三瓶将廣「自分の位置探し、勝ち上がる強さを学びに」

Posted on: 2016.02.24

2月初旬から行ってきたアメリカ・フロリダ州でのプレシーズンキャンプも帰国日を迎えました。Facebookページなどでもお伝えしていた通り、USABMX North American SX SeriesのA-Proクラスに出場した吉村樹希敢選手と、松下巽選手が1日目のレースで決勝へ進出し、吉村選手は準優勝を獲得!

女子の瀬古遥加選手は予選を勝ち上がり、強豪が揃う準決勝へ駒を進めました。初のエリートウーマンクラスに参戦した畠山紗英選手も、2日目で準決勝へ進出し、SXタイプの第一歩を踏み出しました。そんな2週間のキャンプを終え帰国しましたが、結果だけのレポートではリザルトを見たら終わりになってしまうので、今回の目的などを書き残しておきたいと思います。

■自分の位置を探しにアメリカへ
まずはなぜ今回のキャンプ地にアメリカを選んだのかというところ。それは、気候が良いことや、コースの条件が良いこと。それから、5月に予定しているキャンプ地の視察など様々な理由はあるものの、主な目的は「今の自分の位置を見つけること」でした。

今大会が、1ヶ月後に迫ったワールドカップ開幕戦の前哨戦ということで、世界中からオフシーズンの成果を試しに来ていて、各国選手のSNS投稿を見ても「オフの成果を確認できた」「改善点を修正して、ワールドカップへ」などというコメントを多く見ました。

日本チームも同様にオフシーズンの成果を試しにきましたが、同時にワールドカップサーキットに出場する選手達の範囲だけでなく、それ以外も含めて、いったい自分はどこの位置なのか。それを選手に感じてもらいたく今大会をチョイスすることにしました。


(Photo : BMXNEWS.com)

■男子はA-Proクラスへ参戦
アメリカには昔からAA-Proクラスと言う最上級カテゴリーがあり、そこへ勝ち上がり活躍するのが世界中のライダーの夢や目標となってきました。僕自身も8歳の時にそれを知り、追い求めること10年、18歳でAA-Proに昇格しました。


(初AA-Pro参戦時準決勝 左からNic Long,Maris Strombergs,Mike Day,Josh Oie,Ramino Marino,Khalen Young,Masahiro Sampei,Danny Caluag/Photo:Arielle Martin)


(7年前同コースOldsmarBMXで参戦したAA-Proクラス 左から#100Christian Beserine,#33Randy Stumpfhauser,Masa Sampei,#34 Barry Norbles,Josh Mayers,#365 Mike Day/Photo:BMXNOW.com)

その前のステップとしてA-Proクラスがあり、そこで走るのはアマチュアクラスから昇格したトップ選手や、海外から挑戦してくるハングリーなライダーたち。今年からは「UCIジュニアエリートカテゴリーの選手はA-Proクラスへ」というルールが加わったので、これから上を目指すメンバーが集まるいわゆるセミプロクラス。

ここのカテゴリーはラフな走りもあり、ある意味難しく、熾烈な戦いが繰り広げられます。世界で活躍する選手の多くがこのA-Proのステップを経験しており、実際に2008年北京オリンピックで優勝したマリス・ストロンバークも、前年の2007年はA-Proクラスで優勝の経験を積み、そこから一気に世界選手権、オリンピック王者へと勝ち上がったということもあります。

僕自身もここのA-Proで揉まれてきました。


アメリカ東部で行われた小さいレースにも参戦し、勝ちを求められた時に勝つということも学んできました。

これまでであればエリートクラス(現在はAA-Proと統合)にでて、ワールドカップと同じ条件で戦うのが流れでした。しかし今回はリクラスファイ=下のクラスへレベルを下げることに劣等感はあるかもしれないけど、それ以上に得るものがあると判断し彼らへの挑戦を勧めました。

■勝ち上がる強さ
松下選手は17歳で一度、吉村選手は今回が初のA-Proクラス参戦となります。今回40名オーバーのエントリーがあったA-Proクラスでしたが、半分はあまりレベルが高い選手ではないので、予選ではトップを走る姿も多く見れました。

それでもUSABMXの特徴でもある予選3ヒートとも走るメンバーが変わるスクランブルシステムなので、速い選手と当たることももちろんあり、気の抜けない最適なレベルでした。


(#27吉村選手/Photo:USABMX)

(#38松下選手/Photo:BMXNEWS.com)

準々決勝、準決勝とレベルは高くなりますが、2名ともなんとか決勝へ進出。決勝では松下選手は力み過ぎでペダルを外してしまったものの、吉村選手はリズムセクションで追い上げを見せ、2013年ジュニア世界チャンピオンに続いて2位入賞を果たしました。


(吉村選手表彰台/Photo:Masahiro Sampei)

翌日は更に上位をという期待もありましたが、そこは甘くなく、松下選手は準々決勝、吉村選手は準決勝で敗退となりました。トップに絡める実力はあるものの、ワンミスが命取りなのは子供から大人までどのクラスも同じこと。

1日8時間以上に渡って行われるレースは、相手の走るレベル以上にハードでクリアしなくてはいけないことが多くあると、あらためて実感したのではないでしょうか?

世界の選手は勝ち進むことに慣れている。勝ちあがり方を知っている。そして、それらを身につけた上でスタートからゴールまで安定して自分の力を発揮し、同じことを6回繰り返すのみ。それを自分のレベルにあったクラスで出せるようになってはじめて、次へと進めるのではないかと考えています。

女子も予選を勝ち上がるための力をつけるべく参戦した今大会でしたが、瀬古選手、畠山選手ともに自分の走りを出せれば勝ち上がれる、出せなければ上がれない、といった結果となり「実力が発揮できなかったのはなぜなのか?」そこを確認でき、本人たちも実感できたのは収穫。これを活かしシーズン開幕に向けて良い流れが作れることでしょう!


(#119瀬古選手/Photo:Masahiro Sampei)


(#242畠山選手/Photo:USABMX)

キッズライダーたちも「どうしたら勝ち上がれるようになるのか?」「どうしたら地元レースで表彰台に上がれるか?」そして最終的に「最後は世界選手権決勝へ勝ち上がれるのか?」といった問に対して、今回のようなエピソードをヒントにしてもらえたらと思います!

まずは友達とのお遊びレースから、GAN CUPや中部CUP、次にローカルレース、JOSFダブルポイント・レース、そして混走クラスも経験してジャパンシリーズへ。日本にも各レベルにあわせたレース設定が増えてきているので、今後が楽しみですね。

一旦帰国し、次は2016年世界選手権大会開催地であるコロンビアへ飛び、本番のコースにて練習。そしてアルゼンチンでのワールドカップ第1戦、イギリスでの第2戦へと転戦していきます!引き続き、#BMXTEAMJAPANの応援をお願いします!

AUTHOR PROFILE

三瓶 将廣 さんぺい まさひろ/川崎市出身。プロBMXライダーであり、一般社団法人SYSTEMATIC BMXの代表を務める。5歳からBMXレースを始め、中学校入学と同時に拠点を海外へ移し、これまで17年間18カ国にて、レースに取り組んできたライダーである。全日本選手権3連覇、2011年アジア選手権優勝。日本を代表するプロライダーの一人。現在、ライダー業の傍ら、BMX/自転車普及活動を目的に、一般社団法人SYSTEMATIC BMXの代表としても活動している。 筆者の運営する公式サイトはこちら

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