佐藤一朗「アジア選手権観戦記/オリンピック出場枠獲得に関する情報」

Posted on: 2016.01.31

1月29日、30日と伊豆ベロドロームで行われているアジア選手権を”観戦”しに行ってきました。実は僕にとって観戦で大会会場を訪れるのは数年ぶりで、殆どの場合コーチとしての帯同、もしくは取材で大会に訪れているのでとても新鮮な気分でした。

しかも”入場料”を払ってです。ついに日本のトラックレースも入場料が取れるようになったんだと嬉しさの余り”当日券”を購入して入場しました。


男子オムニアム優勝 橋本英也 photo Trainer’s House  

今回どうしても見たかったのは、鹿屋体育大学から橋本英也選手と塚越さくら選手が出場するオリンピックの出場枠がかかった男・女オムニアムです。これまでのポイントランキングで”大丈夫!”とは思っているものの、やはりパソコンの前で伝わる情報を待っているだけでは居ても立ってもいられないので、眠い目を擦って早朝から繰り出しました。


女子オムニアム 3位 塚越さくら photo Trainer’s House
 
リザルトは皆さんもうご存じだとは思いますが、橋本英也選手は圧巻の強さで優勝!金メダル獲得。塚越さくら選手は得意の短距離種目でポイントを稼ぎ、暫定3位で向かえた最終種目のポイントレースでも果敢に攻めて一時は2位に上がりましたが、最終ポイントで逆転され悔しさも残りますが見事3位で銅メダルを獲得しました。これによりUCI のオリンピックランキングも上昇し、リオ・オリンピック出場枠獲得に大きく近づいたと思います。
 
今回は”観戦”で訪れたのですが、いつもの大会よりむしろ慌ただしかった様に思います。なぜなら。。。選手の関係者や、フェイスブックやシクロチャンネルなどで僕のコラムを読んでくださっている方、さらにはメディア関係の方まで「オリンピック出場枠獲得に関する情報」をお尋ねにくるからです。
 
恐らく今これを読まれている方も非常に気になるところだと思います。僕も今朝からUCIのサイトを見てはアジア選手権のリザルトを確認してポイントの計算をしました。その結果オリンピック出場枠についてある程度の見通しが出ました。

しかしそれには不確定要素が入っています。オリンピックポイントを獲得出来る大会はあとアフリカ大陸選手権と世界選手権だけです。ほぼ確定と言っても良い状態なのですが、期待が大きくなる分、不確定な要素に対する不安が大きくなって来ます。
 
不確定と思われる要素。
①世界選手権の出場選手、チームが確定していない。世界選手権にはワールドカップのランキング上位と大陸選手権の優勝者が出場出来ますが、欠場が出た場合リザーブの選手が出場出来る場合があります。
②オリンピック出場枠獲得の条件を間違って理解している事があるかも知れない。
③今回のアジア選手権のポイント加算計算に間違いがあるかも知れない。
 
以上の理由から、正確な状況を発表しづらい状況になってしまいました。
 
と言う事で、今回お知らせするリオ・オリンピック出場に向けた暫定成績はかなり曖昧な表現になってしまう事をご了承ください。
 
<オリンピック出場枠獲得が期待できる種目>
 
○男子オムニアム
今回のアジア選手権で橋本英也選手が優勝したことにより120ポイントを加算し471ポイントとなり、順位を13位に上げました。世界選手権で逆転可能な得点を持っている国をチェックしましたが、出場枠圏外に落ちることは無いと思います。(あくまで僕の主観です)

○男子ケイリン
今回のアジア選手権で渡邊一成選手が5位、脇本雄太選手が6位に入賞しましたので、それぞれポイントを加算しています。残念ながらアジア枠が2枠しかないためマレーシアのアワン選手を2人揃って抜くことはかなり厳しい状態ですが、最低でも一枠の獲得は大丈夫では無いかと思います。(あくまで僕の主観です)
 
○女子オムニアム
今回のアジア選手権で塚越さくら選手が3位に入賞したことで90ポイントを加算、ランキングを18位に上げオリンピック出場枠圏内に入りました。あとは世界選手権で逆転されないように頑張るだけです。

ライバルとなりそうなのはマレーシア、メキシコ、コロンビア、南アフリカですが、マレーシアとメキシコ、南アフリカは世界選手権に出場出来るかどうかはっきりしていません。

仮に参加できたとしても日本とのポイント差は一番近いマレーシアで63ポイント差あります。また今シーズンは南アフリカ以外の国とは直接対戦していますが1度も下位の成績となっていません。以上の事から出場枠獲得が可能では無いかと思います。(あくまで僕の主観です)
 
<オリンピック出場枠獲得の可能性がある種目>
 
○男子スプリント
これまで出場枠獲得が不安視されていなかったスプリントですが、ここに来て不安要素が出て来ました。今現在この種目では中川誠一郎選手が307ポイントでランキング8位となっているので出場枠圏内にあります。

しかし今回のアジア選手権で3位に入ったマレーシアのアワン選手が90ポイント加算して300ポイントまで上がってきました。実は中川選手とアワン選手はアジアで2位3位に位置していて、2枠しかないアジア枠を争っています。現在の7ポイント差を世界選手権で死守してオリンピック出場枠を獲得して欲しいと思います。
  
<オリンピック出場枠獲得のチャンスがまだ残っている種目>
 
○男子チームスプリント
今回のアジア選手権で3位に留まり、韓国、中国に差を付けられてしまいましたが、世界選手権で上位入賞すれば逆転のチャンスが無いわけではありません。最後のチャンスに全てをかけて欲しいと思います。
 
○女子スプリント
厳しい状況にかわりはありませんが、チャンスが無いとは言えません。
 
○女子チームスプリント
女子スプリント同様、厳しい状況ですがチャンスがあれば頑張って欲しいと思います。
 
オリンピックの出場枠を獲得するチャンスは泣いても笑っても3月2日〜6日に行われる世界選手権だけとなりました。順調に強化が進んでする中距離は今回のアジア選手権でもメダルを量産しオリンピック出場枠も手の届くところに来ています。

それに対してこれまでお家芸とも言われていた短距離は厳しい状況に立たされています。世界選手権では底力を発揮して1つでも多くオリンピックの出場枠を獲得して欲しいと思います。

AUTHOR PROFILE

佐藤一朗 さとう・いちろう/自転車競技のトレーニング指導・コンディショニングを行うTrainer’s House代表。運動生理学・バイオメカニクスをベースにしたトレーニング理論の構築を行うと同時にトレーニングの標準化を目指す。これまでの研究の成果を基に日本代表ジュニアトラックチームを始め数々の高校・大学チームでの指導経験を持ち、現在はトレーニング理論の普及にも力を注いでいる。中央大学卒/日本競輪学校63期/元日本代表ジュニアトラックヘッドコーチ                                       ▶筆者の運営するトレーニング情報発信ブログ    ▶筆者の運営するオンラインセミナーの情報

佐藤一朗の新着コラム

NEW ENTRY