佐藤一朗「身長、骨格、関節稼働角によってポジション&フォームは千差万別」

Posted on: 2016.03.29

今年も気がつけば3月が終わりそうです。毎年のことですが、3月はシーズンの始まりと言う事もあって様々な合宿やトレーニング指導にお声がけを戴いています。毎週のように修善寺や境川などの競技場に赴いての指導はとても楽しいのですが、帰ってきてから行う画像の整理と動作解析は頭から煙が出そうになるくらい大変な作業になります。


写真は今回も幾度となくお世話になったCSC北400バンクよりベロドロームを望む
 
トレーニング指導の依頼を受けると、まず最初に悩むのはトレーニングプログラムの作成です。クライアントとなる選手やチームの要望(課題や改善点)を聞き、その為に必要なメニューを入れつつ全体のバランスを考えたメニューを作る事は慣れているとは言え結構大変な作業です。

特に対象が個人ではなくチームの場合、一部の選手の為に特化したメニューにするわけには行かず、最大公約数的なメニューを作らなくてはならないからです。
 
始めてトレーニング指導をさせて頂く場合や、シーズン最初のトレーニングの場合に必ず行うのが動作解析用撮影の為のメニューです。選手がどういった走り方をしているのか、筋肉の使い方から自転車のセッティングまで一通りチェックして今後のトレーニングの指標を作成するためには欠かせないからです。
 
最近良く耳にする「バイクフィッティング」は皆さんご存じかと思うのですが、それをもう少し競技志向で細かくやると言えばイメージしやすいでしょうか?
 
サイクリングや趣味でロードバイクに乗る程度でしたら、骨格や関節の稼働角から自転車のセットアップを行い、感覚的な微調整で十分に乗る事が出来ると思います。しかし身体の筋力を限界まで追い込む競技選手の場合それだけではベストなセッティングは出来ません。
 
自転車を走らせるポジションやフォームと言われる物は選手によって様々です。一番は身長や骨格の違いによるサイズ自体の違いです。この違いは分かりやすいと思いますか、問題はここからです。
 
「同じ骨格だったとしても関節の稼働角が違えばサイズは変わります。」
 
例えば肘の角度は○○度くらいが理想的です。と言われても実際にスプリント状態になった時の肘の角度は意識によってコントロールする事はまず不可能で、肘を曲げる筋肉(上腕二頭筋)と肘を伸ばす筋肉(上腕三頭筋)のバランスや、その時の肩関節の位置(上半身の前傾度合いの違い)によって角度は全く違って来るからです。
 
サドルの高さもそうです。骨格的にはある程度指標が出ますが、シューズの違い、クリート位置、足関節の角度、サドルの前後位置、股関節・膝関節の出力割合等によって理想的な高さは全く違ってきます。
 
さらに大変なのはペダルに対して最大の力を伝え、高いケイデンスを発揮する為のベストなポジションを作るためには、自転車のセッティングだけでなく筋力バランスの改善が必要であったり、場合によっては身体のケア(治療)を施さなくてはならない場合もあるからです。
 
これらの条件を全てを確認する為には、やはり実走、それも通常のトレーニングかレースに近い状態で走行している時でなければ確認出来ません。意識して作ったフォームやポジションではなんの参考にもならないのです。
 
今月も3回の合宿、2度のトレーニング指導、1回の大会帯同で撮影してきた画像が数千枚。暫くはデータ整理にうなされる日々が続きそうです。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

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