に登場したイギリス、ソーンヒルとスコットのペアが3分32秒台をマークした。これは、今年3月のパラトラック世界選手権であれば予選2位相当の好記録。パラリンピックに向けた各国の確実な上積みがここでも伺えた。

日本の鹿沼・田中は最後から2番目の第6組で出走。この時点で暫定トップはソーンヒルとスコットの出した3分32秒で、決定戦進出を確実にするには、3分30秒付近のタイムが求められる状況だった。

日本は序盤から2kmまでは快調にラップを刻んでいったが、終盤で失速。粘りきれず、ラップタイムを落としていく苦しい走りとなった。結果、決定戦に進んだ上位ペアがラスト1kmを1分8秒台から9秒台で走りきったのに対し、日本は1分13秒台。タイム3分34秒892、6位でレースを終えた。

メダルマッチ進出ボーダー、予選4位とのタイム差は1秒6。「全力は出し切ったがつもりだが、最後が粘り切れなかった」と鹿沼。「自身としてはもちろんだが、トラックで日本チームとしてメダルが欲しかった、それを逃し悔しい」と涙ぐみながら振り返った。パラリンピックは、個人の、チームの、国の戦い。4年に一度の勝負の重みを改めて噛み締めているようだった。


写真 3kmIP 勝利を喜ぶ イギリス ターナムとホールのペア

女子視覚障害タンデム3km個人パーシュートの優勝はイギリス。中距離系のエースペア、ターナムとホールだった。予選を3分27秒460のパラリンピックレコードでトップ通過すると、世界チャンピオンのニュージーランド、フォイとトンプソンのペアとの金メダルマッチも3分28秒台の好走で制した。ターナムとホールは、今年3月のパラトラック世界選手権では銅メダルだったが、その時の記録と比較すると、半年間で7秒程もタイムを縮め栄光を掴んだ。

また、3位、銅メダルもイギリスで、1kmTT優勝のソーンヒルとスコットのペアだった。予選はペースで刻み3位通過、決定戦では1km1分6秒台のスピードを生かし、1km過ぎで、対戦相手に追い抜き勝ちを収めた。

全体の4位までに入る事が至上命題の予選と、対戦相手に勝てばメダル獲得の決定戦では戦術を変えて臨んでいた。本来は短距離を得意とするソーンヒルとスコットのペア。ここまで仕上げるために積んで来たであろう、トレーニングの過酷さは想像に難くない。その上で、あくまでどん欲にメダル獲得にこだわる姿勢に、王者イギリスが王者である理由の一端が垣間見えた。


写真 男子視覚障害タンデム1kmTT 優勝したバングマとムルダーのペア(オランダ)

今回トラック競技では、20を越えるパラリンピックレコードが更新されたが、男子視覚障害タンデムの1kmTTもその一つ。オランダのバングマとムルダーのペアが59秒822と、1分を切るタイムで、世界チャンピオンのイギリスペアを交わし、金メダルに輝いた。

パイロットのムルダーは2012年ロンドン五輪のケイリン銅メダリストで、日本の競輪に参戦した事もある選手。ロンドンを機に、オリンピックチームからは離れたが、パラリンピックチームのパイロットとして新たな挑戦を続けていた。


写真 男子視覚障害タンデム1kmTT 優勝オランダ 2位イギリス 3位ドイツ

トラック最終種目となった混合チームスプリントでは、イギリスが中国を抑え、タイム48秒635で優勝。終わってみればイギリスは、トラック競技全17つの決勝種目のうち、8種目で金メダル、総数でも2位中国の7つを大きく上回る12個のメダルを獲得し、圧倒的な強さを発揮した。


写真 混合チームスプリント 優勝イギリス 2位中国 3位スペイン

リオパラリンピック自転車競技の後半戦、ロード競技は14日から始まる。初日の午後には、藤田征樹や鹿沼・田中ペアが得意とするロードタイムトライアルが早速行われる。日本チームに、悔いのない走りで雪辱を期待したい。

◯鹿沼由理恵(女子視覚障害/35歳・楽天ソシオビジネス株式会社)
全力は出し切ったけれど、やっぱり各国がレベルを上げて来ていて。自分たちも全力を尽くして来たつもりですけど、悔しいです。後半粘れなかったのは、自分自身をコントロール出来なかったというか、もしかしたら気持ちが他のチームに負けてしまったっていうのがあるのかなって思っています。

(メダル獲得への)プレッシャーは、そのプレッシャーを感じる以上に、自分もメダルが欲しいっていうのが事実だったので、応援として受け止めてここの舞台に立ったつもりです。彼女(パイロットの田中まい)が居たからここまで来れたって言うのもあるし、色々あってのこのパラリンピックだったので、そして、トラックで(日本の)自転車チームとしてメダルが欲しかったので、それを逃してしまったのは大きな悔しさです。

気持ちを切り替えてロードに臨みます。(自転車は)個人スポーツでありながらタンデムは特にペアでのレースですし、自転車チームとしてやっぱりメダルを獲りに行きたいなって思っています。

◯田中まい(パイロット/26歳・ガールズケイリン選手)
何をどう、どこを直せばって言うのはまたこれから振り返りたいと思うんですけど、前半もっとスピードを上げて、後半もっと粘れれば良かったのかなって思います。(ラップタイム)17秒台を最後までしっかり刻めていれば・・・ですよね。

(率直な気持ちは)悔しいです。もう一回(決定戦を)走りたかったですね。ああ、もう、走れないのかって。しっかりロードに切り替えて行かないと、もうあと2日間しかないので。まだロードコースは走っていないですが、しっかりイメージトレーニングをして試走出来ればと思います。

記事・写真:小板橋彩子

NEW ENTRY